1-2:謎の魔導師
誰かが、魔法で攻撃したのだ!
不意打ちに凍り付いた『ゴーレム』の
「カラナ! 良かった!」
涙目ですがりつくリリオを抱き寄せ、体勢を立て直す。
が、『ゴーレム』たちの興味はもはやカラナには無いようだった。
そのすべての個体が、リーダーである『ハイゴーレム』までもが、
「……どうしたの?」
釣られて視線を同じ方向に向ける。向いた先は、村の入口方向だった。
人影がひとつ、
黒いぼろぼろの布切れの様なローブを身に
『ゴーレム』がケタケタと一斉に笑う。
まるで新しいオモチャを見つけた様に、獲物に群がる昆虫の様に、黒ずくめに突き進んで行く!
しかし、『ハイゴーレム』だけはあらぬ方向に飛び退き、林の奥へと走り去って行った!
見抜いたのだろう。実力の差を。
黒ずくめが杖を振り上げる!
マスクで顔を
とてつもなく密度の高いコードが書き上げられて行く!
地響きが村を覆い尽くし、大地が揺れる!
髪を振り乱し、黒ずくめに飛び掛かる『ゴーレム』の群れ――”彼女”たちを、大地から生えた巨大な氷の槍が
「ぎゃああッ!」
次々に地を破って突き出る氷の槍が、『ゴーレム』の
奇声とも悲鳴ともつかない
それに
背後の民家のさらに向こう、視界の届かない路地の向こう、さらにはまったく村の反対側からも氷の槍が跳ね上がる!
やがて、地鳴りが止み、土の雨がぱらぱら降り注ぐ中、一瞬でコラロ村には
おそらく、見えない範囲にいた個体も含め、すべての『ゴーレム』を一度に
「……こんなことが……」
地面から突き出た氷の槍に串刺しにされ、ぴくりとも動かなくなった『ゴーレム』たちを見回す。
ちょうど視線を
術者が魔法を解いたか、射程範囲の外に去ったのだ。
「待って……!」
我を取り戻し村の入口を見やるが、そこにいた黒ずくめの魔導師は姿を消した後だった。
***
「よく『ゴーレム』を
襲撃から翌朝、カラナはコラロ村の村長ローレルの家に呼び出されていた。
村の北西に位置する村長宅は、一番奥にあったこともあり、大きな被害は出ていない様子だった。もともと、石造りの立派な
リビングの窓際のテーブルを挟み、差し出された紅茶に一口つけるカラナ。
「
「ほう? 誰だ?
コラロ村にお前を支援
ローレルも同じく紅茶を飲む。
村長と呼ばれるにはやや若い、初老の女性。白髪
「いえ。乱入です。どこからともなくやって来た魔導師が、一瞬で全ての『ゴーレム』を
「何者だ?」
「わかりません。顔は見えなかったし、すぐに姿を消してしまった……」
「ふむ……」
ティーカップをテーブルに置き、ローレルがカーテン越しに窓の外を見やる。
村を一望できる高台に位置した屋敷からは、村の復旧作業の様子が見て取れた。
遠目に村人たちの傷を
「懸念材料だな」
「……ですね」
同意するカラナ。
昨日の黒ずくめの魔導師。敵でない保証はない。
昨日はあの魔導師のお陰で
「あの『ゴーレム』の群れを一掃できる使い手がこの村の周辺を
「追跡した方がよいと?」
「必要があるだろう。昨日の今日ですまないが、捜索隊を編成し村の周囲を警戒して欲しい」
「けれど、村の復旧もあります。あまり部下たちを捜索にあてがう事は出来ません」
「二、三日で良いだろう。それで特に
カラナは無言で
彼女は、出来ればあの魔導師と接触したいと考えていた。あれ程の腕を持った魔導師だ。さぞ名の通った人物の
しかしそうした人物であれば、
「話は変わるが………」
ローレルが、腕を組んで考え事を始めたカラナの思考を
「お前は今年の戦勝記念日も、首都へ行くのか?」
「そのつもりですが?」
戦勝記念日とは、勇者アコナイトと女神ローザが、魔女サイザリスを破った記念日だ。首都では毎年
もっとも、カラナの場合は
記念日は、混乱回避のために首都の警備体制が強化される。そのために各支部からも戦力が集められる。
基本的には志願制である筈なのだが……
ある事情から、カラナの意思に関係なくお呼びがかかるのが
「それがどうかしましたか?」
「どうせなら、首都へ行きがてら、村の現状を
ローレルの要望に頷く。
「……あと、この騒ぎを起こしてくれた
「その通りだ。その為にも、逃げた『ハイゴーレム』を
カラナは、ぐっと紅茶を飲み干して、席を立った。
「分かりました。捜索隊を編成、村の周囲の捜索に当たります!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます