第三章「魔女の封印石」
3-1:元老院
街の最奥に位置する元老院議事堂。
四
周囲は高い塀で
ベロニカら
予定通り、ベロニカを
決して潤沢ではないコラロ村の戦力を、いつまでもこちらに
「わぁ……大きな門!」
巨大なメインゲートを封鎖する鉄の扉を見上げ、サフィリアが感嘆符を浮かべる。
ゲートの周辺には、かなりの人数の
門の真下では、元老院議事堂に用事のある市民が
共和国
「さ、元老院に入るわよ。 ふたりとも少し身なりをちゃんとして」
カラナに言われ、服装の乱れをいそいそ直す二人。
その様子を確認し、長蛇の列の真横を突き進んで行く。
「え? 並ばないの……!?」
戸惑うサフィリア。
その声を聞き
「止まれ! それ以上近づくな!」
構わず歩を進めるカラナ。その手を不安そうにサフィリアが握って来る。
「……!?」
警備兵の一人が、こちらの態度から何かを悟ったか、あるいは気付いたのか、表情が露骨に変化し、他の兵に「おい!」と
全員が身を
「……お疲れ様」
全員に緊張の色が見えた。
そのまま、門をくぐり、元老院議事堂の中庭へと足を
先を行くカラナに小走りで追いつき顔を見上げて来る。
「……カラナってもしかして偉い人?」
「そんなことないわよ。
苦笑いして答えた。
大人の世界は良く分からない、とでも言いたげな微妙な表情で首を
メインゲートを抜けた先には、庭園が広がっている。
石畳の道の両脇には、いくつのも噴水が虹を作り、その周囲の花壇には色鮮やかな花々がふんだんに植えられている。
通りすがる職員たちと軽く
本館の入口は二階部分にあり、階段を登って行く。
階段には大理石のアーチがかけられており、共和国とその同盟国の旗が、風に揺られはためいていた。
数分も歩くと、本館の入口前に
そこにもメインゲートと同じく、数名の
カラナの姿を認めると、その内の一人、
「お待ちしておりました、カラナ様」
「到着の予定時刻は伝えていなかった
「いえ……」
上級指揮官は大きく首を振り、本館の扉を開いてカラナ達を招き入れる様子を見せながら続ける。
「お偉い方が、すでに着席してお待ちでございます」
「!」
さすがに面食らうカラナ。
元々、コラロ村襲撃とは別件で、女神ローザに会う予定ではあったが、向こうから席を用意して来るとは。
「では、案内してもらえる?」
「はい。 どうぞこちらへ」
招かれるまま、上級指揮官の後を追って本館へと入って行く。
何か違和感を覚えた。
元老院議事堂へ、用があって訪れたのはこれが初めてではない。なので、内部の様子に付いて、目新しいものはなかった。
古ぼけた外観とは異なり、しっかりと磨き込まれた大理石の床。
その上に土足で踏む事を
特に変化した様なところはない。だが――
人が妙に少ない。
以前に来た時であれば、共和国の運用を
「……何かあったの?」
前を歩く上級指揮官に訪ねる。
「実は元老院の命により、本館は人払いがなされております。わたしにも理由が良く分からないのですが、重要な案件があるとだけ聞かされております」
「そうなの」
入口からまっすぐ通路を進み、上階へと続く階段を登る。
目の前にこれまた
元老院評議会場の扉だ。
「どうぞ」
道を開け、再び一礼して上級指揮官は腕を扉の方に向けた。
何か
サフィリア、クラルを引き連れ、中に入る。
背後から、扉を閉める音がした。
評議会場は吹き抜けになっており、二階分の高さがある。
遥か頭上の天井はガラス張りとなっており、ちょうど
カラナ達の目線よりもやや高い位置に
そこに十と三個の椅子が整然と並び、腰かけた十三人の者たちが
各分野のから集められたエキスパートで構成される元老院のエルダーメンバー。
元老院評議会である。
そして――
彼ら十三人の中央に陣取る二人。
白髪
赤から紫へとグラデーションがかかって見える艶やかなロングヘアを腰までおろし、天女の
かつて、魔女サイザリスを滅ぼした、
予想になかった共和国の最高峰との
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