第46話 鉱山ダンジョン

 数日たった定休日。今日はヴァイスがいた山に行って鉱山ダンジョンへ行く予定だ。黒の魔石が欲しいんだよね。


 師匠と朝ごはんを美味しく食べたら、ヴァイスを肩に乗せてお店を出る。王都の外に出て少し歩いてからヴァイスに乗せて貰い、ヴァイスのいた山へ向かっていく。

 今日はチェニアの街には寄らずに、そのまま鉱山ダンジョンへ向かう。今日もフローデスベルナーを履いてきたので、さくっとダンジョンを進んで行く予定だ。


『カノン、最初の方は弱い魔物しかいなくて魔石も(小)ばかりだから、フローデスベルナーでさくっと進むぞ』


「そうだね。ヴァイスに賛成!」


『うむ!』


 ヴァイスに揺られていると、すぐに鉱山ダンジョンへ着いたみたいだ。相変わらず速い。いつのまにかチェニアの街も過ぎたらしい。


「よし、早速行ってみよう~!」


 鉱山ダンジョンの入り口前で手続きをして貰い、扉の横の魔石を触ってダンジョンの中に入る。


「毎回思うけれど、ドアの意味って……?」


『ないな』


「だよね」


 ドアが開くわけではなく、テレポートする感じに近いんだよね。やっぱり異世界は不思議だらけだよね~。


 1階に入ると、ここは鉱山ダンジョンだからか、やっぱり薄暗いし入り組んでいる感じだね。これは上から階段を探せないから、探索しにくいかもしれないね。


「ヴァイス。岩が跳ねているんだけど、何だろう?」


『あれはイワイムだな』


「いわいむ?」


 鑑定してみると、岩のスライムでイワイムなんだそう。でも、ぽよぽよしないスライムだなんて、可愛くない!

 イワイムを倒すと、黄の魔石(小)をドロップした。フローデスベルナーを使ってささっと進んで行くと、1~2階はイワイムだった。

 3階へ下りて先に進むと、大きな芋虫みたいなのがいた。


「いやーっ! 虫だよ、虫はいやぁ!」


 ヴァイスが何かした感じはしたけれど、目を閉じていたから分からない。


『カノン、倒したぞ』


「うぅ、もういない?」


『ああ。だが、先に進むといるな』


「う~、虫だし大きいしあんまり見たくないよぅ」


『カノン、我が先に行くから後ろからついてこい』


 ヴァイスの素敵な言葉に甘えて、私の前をパタパタと飛んで先行してくれる。私はその2メートルくらい後をフローデスベルナーで滑ってついて行く。

 鉱山ダンジョンは少し広い部屋を通路が繋げているようなダンジョンなので、私の視界に入る前にヴァイスが大体倒してくれているので、私はドロップ品をアイテムボックスに仕舞いながらヴァイスについて行く。


「うぅ、ドロップ品でもさっきのあれから出てるのかと思うと、ちょっと微妙だ」


『そんなにか』


「うん。本当に虫はダメなんだよ~」


『まあ、我に任せておけばいい』


「ヴァイス、恰好良いっ! 大好きっ!」


『ふふんっ』


 ちょっと照れながら、えっへんと胸を張るヴァイスがとっても可愛いけれど、本当に助かります。戦闘職じゃなくて本当に良かった。あんなのと戦いたくないよ。


 さっきの芋虫からは黒の魔石(小)、マラカイト、絹糸が出たけれど芋虫だったよね?


「ねぇ、ヴァイス。さっきの魔物はなんだったの?」


『ああ、さっきのはマラカイコだな』


「マラカイコ……マラカイトとカイコが合体してたのね」


『そういえば、カノン。多分次のボスもマラカイコだと思うが?』


 ピキンッ! と思わず動きが止まってしまった。さっきの芋虫の時ですでに私の身体よりも大きかったのに、ボスになったらどうなるの!?


『カノン、目を瞑って入ればいいぞ』


「うぅ、ヴァイスが素敵すぎる! そうさせて貰うね、ありがとう」


 あまりのヴァイスの優しさに思わずすりすりと頬ずりしてしまう。もふもふでちょっと心が休まった。ボス部屋の扉を開けたら目を瞑って少し先に進む。

 ヴァイスが少し動いた気がする。少し待つとヴァイスから目を開けて良いと声が掛かった。


「えっ、もう終わったの?」


『おう、終わったぞ。ドロップ品を回収して先に行くぞ』


「う、うんっ!」


 目をそぉっと開けてみると、ドロップ品が散らばっていた。黒の魔石(中)、マラカイトと絹糸が沢山だった。やっぱりマラカイコだったんだね、目を瞑っていて本当に良かった。

 ささっと宝玉に手を置いて6階へ下りよう。今度は虫じゃないと良いな。6階に下りて先に進んで行くと、突然ヴァイスが声を掛けて来た。


『むっ、カノン。来るぞ!』


「えっ? きゃっ!」


 そうヴァイスが言った瞬間、周りからこちらに次々に何かが飛んできた。ヴァイスが全方向に次々に魔法を撃って撃退していっている。

 どんどん襲ってくる魚みたいな魔物がぽふんぽふん! とドロップ品に変わっていっている。少し進むとまた襲われる。私に辿り着く前にヴァイスが全部倒してくれるので、段々余裕が出来て来た。

 魔物を鑑定してみると、岩喰魚(いわな)と書いてある。地面の中から飛んでくるんだけど、地面の中を泳いでいるってこと? なんて恐ろしい。


 岩喰魚のドロップ品は黒の魔石(小)、腐った鉱石だそうだ。腐った鉱石を鑑定してみると、腐った鉱石とマンドラゴンを錬金すると何かの鉱石に出来るんだそうだ。


『どうした? 楽しそうだな』


「ふふっ、岩喰魚イワナから出た腐った鉱石をマンドラゴンと一緒に錬金すると何かの鉱石に錬金出来るんだって!」


『お、そうなのか! 使い道がないのかと思っていたぞ』


「アルちゃんのお湯を使えるから嬉しいなと思ってたんだ」


『そうだな。アルがいつも使ってほしそうだったから良かったな』


「うん、そうなんだよ~。アイテムボックスに仕舞うと、いつもしょんぼりするからどうしようかと思っていたんだよね」


 マンドラゴンのアルちゃんは、自分の浸かっているお湯がとても貴重だと分かっているのか、使うとすごく嬉しそうなのだ。でも、そんなに威力をあげるアクセサリーばかり作っても売れないので困っていたんだよね。

 腐った鉱石が沢山あるから、アルちゃんのお湯の使い道が他にも出来てとっても助かるのです。


 6~7階の次から次へと襲ってくる岩喰魚のおかげで大量に腐った鉱石が手に入った。錬金したらどんな鉱石になるのかとっても楽しみだ。


 8階へ下りて行くと、今度は特に魔物が見えない。だけど、色々な所にレモンが実っている。


「レモンがいっぱいだね~」


『カノン、鑑定しろよ?』


「あっ、そうだった!」


 レモンを鑑定してみると、シトロリアンという名前で近付くとあのレモンに食べられるんだそう。


「えっ、こわっ!!」


『あれは魔物だ。動かなくても鑑定すると良い』


「うん、そうする!」


 ついヴァイスが居てくれる安心感で気を抜いてしまうけれど、気を付けないとだね。ヴァイスがシトロリアンを倒してくれると、黄の魔石(小)、シトリン、カーネリアンをドロップした。


「シトロリアン……シトリンとカーネリアンか。なるほど~」


『カノン、感心してないで行くぞ』


「はーい!」


 10階へ下りてボス部屋に入ると、中に大きなレモンが生っていてその周りには普通サイズのレモンが沢山生っている。近付くと食べられるだなんて、あれは怖すぎるっ!


『カノン、目を瞑っていろ』


「はい!」


 目を瞑ると、ヴァイスが大きめの魔法を撃ったみたいだ。目を瞑っていても一瞬光ったのが分かる。少しして目を開けてみると、目の前にはドロップ品の山がある。さっきあったシトロリアンの痕跡が何も残っていなかった。蔦も全部消えている。


 アイテムボックスにすべて仕舞ったら、宝玉に手を置いて11階へ向かおう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る