7-3:再びの強襲
コラロ村は燃えていた。
育ち始めた作物は焼き尽くされ、丸太造りの家々は、窓から炎が吹き上がり、音を立てて崩れ落ちる。
すでにぴくりとも動かない者、何とか地面を
彼らが
黒いローブを
ケタケタと笑いながら、何とか生き延びようとする村人たちの頭上に”
“彼女”らを率いる『ハイゴーレム』が、村の入口に陣取り、炎で起きる気流に漆黒のローブをはためかせている。
やや青みがかった黒髪のボブヘアが風に大きく
「ローレル様! ローレル様! ご無事ですか!?」
火に巻かれ、黒煙を上げる村長ローレルの屋敷の扉をリリオが必死に叩く!
炎は
ドアノブを握り、熱で歪んだ扉を
「きゃッ!?」
炎と熱に
「ローレル様!?」
「リリオか!? ここだ!」
崩れ落ちた
瓦礫を押し退け、その下からローレルの身体を掘り出す。幸いリリオの
「ご家族は!?」
「心配いらん。他の者たちと逃げ
リリオの治療を受けながら、ローレルは頭を降った。
「村はどうなっておる?」
「壊滅状態です。
「くそッ!
回復して動くようになった腕を振るい、壁を叩く!
「何故、この様な小さな村に過剰とも言える戦力を投入する!? まったく意味が分からぬ!」
「今は逃げることを考えましょう!」
ローレルに肩を貸し、屋敷の外へ抜け出すリリオ。
もはやそのかたちを支えきれなくなった屋敷が炎を上げて倒壊したのはその直後だった!
「間一髪だったな……!」
崩れた屋敷を見下ろし、ローレルが毒づく。
「村長たちは、裏の林を抜けて逃げてください。わたしは任務があります」
「気を付けろよ!」
ローレルが崩れた家々のあいだをすり抜け、林の中へ消えて行くのを見届ける。
振り返って燃え行く村を見回す。
そこかしこで”
村の
「わたしも頑張らないと!」
気合を入れ直し、リリオは怪我人を捜すべく村の中央へと走って行った!
幸か不幸か、リリオの頑張りに反して村人の姿は見当たらない。ほぼ全員が避難しきった様子だ。
「わたしの出番は、ここまでかな?」
周囲を見渡し、頷く。怪我人がいなければ、大人しく後方支援に回るのみだ。
戦闘能力に
吹き上がる炎を避けつつ、村の外に避難したローレルたちに合流すべく、足を向ける。
その彼女の視界に――黒い影が降り立った!
「!?」
慌てて止まるリリオ!
地面の上で、もぞもぞ動いた黒い影は、すっと立ち上がる。
ローレルを助けた時に出来た、手のひらの
影はリリオに対し背中を向けて立っていた。
それがくるりと向き直る。
『ゴーレム』だ。
しかしその顔にはニタニタとした笑みはなく、
「『ハイゴーレム』……!」
『ゴーレム』戦闘群のリーダー格だ。
何でよりによって自分の前に……!
『ハイゴーレム』が無表情に一歩、二歩と歩み寄る。
対するリリオは、同じ歩数だけ後ろに追い詰められる。
しかし、周囲の
闘うしかない!
「わたしだって……それなりに攻撃魔法は
ローブを腕まくりし、魔導石がはめ込まれた腕輪を
“マギコード”を詠唱し、魔力を組み立てる!
彼女の右腕に光の帯が広がり、やがて
構成された”
カラナの受け売りの術だが、果たして通じるか!?
鞭の先端が風切り音も高らかに『ハイゴーレム』を襲う!
が、やはりオリジナルとは威力も速さも
『ハイゴーレム』が両手を突き出し、頭上からリリオ目掛けて”
「きゃあッ!」
直撃コースを描いた”
……防げた!?
顔を上げて『ハイゴーレム』を見る。
相手の身体は
この『ハイゴーレム』、思ったより攻撃力が低い!
ならば、勝ち目はある!
着地点となる場所目掛けて走り込む!
ちょうど着地した『ハイゴーレム』がバランスを立て直すその瞬間を狙って――リリオは身体を倒し、その脚を腕で払う!
「!?」
まさか体術で来るとは思っていなかったのだろう。
完全にバランスを崩し
左手を地面に着いて身体の軸を取り戻すと、反転する勢いに乗せて、鋭い
「甘いわ!」
半身を
身体を倒す勢いに乗せ――
「ぐッ!?」
鈍い音がして、『ハイゴーレム』の蹴り足が、異様な角度に
顔を大きく歪める"彼女"を地面に押し倒し――無防備になった首筋に、
首を折られた"彼女"の頭が激しくバウンドする!
首が
「やった……! 勝てた……っ!」
勝利の
そも、自分の役割は闘う事ではない。
一刻も早く避難場所に向かい、ケガ人を回復して回らねばならない!
立ち上がり、避難場所に向かう。そのつもりで歩き出した瞬間――
足首を凄まじいちからで捕まれ、リリオは思い切り転倒した!
「え!?」
慌てて振り向くと、倒したはずの『ハイゴーレム』の腕が伸び、彼女の足首を捕まえている。
『ハイゴーレム』の左手に淡い光が
「
体制を立て直そうとするが、すでに回復しきった『ハイゴーレム』が強いちからでリリオの身体を引きずり込む!
背中を地面で
倒れたリリオの上に、立ち上がった『ハイゴーレム』がゆっくりと
「ヤバイッ!」
“マギコード”を組み上げ、”
しかし、それを読んでいたか、『ハイゴーレム』は足の裏でリリオの腕を受け止めると――その腕を地面に叩き付けて踏み潰した!
リリオの腕に巻かれていた、腕輪の魔導石が粉々に砕け散る!
「きゃあああッ!」
折られた右腕を抱え込み、悲鳴を上げてのたうち回る!
まずい! 魔導石を壊された!?
リリオの眼鏡の奥の瞳が――恐怖が歪む!
リリオに馬乗りになった『ハイゴーレム』の腕が、彼女の細い首筋にゆっくり伸びる。
薄い笑みを浮かべた『ハイゴーレム』の手にちからが
「
その細い腕からは信じられないちからで首を締め上げられ、リリオはもがいた!
息が止まり、意識が急速に遠のいて行く!
腕と脚をばたつかせ、必死に抵抗するが――それもわずか数秒の事。
リリオの意識は、消えてなくなった……――。
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