第95話 広場で炊き出し

 今日は炊き出しをするから、早く起きた。ヴァイスはまだちょっと眠そうだ。朝ごはんを作ったら起きるかな?

 朝ごはんにフレンチトーストを作って、ベーコンを焼いてサラダも付けよう。朝ごはんが出来たからヴァイスを呼んで来ようと思ったら、すでに食べる準備万端だった。


「ヴァイスったらいつの間に!」


『うむ。早く食べるぞっ!』


「はいはい。食べようね」


 ヴァイスと一緒にご飯を食べたら、アルちゃんのポットを抱っこして戸締りをして外に出る。今日は広場で炊き出しを行うので、ユリウス様達と孤児院のみんなとそこで待ち合わせなのだ。

 ギルドからすぐ近くの広場に行くと、騎士様達が沢山いる。もうすでに色々と準備をしてくれている。


「ユリウス様、おはようございます。今日はよろしくお願いします」


「カノン様、今日はよろしくお願い致します」


「今日は豚汁とおにぎりを配る予定なので、出来た物から配って貰って良いですか?」


「はい、お任せください」


「後、孤児院の子達も手伝ってくれるのでよろしくお願いしますね」


「はい。では情報を流しておきますね」


 台の上に昨日作った豚汁を取り出して置いていく。これにエリクサーを入れて混ぜたら完成だ。これで病気に効いてくれると良いのだけど。

 5個全部にエリクサーを入れて、おにぎりもテーブルに沢山出していく。


「「「「「「カノンおねぇちゃーんっ」」」」」」


「あっ、みんな来てくれてありがとうね。今日はよろしくね」


「うんっ。今日はこれ?」


「うん、そうだよ。豚汁とおにぎりを一緒に配るんだよ~」


「分かったよ」


「それとみんなも食べてね」


「わぁい。カノンおねぇちゃんのごはんだいすきーっ」


「うん、おいしいんだよねっ」


「ふふっ、ありがとうね」


 みんなにも説明をしたので、そろそろ始めようかな。5個お鍋があるから、次を作るまで間に合うだろう。それにすぐに出来るしね。


「ユリウス様、こっちはもう大丈夫です。よろしくお願いします」


「はい。では始めるぞっ! 我々騎士団は主に家から出られない者に配るぞ」


「「「「「「はっ!」」」」」」


 さすが騎士団。統率が取れてて凄いね。私が作った収納バッグを持って行って貰おう。そうしたら沢山入れて配れるから、取りに戻る回数が減って早く配り終えられるかも。


「ユリウス様。街を周る人達にこれを持たせてあげてください」


「カノン様、これは?」


「収納バッグです。これに沢山入れて行けば配るのも早くなると思うので、お願いします」


「はい。では、お預かりしますね。ってこんなにあるんですか!?」


「ええ、私が作ったので気にせずに使ってくださいね」


「あ、ありがとうございます」


 収納バッグもいくつか作っておいて良かった。これで街の人達の病気も早く良くなるだろう。手遅れになる前に配れると良いな。


 お鍋が大きくて危ないから、騎士団の人によそうのはお願いした。私は騎士団で用意してくれたお鍋を使って、次々に豚汁を作っていく。

 今日も錬金棒を持ってきているので、材料をお鍋に入れて錬金棒を入れたら完成しちゃうのだ。


「カノンおねぇちゃんの作り方、相変わらず面白いね」


「ふふっ、錬金棒は錬金術師の特権だからね~」


「見ていて楽しいんだよね」


『そんな変な錬金術はカノンだけだけどな』


「ヴァイスーっ!」


「きゅきゅ~」


 みんなに手伝って貰って豚汁とおにぎりを配り始める。おにぎりが足りなくなったらアイテムボックスから取り出して補充する。

 足りなくなってくると、ヴァイスかアルちゃんが呼びに来てくれるからとても助かる。


「カノンお姉ちゃん。豚汁ってどういう味付けなの?」


 そうビアンカに聞かれた。確かに材料を入れて錬金棒を入れたら豚汁が出来てるんだもん。味付け分からないよね。


「これはお味噌で味付けしてるんだよ~」


「そうなんだ。お味噌って使った事ないんだけど、今度教えてくれる?」


「いいよ~」


「ありがとうっ!」


 ビアンカはやっぱりお料理が好きだよね。貰えるスキルもお料理に関係する物だと良いね。お話しながらも、大きなお鍋に材料をぽいぽい入れて錬金棒を入れて作っていく。


「カノン。何か手伝う事はあるか?」


「カノン、私達も手伝うよっ!」


「なんでも言ってね」


「みんな、ありがとうっ」


 ゲルトさんやヘルミーナにエルナ、今まで交流のあった人や他の冒険者達も次から次へとお手伝いに来てくれた。


 お昼くらいに、やっと半分くらい配れたみたいだ。騎士様達が頑張ってくれているので、病気になっていた人達にも大分配れたみたいだ。

 たまに戻って来ては大量に収納バッグに詰め込んで走って行っている。


「カノンおねぇちゃん」


「ん、レオナどうしたの?」


「あのね、みんなが色々言ってるんだけど……どうしたら良いのかな?」


「色々?」


「うん。なんか何年も前に無くなった腕が生えたとか、目が見えるようになったとか何年も前にした怪我が治ったとか?」


「ああ、なるほど。えーっと、豚汁って凄いね~」


「えぇぇっ!? 豚汁が凄いのっ!?」


『こらっ!』


「あははっ」


「ヴァイスちゃん。本当は違うの?」


『当たり前であろう。豚汁にそんな力あるわけなかろう』


「まあ、そう言っておけばいいよ~」


『まあ、そうだな』


「うん、分かったっ!」


 お昼は交代でみんなにも食べて貰った。子供達もみんな働き者ばかりなので、なかなか休憩してくれないんだよね。でも、みんなとっても楽しそうにお手伝いしてくれているから、今度お礼に美味しいおやつを作って行ってあげよう。


「カノン様、今日は国民達の為にありがとう」


「カノンお姉さまっ!」


「えっ!? レオンハルト様、シャルロッテ様っ!?」


「ふふっ、今日は一緒に参りましたわっ!」


「あっ! そういえば、王城へは誰か持って行ったんですか!?」


「ああ、それなら終わってからで問題ないよ。国民の方が大事だからね」


「もちろんですわ!」


「ふふっ。この国は素敵な王族で幸せですね」


「レオンハルト様、シャルロッテ様っ! なぜこちらに!?」


「ははっ、今日はこれだけ騎士達が街の中を走り回っているんだ。問題ないだろう?」


「そうですわ。私もカノンお姉さまのお手伝いをするのですっ!」


「「「「えぇぇっ!?」」」」


 シャルロッテ様の言葉で周りみんなびっくりしている。まさか王女様にお手伝いして貰うわけにはいかないと思うんだけど、とレオンハルト様を見る。


「よし、では私も手伝おう。ここに居ればユリウス達も安心だろう」


「た、確かにそうですね」


「えぇぇっ!?」


「カノンおねぇちゃん。おにぎり貰える?」


「うん、レオナありがとう。すぐに出すね」


「私も行きますわっ!」


 結局一緒に行って、王女であるシャルロッテ様と分かってレオナ達も緊張していたけれど、子供同士だからかすぐに打ち解けていた。

 それからは一緒におにぎりとか豚汁をみんなに配っている。レオンハルト様もお手伝いに参加して、国民みんなびっくりだ。


 やっぱり王都だからか人が多いね。夕方になってようやく配り終わった。食べてない人や具合が悪くなった人には王城に知らせに来てもらう事になった。


「みんな、お疲れ様。今日は手伝ってくれてありがとうね。今度おやつ持って行くね~」


 孤児院の子達と別れて、今度は王城へ向かう。王城で国王様達や貴族達に振舞う事になっている。

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