3-2:女神ローザ
「久しぶりですね、カラナ」
議事堂に響く透き通った
「お久しぶりです。女神ローザ」
返答しながら、カラナは前へ進んだ。
「おふた方ともお変わりないようで、安心いたしました」
「久しぶりじゃなカラナよ。 ふむ……前に会ったのは
「五年ぶりでしょうか」
しわがれた声でアコナイトが「うむ」と
彼らの背後の壁には、ふたりの
特に、クラルは『ハイゴーレム』なのだから無理もない。
ローザが
「
「あたしたちを……? エルダーメンバーが全員で…………?」
戦勝記念日
だが、どうにもそんな雰囲気ではない……。
ローザが立ち上がり、ローブの
その
その長身の美女が、中二階の
その眼差しがカラナたちにゆっくりと向けられた。
「カラナ……とてつもない
「災厄……?」
疑問符を上げるより前に、サフィリアが
「あの……! クラルの事なら、これはサフィリアが無理を言って連れて来て貰った事で……!」
ローザの言葉をクラルの事だと受け
この議事堂に入ってから、ローザの視線はただの一度もクラルに向いていない。
「わたくしの
サフィリアの方へと顔を向け、
思わずたじろぎ、後ろへ下がるサフィリア。その姿を鋭いローザの視線が追う。
「わたくしが待っていたのは――貴女です」
「え……?」
ゆっくりと腰を上げ、ローザの横に立ち並ぶアコナイト。
深い
「まさか、こうして再び
一拍置き、意を結した様に、アコナイトがその名を口にした。
「魔女サイザリス」
***
言葉の意味は分からなかった。
カラナは、ただ
「何ですって……!?」
ローザがこちらへ向き直る。
「カラナ、貴女が連れているその少女――サフィリアと言う名の魔導師こそ、あの魔女サイザリスその人なのです」
サフィリアへ視線を落とす。
少女は完全に立ち
「――サフィリアが……魔女?」
「ちょっと待ってよ!」
サフィリアの
「サイザリスって二十五年も前の人間でしょ? この
「その魔女の姿かたちは、わしが戦ったその時とまったく変わっていない」
アコナイトが厳しい声で告げ、サフィリアを
「魔女よ。二十五年前の約束を忘れたか?
次に機会があれば、ワシ好みのもう少し年上の姿で会いたいと言った
「そんな約束知らない!」
悲鳴の様な声を張り上げるサフィリア。目には涙が
「わたしはサフィリアだ! 魔女とかそんなこと全然知らないし、覚えてない!」
「そう。其方はかつての戦いで、その魔力と知識を失っているのです」
泣き叫ぶ少女に、淡々と聖女は告げる。
「お忘れでしょうが二十五年前、貴女はわたくしの魔力を封じる為、ヴェルデグリスを用いました。
しかし、わたくしがそれを逆手に取り、貴女の魔力を封じ返して、勝利を得たのです。
貴女がサイザリスとしての記憶を失ったのは、魔力とともに記憶も封じられたからなのか、あるいはわたくしの攻撃を受けたことによるショックなのか――」
ローザが一拍、言葉を置く。その瞬間――議事堂の空気が一気に凍り付く!
「いずれにせよ――」
聞こえた声はここまでだった。いや、続きを聞いてる
カラナは横っ飛びにサフィリアの身体を抱え込み、床に転がる!
布をねじり引き裂くような音とともに、サフィリアの顔があった辺りに黒い
渦はやがて消滅し、空間の歪みも元へと戻って行った。
その場にいれば、彼女の顔が
「サフィリア!」
「邪魔をしないでください、カラナ」
すぐ頭の上から、声が響いた。
見上げれば、いつの間にかローザは、カラナのすぐ横に立っていた。
「カラナ様! サフィリア!」
クラルが一歩遅れて、右手を突き出して"
「ダメよ、クラル! 抵抗しないで!」
自分の言葉も終わらぬうちに、カラナは右手に生み出した”
それは一直線に伸び、クラルの頭
「きゃッ!?」
顔の至近距離で爆発が起き、クラルが悲鳴を上げて床に転がる!
ナイフはアコナイトが
「待って! ちょっと待ってッ! その
ありったけの声を張り上げて、議事堂にいる評議会を制した。
「お願いだから! 話をさせてよ!」
「なりません」
カラナの
こんなもので防げるかどうかは分からないが……。
「その者は今、サイザリスとしての魔力も記憶も失っています。戦いに
語るローザの背後には、再びナイフを手にしたアコナイトの姿。
その視線はクラルの方に向けられている。彼女は
が、しかし――
カラナの援護なしに、クラルがアコナイトの攻撃を回避することは難しいだろう。
「これは、二十五年前に魔女を討ち取れなかったワシらの失態」
対抗するかの
「其方には関わり及ばぬこと。ワシらはいまここで、二十五年前の決着をつける!」
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