第93話 王城へ報告へ行こう
ヴァイスを肩に乗せて王城へ向けて歩いて行く。でも、まさか魔族を倒しても魔石が出るとは思わなかった。魔人が倒れたままだったらどうしようと思ったから、魔石ならまだ大丈夫だ。
だけど、それをアイテムボックスに入れたままお家に帰るのはちょっと怖いから、早く王城へ行って渡してきてしまいたい。
「この前感じた魔力と同じ人だったの?」
『うむ。同じ魔族だったから、もう安心して良いだろう』
「そっか。それは良かったよ~」
王城の門へ着いて、今日は国王様に用事があるので取り次ぎを頼んだ。少し門で待っていると、テオドール様が来てくれた。
「テオドール様、突然すみません。よろしくお願いします」
「大丈夫ですよ。陛下にも伝えているので、すぐにお会いする事が出来ると思いますよ」
「はい、ありがとうございます」
テオドール様の後を付いて歩いて、前に国王様にお会いした部屋に通された。メイドさんがお茶を出してくれたので、座って少し待っていると部屋の扉がノックされた。
慌てて立ち上がると、国王様とユリウス様が入ってきた。
「突然すみません」
「いや、こちらこそ知らせてくれてありがとう」
『うむ。カノン、さっきの魔石と翼を出してくれるか?』
「うん」
席に着いた私達の前にあるテーブルの上に、魔人の魔石と翼を置いた。その後の説明はヴァイスがきちんとしてくれたのだけど、魔人相手にも一撃で終わったとかヴァイスの強さが凄いね。
「ヴァイス様、ありがとうございました」
『うむ』
無事に魔人の魔石も渡せたので、王城を後にする。アルちゃんとヴァイスと一緒にお店に帰ろう。
お店に帰ると、もう日が傾いていた。
「2人ともお疲れ様。アルちゃんはお湯を入れ直すね~」
「きゅきゅぅ~」
『我は腹が減ったぞ!』
「うん。お夕飯にしようね。今日は天ぷらにしようか」
『そいつは良いな。カノン、酒も飲むぞ!』
「はいはい。天ぷらだったら、やっぱり日本酒かな」
天ぷらとおつまみも色々用意して、私はカクテルを飲みながら美味しくご飯を食べた。ほろ酔いで楽しくなってきたので、ヴァイスをもふもふしちゃおう。
『こらっ、カノンっ』
「ふふっ。気持ちいい~」
その日は寝る準備をした後も、ヴァイスをもふもふすりすりしていたらそのまま寝落ちした。おかげで、次の日の朝も幸せ気分で起きられました。
ヴァイスにはげんなりした顔をされたけど、気持ちいいのだから仕方ない!
数週間後、最近は肌寒い日も大分増えて来た。これから2~3週間すると雪も降ってくるみたいだ。寒くなってきたからか、体調を崩した人の話も良く聞くようになってきた。
「そろそろ屋台はおしまいかな~」
『そうだな』
アルちゃんは屋台で2人のお手伝いをしてくれている。街のみんなもアルちゃんを凄く可愛がってくれているので、とても嬉しい。
お店で商品を作ったり並べたりしていると、お店のドアが開いた。ユリウス様とテオドール様がやってきた。
「カノン様。すみませんが、明日王城へお越し頂く事は可能でしょうか?」
「王城へですか?」
「ええ、少し相談したい事がございまして」
「分かりました」
「では、朝に迎えの馬車を用意致しますので、よろしくお願い致します」
「はい」
まさか馬車まで準備してくれるとは思わなかったけれど、何か重要な事があるのだろう。今までだったらそのままお話する事になっていたもんね。
「明日はお店をお休みにしようね」
『そうだな』
店じまいをした後、レオナ達に明日がお休みな事と、屋台も暖かくなるまでお休みにする事も話し合った。屋台を開いていても、体調を崩した人の話をちょこちょこ聞いたみたいだから、明日からお休みにする事になった。
まだ孤児院の子達には体調を崩した子はいないみたいでホッとした。
次の日の朝早く、お城からの馬車が到着した。ヴァイスを肩に乗せて馬車にのると、王城へ向かって走り出した。
「今日はどんなお話なんだろうね」
『なんだろうな。まあ、我に任せておけば良い』
「うん、いつも頼りにしてます!」
『うむ!』
王城に着くと、メイドさんに案内されて、いつも国王様にお会いするお部屋に到着した。今日は国王様とお話なのかな?
少し部屋で待っていると、国王様とユリウス様が入ってきた。
「カノン様、ヴァイス様。本日はわざわざありがとうございます」
「いえいえ、大丈夫です」
『うむ』
挨拶が終わりメイドさんがお茶を出してくれた所で人払いがされた。ヴァイスが結界を張ると安心して話せるようになった。
『それで、今日はどうしたのだ?』
「それが、今この王都で病が流行りだしています。今回の病はいつも以上に猛威を振るっているみたいなのです」
『ふむ。それでどうしたら良いのだ?』
「まだその病に効く薬がないのです。そこでヴァイス様に何か良い案がないか、お聞きしたかったのです」
なるほど。ヴァイスだったら長生きのドラゴンだものね。でも、ヴァイスでも人間の病にはあまり詳しくないみたいだ。
どんな症状が出るのか聞いてみると、インフルエンザみたいな感じだね。感染力も強く、高熱が出て倦怠感もあって死の危険もある。
毎年何人かはこの病で死者が出たりするみたいだ。どうにか出来ないかな。
でも、もし薬が出来たとしてもこの王都の住人全てに行き渡るまでにどれくらい時間が掛かるのか微妙過ぎる。
それに病気に効くポーションってどんな物だろう。回復ポーションも上級ポーションも病気には効かないんだよね。
私が悩んでいる間も国王様達とヴァイスの話し合いは続いている。でも、なかなか良い案が出ないみたいでみんな難しい顔をしている。
「王城ではまだ大丈夫なのですか?」
「いや、王城でも増えて来ているな」
「そうなのですね」
『ふむ。それは大分まずい状況だな』
「そうですね。今年は感染が爆発的に増えている感じで、例年よりも早い気がします」
本当にまずい状況になっているみたいだ。孤児院の子達はまだ大丈夫みたいだけれど、心配だ。インフルエンザみたいな風邪に効く薬、どうやったら作れるだろうか。
アイテムボックスの中身を思い浮かべながら考える。
「あれ? エリクサーって病気にも効く?」
『……カノン。エリクサーがそんなに簡単に手に入るわけなかろう』
「あっ、そういえばそうか」
「そうですね。エリクサーがあれば病気にも効くのですが、何分貴重すぎてなかなか手に入らないのです」
私にはエリクサーが作れちゃうから、それをどうやったら街の人達に使えるだろうか。エリクサーと分からずに使えたらそれで良いような気がするよね。
そして、私がいる間にその病に効くポーションを作れるようになれば良いんだよね。
「あっ、炊き出しっ!」
『カノン?』
「炊き出し、ですか?」
「ヴァイス。私にはやっぱり自重は無理みたいだよ」
『そうであろうな。まあ、我がいるから好きにやると良い。ダメな時はどこか別の所に行けば良い』
「うんっ!」
「カノン様?」
「えっと、エリクサーはいくらでも作れます。それに1口でも効きますよね?」
『そうだな』
「ええ、多分効きますね」
「なので、炊き出しをしてみなさんに配りましょう。栄養も取れて、エリクサーも配れます」
人の命が掛かっているのに自重している場合ではない。そのせいでこの国に居られなくなったとしても、後悔はしない。
ヴァイスにもその気持ちが通じたみたいだ。ヴァイスは私の好きにして良いというので、好きにさせて貰おう。
「カノン様、ヴァイス様。よろしくお願い致します。国民を助けて下さい!」
「我々騎士団も全力で手伝わせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」
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