第92話 畑の防犯は?
数日経って、今日は孤児院に防犯ボタンを設置しに行こう。畑の防犯はアルちゃんがやってくれるから、アルちゃんの入っているポットを抱っこして、ヴァイスは肩に乗せて歩いて行く。
まずは孤児院でみんなに魔力を登録して貰おう。私とヴァイスとアルちゃんはもう登録済みだ。孤児院へ着くと、みんなはきゃーきゃー遊んでいる。
「あっ、カノンおねぇちゃーん!」
「こんにちは。今日も良いお天気だね~」
「みてみてっ。ぼく、トランポリンうまくなったんだよ!」
「わぁ、そうなんだ。ラルス、見せて見せて~」
ラルスは得意気な顔になって、ぽよんぽよん上手に跳ねている。みんなも上手になったみたいで、次々に見せてくれる。
「みんな、上手になったね~」
こんなに楽しんでくれるなら、体力をつける為にも他の遊具も考えてあげないといけないかもしれないね。
みんなには魔力を登録して貰って、今度は孤児院の中に入って色々な人に魔力を登録して貰っていった。全員に登録して貰ったら、孤児院の外の壁にペタリと貼り付けておいた。
「カノンおねぇちゃん。それは何の魔道具なの?」
「これは悪い人が入れなくなる魔道具だよ。何かあったら孤児院の中に入れば安心だからね」
「そうなのっ!?」
「うん。魔力を登録していない人は孤児院に入れないんだよ。もし、登録したい時は登録している人が先に魔力を流してからにしてね」
「うん、分かった!」
その後は畑に行こう。みんなも一緒に来てくれたので、ぞろぞろと畑に向かう。アルちゃんは孤児院の子達に大人気で、みんなと楽しく遊んでいるんだよね。
畑に着くと、アルちゃんがやる気を出している。
「きゅきゅ~」
アルちゃんのポットが地面に下りて、土の中に潜る。畑の外にぽこぽこっと盛り上がったのが見えた。よく見てみると、小さいアルちゃんがいっぱい?
「アルちゃんがいっぱい?」
「きゅっ!」
アルちゃんはクリーン魔法を掛けて、ポットに帰っていく。でも、小さいアルちゃん達はこのままで良いのだろうか?
「アルちゃん。小さい子達はこのままで大丈夫なの?」
「きゅっ!」
「みんなが間違えて抜いちゃっても大丈夫?」
「きゅっ!」
もし間違えて抜いてしまっても大丈夫みたいだ。まあ、アルちゃんが子供達に危害を加えるとは思えないしね。
「じゃあ、今度みんなの分の水耕栽培ポットを作って来ようね」
「きゅっ! きゅきゅ~」
それはやっぱり嬉しいみたいだ。みんなにもお湯を足してあげるように伝えておこう。みんなもアルちゃんが好きだから、きっとお世話してくれるだろうな。
しかし、畑の守りが小さいアルちゃん達だなんて思わなかった。でも、ある意味最強?
「アルちゃんは色々な事が出来て、本当に凄いねぇ」
「きゅぅ~」
その後は、アルちゃんとヴァイスは小さい子達と遊んでいる。私はその間に冬用の保存食作りをしよう。お肉を塩漬けにしたり、ベーコンを作ったり錬金棒も使いながら、みんなで楽しく作っている。
「カノンおねぇちゃんの錬金術って、本当にすごいね」
「私も錬金術師になりたいなぁ」
「ふふっ。私のは師匠が良かったんだよ~」
「15歳の成人が楽しみだけど、そうすると後1年しかここに居られなくなっちゃうのが寂しいんだよね」
そういうビアンカが寂しそうな顔をしている。今14歳のビアンカはもう少ししたら15歳のお誕生日が来るんだよね。
思わずビアンカの頭をなでなでとゆっくり撫でる。
「今までみんなが居たから、やっぱり寂しいし不安になるよね。だけど、ビアンカは街の人達とも仲良くなったんだもの。きっと大丈夫だよ」
「うん、そうだよね。みんなね、屋台を開いていると沢山お話してくれるの。それがとっても嬉しくて楽しいの」
「うん。だからどんなスキルを貰っても大丈夫だよ」
「うんっ」
やっとビアンカに笑顔が戻った。ビアンカは少し大人し目の子だから、尚更不安なんだろうね。孤児院を巣立つ前に屋台で街の人との交流を持てたのは、本当に良かったんだと思う。
これからもそうやってサポートしていってあげられたら良いな。
保存食を作り終わったら、小さい子達も一緒にクッキー作りをした。型抜きをしたり、色々な形を作ったりして楽しく過ごす。
「カノンおねぇちゃん。みてみてーっ!」
「わぁ! これヴァイス?」
「うんっ! こっちはアルちゃんだよー!」
「うわぁ、上手だねぇ」
まさかヴァイスとアルちゃんのクッキーを作れる子がいるなんて思わなかった。しかも、手で作ってるのに、凄い上手なの。
『ふむ。恰好良く出来ているではないか』
「きゅきゅぅ~」
みんなで楽しく過ごした後は、お店に帰ろう。すぐに水耕栽培ポットを作って、小さいアルちゃん達を入れてあげないとね。
水耕栽培ポットはガラスポットと青の魔石(中)、赤の魔石(中)、白の魔石(中)だ。魔石を貼り付けるのとガラスポットを作るのと入れるのを省略して、魔石を貼り付けるのを3個とも省略しよう。
6個省略出来るようになったから、魔石をぽいぽいっと入れるとぽふん! と水耕栽培ポットが出来た。
「ん~。省略出来るから簡単に出来るね!」
『そうだな』
すぐに小さいアルちゃん分を作れたので、早速畑に戻って入れてあげよう。またアルちゃんとヴァイスと一緒に畑に向かう。
「きゅ~」
『小さいアルもアルの特性を引き継いでいるのか?』
「きゅっ!」
「アルちゃんの特性?」
『うむ。アルはなぜか人を選んで気絶させられるのだ』
「ん? 普通は出来ないの?」
『ああ、出来ないであろうな。聞いたことないぞ』
「そうなんだ。アルちゃんは凄いんだね~!」
「きゅぅ~」
そんな話をしていたら、畑に着いた。畑で小さいアルちゃんの隣に小さいポットを埋め込んで、お湯を入れてあげる。自分からよいしょっと土から出て来て、クリーン魔法を掛けてポットに入っていく。
アルちゃんよりも小さいドラゴン型のマンドラゴンがもぞもぞ動いているのが、なんとも言えず可愛い。
「ふふっ、可愛いね。畑をよろしくね」
「きゅっ!」
他の小さいアルちゃん達も水耕栽培ポットを埋め込んで移動させてあげた。孤児院の子達にはアルちゃんの入っているポットにお湯を入れてあげてねとお願いしているので、これで大丈夫かな。
「よし、お家に帰ろうか」
「きゅっ」
『うむ。帰るか』
アルちゃんのポットを抱っこしたら、ヴァイスが肩に乗ってきた。お店に向かって歩ていると、ヴァイスがピクリと動いた。
『む。カノン、ちょっと待ってろ』
「どうしたの?」
『アル、カノンを頼んだぞ』
「きゅっ!」
『カノン、少し離れていろ。魔族がいる!』
「ええっ! わ、わかった!」
ヴァイスが路地にパタパタと飛んで行ったのを見届けてから、私はアルちゃんのポットをぎゅっと抱きしめて少し下がった。
ヴァイスは強いから大丈夫だろうけれど、やっぱり心配だ。ドキドキしながら、ポットを抱く手に力が入っていたら、アルちゃんが私の手を優しくぽんぽんと叩いてくれた。
「ふふっ、アルちゃんが居てくれて心強いよ。ありがとうね」
「きゅきゅ~」
少し待っていると、路地の奥からヴァイスがパタパタと戻ってきた。
「ヴァイスっ!」
『カノン。悪いがアイテムボックスに仕舞って貰えるか?』
「うん、何を仕舞えば良いの?」
『魔族を倒したからな』
「倒せたんだ!」
『我だからな。何の問題もなかったぞ』
「そっか。良かったぁ」
「きゅきゅ~」
ヴァイスについて行くと、魔石と黒い翼が落ちていた。倒れている魔人を想像してちょっとドキドキしていたのだけど、それしか落ちていない事にびっくりした。
「あれ、魔石と黒い翼だけ?」
『うむ。それを仕舞っておいてくれるか?』
「う、うん。とりあえず王城へ向かおうか」
『そうだな』
まだ明るい事もあって、すぐに王城へ向かう事にした。
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