第94話 炊き出しの準備

 お店もお休みにしているので、炊き出しはいつでも出来る。今日は準備をして、明日炊き出しを行う事になった。

 明日の予定を決めた後は、また馬車でお店まで送って貰った。


「明日の準備の為に孤児院の畑に行こうか」


『そうだな』


「きゅきゅーっ!」


「ふふっ、みんなで行こうね!」


 アルちゃんのポットを抱っこして、ヴァイスを肩に乗せて孤児院の前の畑に歩いて行く。畑に着くと、何も実っていないので、お肉もお野菜も錬金じょうろで育てて収穫しちゃおう。


「あれ、カノンおねぇちゃん?」


「あっ、レオナ」


「収穫するの?」


「うん、明日街で炊き出しをするんだよ。その為の材料を採ろうと思ってね」


「じゃあ、みんな呼んでくるねっ!」


 そういうと、レオナは走って孤児院へ向かって行った。少しすると、孤児院のみんながお手伝いに来てくれた。みんなも手伝ってくれるみたいだ。


「みんな、ありがとう。明日街の人達に炊き出しをするから、みんなも食べに来てね」


「ううん。お手伝いするよ!」


「ぼくもーっ!」


「わたしもやるのー」


「ふふっ、みんなありがとうね。みんなは病気は大丈夫?」


「「「「うんっ!」」」」


 みんな元気いっぱいで私も嬉しい。大量に収穫をしたら、明日の約束をしてお店に帰ろう。ラルス達はいつも屋台で働けないので、小さい子達がとても嬉しそうだ。

 明日はみんなに最初に食べておいてもらわなきゃだね。


 帰りに調理器具を売っているお店に寄って大きなお鍋をあるだけ買ってきた。5個買えたから間に合うかな?

 お店に帰ったらエリクサーを沢山作っておかなきゃね。


 エリクサーの材料は治癒草、魔力回復草、不死鳥の羽、蒸留水だね。魔力を流すのと、不死鳥の羽、治癒草と魔力回復草を刻むのと材料を省略したら、まさかの蒸留水だけで作れちゃう!?

 帰って早速錬金部屋へ急ぐ。


「うふふ。蒸留水を錬金釜にいれまーすっ!」


『む!?』


「きゅっ!?」


「エリクサーのでっきあっがりー!」


『かーのーん-!?』


「あははっ、楽しすぎる!」


「きゅきゅ~!」


 その後もぽんぽんエリクサーを作ってアイテムボックスに仕舞っておいた。何かがおかしい。


「エリクサーってぽんぽん出来るもんだっけ。いたっ」


『そんなわけあるかっ!』


「きゅっ!」


 とうとうアルちゃんにまで肯定されてしまった。私もなんかおかしいとは思う。でも、錬金術(省略)スキルさん、ありがとう。大好きです!



「明日は何のお料理を作ろうかなぁ。でも炊き出しだっらやっぱり汁物が良いよね、身体も温まるしね」


『そうだな。エリクサーも入れるんだろう?』


「あっ、そうだったね」


「きゅ!」


「だったら、豚汁にしようかな」


『旨そうだな』


 お野菜を沢山入れて、栄養タップリのエリクサー入り豚汁を作ろう。後はおにぎりを大量に作って配ろうかな。


「ん~……お米、お水、研ぐ、炊く、握る……」


『どうした?』


「おにぎりも一緒に配ったらどうかと思って、作業工程を考えてたんだよね」


「なるほどな」


「うーん。豚汁があるから塩おにぎりで良いかなぁ」


 そう考えると、魔力を流す工程も省略したいから、お水とお塩を入れたら塩おにぎりになっちゃうの!?


 錬金釜にお水とお塩を入れるとぽふん! とお皿に乗った沢山の塩おにぎりが出来た。


『また凄い事になったな』


「よし、これで大量に作っちゃうぞーっ!」


「きゅきゅ~!」


 その後もお水とお塩を入れて次々に塩おにぎりを作ってアイテムボックスに仕舞っていく。何回作ったか分からないほど作った。これでなんとか街の人達の分はあるだろうか。


「さすがに時間掛かったね」


『そうだな。だが、普通に作ることを考えたらおかしい早さだからな?』


「確かに」


「きゅっ!」


 後は、木材を使ってボウルとスプーンを大量に作っておこう。これも錬金釜をパタンで終わってしまうのは素敵すぎる。しかも1回で大量に出来ちゃうんだよね。

 これも出来たら次から次へアイテムボックスに仕舞っていく。


「ふぅ。これでなんとか準備は終わったかなぁ」


『そうだな。大量だったな』


「きゅきゅ~」


 さて、そろそろお夕飯の時間だね。今日は何を作ろうかなぁ。


「ヴァイス。お夕飯は何か食べたい物あるかな?」


『ふむ。久しぶりにワイバーンの肉が食べたいぞ』


「おっけー。じゃあ、ワイバーンのステーキと唐揚げ作っちゃおう~!」


『お酒もだぞ!』


「ふふっ。でも、明日があるからちょっとだけだよ?」


『うむ!』


 ワイバーンは焼いただけでも美味しいから、シンプルにステーキと唐揚げは塩唐揚げにしようかな。後は、具沢山のお味噌汁を作ろうかなぁ。


 アルちゃんにはお湯と栄養剤を足してあげよう。


「きゅきゅぅ~」


「ふふっ、気持ちよさそうだね~」


「アルちゃんは明日はどうする?」


「きゅっきゅっ!」


「一緒に行ってくれるんだね、ありがとう。孤児院の子達も来るもんね」


「きゅっ!」


 お夕飯が出来たら、ヴァイスにはビールかな。私は今日は飲むのを止めておこう。明日朝早くから準備に動かなきゃいけないしね。

 お夕飯を食べ終わったら、明日の豚汁を作っておこうかな。


『カノン。やっぱりワイバーンは旨いな! ステーキも旨いが唐揚げも旨いぞっ!』


「ふふっ、良かった。食べ過ぎないように気を付けてね」


『うむ! ワイバーンの肉はまだあるのか?』


「うん、まだあるよ~。でも大分減ってきたかなぁ」


『むむ。ではそのうち取りに行くか』


「あはは、そうだね。美味しいもんね」


 ヴァイスはお酒と一緒にゆっくり食べているので、私は先に食べ終わった所で明日の豚汁作りを始める。

 大きなお鍋を取り出してコンロに掛ける。玉ねぎ、人参、豚肉、後はお揚げも入れようかな。ごぼうと大根はまだ見かけていないからそれくらいだろうか。あっ、お腹に溜まるしじゃがいもも入れよう。


 今日収穫した材料をお鍋にぽいぽいっと入れる。そこに錬金棒を入れると、ぽふん! と豚汁の完成っ!


「ふふっ」


『どうした?』


「いや、もう出来ちゃったな~って思って」


『はっ?』


「錬金棒を入れたら完成しちゃった。ヴァイス、味見いる?」


『うむ、もらおうか』


 ヴァイスに少し味見用をよそって出してあげる。私もちょっと味見をしておこう。


「うん、美味しいね」


『うむ。省略したものの旨いな』


 次のお鍋にも作っちゃおう。出来た豚汁のお鍋をアイテムボックスに仕舞って、次のお鍋を取り出す。同じように5個のお鍋に豚汁を作ってしまおう。


「エリクサーは明日入れたら良いかな」


『そうだな。しかし、我がいなかったらどうしていたのやら』


「どうだろうねぇ。だけど、見て見ぬふりは出来なかっただろうな」


『そうであろうな』


「ヴァイス、ありがとうね。お蔭で後悔せずにやりたい事が出来るよ」


『うむ、任せておけ。ただ、カタリーナに次にあった時に怒られるが良い』


「えぇぇっ!?」


 確かに師匠には省略を人前で使わないようにとか、エリクサーの事も言われていたなぁ。だけど、人の命以上に大事な物はないもんね。

 これは怒られるの覚悟しておかないとだね。


 準備が出来たら、今日は早く休んでおこう。明日は一日大変だけど、頑張ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る