第65話 ひえひえ扇風機

 午後になると冒険者達が増えて来たけれど、なんとか落ち着いて出来ているみたいで良かった。ついつい外を見つめてしまうけれど、こちらもお客様だ。


「カノン、表のかき氷美味しかったわ!」


「ヘルミーナ、もう食べてくれたのね」


「えぇ。さっぱりとして今の時期にとっても良いね!」


「良かった、ありがとうね」


 ヘルミーナも外で食べてくれたみたいだ。また外の屋台が忙しそうになっている。お店を見ていたヘルミーナが驚いた声を出した。


「カノンっ! これってアイテムバッグなの!?」


「ん? うん、そうだよ。作ってみたんだよね~」


「えっ、作ったの!? カノン本当に凄いねぇ」


「そう、かな?」


「でも、やっぱり高いよね?」


「そうね、金貨1枚と大銀貨5枚だねぇ」


「えっ! 安くない!?」


「そう? でも時間経過はあるわよ? それに容量は荷馬車1台分くらいかな」


「安いと思うわよ?」


「作ったから多少安く出しても良いかなって思ってね」


 安かったみたいだけど、まあ良いよね。あんまり作り過ぎないようにしておいたらいいかな。


「荷馬車1台分も入るなんて良いわね。私も欲しいなぁ」


「今だとウェストポーチとリュックの2種類あるわよ」


「ウェストポーチタイプ良いわね! ん~、カノン。明日買いに来るから取っておいて貰っても大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ」


 やっぱりウェストポーチタイプは良いみたいだ。確かに動くのにも戦うにも便利だよね。ウェストポーチタイプの収納バッグはカウンターの中に仕舞っておいた。


「ふふっ。そして明日は別の味のかき氷だわっ!」


「あはは、なるほど」


「だってあれ美味しかったのよ~。あの女の子は建国祭の時にいた子よね?」


「うん、そうだよ。孤児院の子達なんだけど、可愛いし良い子達ばかりなのよ!」


「本当に可愛いし良い子達よね~。この前の男の子も可愛かったわ」


「建国祭の時にいた男の子はラルスだよ。可愛いよね~」


「そうなのよ! でも今日の子も恰好良いのだけど、可愛さもあるのが素敵!」


 ラルスもフリッツも人気があるみたいです。可愛いから当然ですけどね!


「でも、かき氷も美味しいから暑い時期には嬉しいわ」


「寒くなってきたらまた何か考えるわ」


「そうね! 何か手伝える事があったらいつでも言ってね」


「うん、ありがとう!」


 この街の人達はみんな優しいよね。なかなかきっかけがなくて孤児院の子達に手を差し伸べられなかっただけなんだろうね。私も日本にいた時にはそんな事出来ていなかったもんね。


 夕方になったので、外に出てお片付けをしよう。テーブルと傘は畳んでそのまま置いておく事にした。さすがにこんなの盗む人もいないだろう。


 お片付けをしたら一度キッチンのテーブルに座って今日の売り上げを確認する。今日は90人くらい来てくれたみたいだ。1個銅貨2枚だから、銀貨1枚と小銀貨8枚あった。これなら子供達のご飯の材料が買えるようになりそうだ。


「カノンおねぇちゃん。今日ね、とっても嬉しかったの。みんな私達が作ったかき氷を喜んでくれて、にこにこして食べてくれたんだよ」


「うん。俺もすごくうれしかった。街の人達は俺達の事嫌いだと思ってたんだ。だけど、頑張れよって応援してくれたんだ」


「うん。みんな、きっかけがなかっただけなんだよ。良かったね」


「うん、カノンおねぇちゃん。ありがとう!」


「ありがとう」


「このお金があればみんなに美味しい物を食べさせてあげられるね」


「うんっ!」


「待って! 材料費とか場所代を引いてくれ」


 フリッツは12歳だからか大分しっかりしているみたいだ。本当はそのまま渡しちゃおうと思ってたんだけどな。


「場所代は必要ないから大丈夫だよ。材料費は売れた金額の1割で良いかな?」


「損して無いか?」


「うん、大丈夫だよ」


 フリッツに1割引いて渡してあげる。だけど、このまま帰すのは心配なので一緒に帰ろう。


「カノンおねぇちゃん。後お昼代をそこから引いて」


「あっ、それはいらないよ。だって、うちのお店の屋台を出して貰っているんだもん。賄いは必要な事だよ」


 無事にお金を渡せたので、孤児院まで送って行こう。ヴァイスを肩に乗せてお店の戸締りをして外に出る。


「そういえば、お買い物して行かなくて大丈夫?」


「うん。このまま院長先生に渡したい」


「そっか。じゃあ、帰ろうか」


 レオナと手を繋いで歩いて行く。2人とも頑張ったこともあり少し疲れた顔をしていたけれど、とても満足気な表情だ。


「忙しかったから今日はゆっくり休むんだよ?」


「うんっ。私、明日も行くんだよ!」


「あっ、レオナは明日もなんだね」


「うん、楽しみっ!」


「ふふっ、それは良かったよ」


 2人を送って来てヴァイスと一緒にご飯を食べたら、錬金タイムだ!

 今日はかき氷用のお水を準備するのが楽になる魔道具を作ろう。製氷機でそのままお水も出て氷になったら良いのでは?


 製氷機の中に青の魔石をもう1つ付けてみようかな。


『今日は何を作るのだ?』


「うーん。製氷機のスイッチを入れたらお水も出て氷になってくれないかなと思って」


『なるほどな。今日何回も大変そうだったからな』


「そうなんだよね~。いちいち頼みに来るのも大変かなと思って、なるべく楽にしてあげたいなと思うんだよね」


 製氷機の内側に青の魔石(大)を貼り付けてお水が出てロックアイスみたいになるようによく思い浮かべて錬金釜に魔力を流す。5分くらい魔力を流すとチーン! とレンジの音が鳴る。

 蓋を開けて鑑定してみると、製氷機と書いてある。特にお水が出ると書かれてないけれど、試してみよう。


 製氷機のスイッチを入れて少し待ってから製氷機の蓋を開けてみると、ロックアイスのような塊の氷が沢山出来ている。きちんと出来たみたいで良かったね。


 後はクリーン魔法が使える道具が欲しいよね。トレイの上に食器を置いてボタンを押すとクリーン魔法が使えるようにしておこうかな。

 少し深めのトレイを木材を錬金釜に入れて作ろう。出来たら緑の魔石(クリーン)を貼り付けて錬金釜に入れる。魔力を流したらクリーン付きのトレイが完成!



「後は外にいても涼しく働けるように、冷たい空気が出る魔道具欲しくない?」


『ふむ。レオナ達は汗いっぱいだったから良いかもしれんな』


「やっぱりそうだよね!」


 羽のない扇風機みたいなのにしようかな。あっ、でも足元に置くならサーキュレーターくらいの小さめが良いよね。


 緑の魔石と青の魔石で出来るかな。ひんやりとした冷たい風を出すだけだから簡単に出来そうだよね。


 サーキュレーターみたいな形をミスリルで作っちゃおう。錬金釜にミスリルを入れて蓋を閉めたら魔力を流す。


『カノンはミスリルばかり使っているな』


「本当は貴重なのは分かっているんだよ! でも鉄みたいに錆びないし、軽くて便利なんだよね~」


『そんなこと言うのはカノンくらいだぞ』


「えへっ」


 形が作れたら魔石を張り付けよう。内側に緑の魔石と青の魔石を張り付ける。

 終わったら錬金釜に入れて魔力を流そう。


 チーン!


 錬金釜の蓋を開けて鑑定してみると、冷えすぎ扇風機と書いてある。何かがおかしい。

 試しにスイッチを入れてみると、確かにちょっと風が冷たい。ちょっと冷えすぎるかも。スイッチでもう1段弱いのも付けようかな。

 もう一度錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を流すと、すぐに出来上がった。蓋を開けて鑑定してみると、ひえひえ扇風機と書いてあった。よく鑑定してみると、スイッチを入れる回数で段階的に冷えるようになったと書いてある。うん、これなら良さそうだね。


「きゅ~……」


「きゃー、アルちゃん!」


 後ろでアルちゃんが寒くて凍えていた。急いでお湯を減らしてから熱いお湯を足してあげる。栄養剤も足しておこう。


「アルちゃん、ごめんね!」


「きゅきゅ~」


 気にしなくて良いよと言うように手をふりふり~としてくれて、気持ちよさそうにお湯に浸かっている。

 冷えるアイテムを作る時は気を付けないとね。

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