第45話 省略スキルのレベルアップ!

 今日も朝ごはんを3人で美味しく食べてお片付けをしたら、ヴァイスと一緒に錬金部屋に向かう。

 昨日のアイスが好評だったかし、これからもっと暑くなるみたいだから冷たい物を作れる物が良いかな。


 冷たいジュースとか作るのにマドラーはどうかな? あっ、錬金マドラーも欲しいな。でも黒の魔石(大)がもうないからまた今度だね。

 飲み物を冷たくするマドラーには、冷やす為の青の魔石(中)と安全の為の白の魔石(中)で良いかな。


 アイテムボックスに入っていたガラスを錬金釜に入れて蓋をして魔力を流す。


 チーン!


 入れたガラスが多かったからかマドラーが5本出来た。これに青の魔石(中)と白の魔石(中)を貼り付けよう。


『カノン、その細長いガラスは何なのだ?』


「これはマドラーだよ。飲み物を混ぜると冷たくなるマドラーを作ろうと思って」


『ほう、それは良さそうだな』


「でしょでしょ。寒い時期になったら飲み物が冷えないマドラーも良さそうだね」


『そうだな。寒いとすぐに冷たくなるからな』


 まずはこれから暑くなるみたいだから、冷たくなるのを作ろう。最近は少しお話をしながらでも魔石を貼り付けられるようになったんだよね。

 魔石を貼り付け終わったら、錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を流す。


 チーン!


 蓋を開けて鑑定してみると、ひえひえマドラーと書いてあった。なぜそんな名前になってるのかちょっと不思議だけど、無事に出来たみたいだね。


「よし、試してみよう!」


『うむ。我はオレンジジュースが飲みたいぞ』


 オレンジを絞ってコップに入れる。まだ常温なので温い。ひえひえマドラーを入れて混ぜると、コップの外側が白くなってきた。


「わわっ、コップの外側まで冷たくなったよ。はい、ヴァイス。味見をお願いね」


『うむ、任せておけ!』


 ヴァイスが小さい手でコップを持ってごくごく飲んでいる。ちょっとかわいい。


『カノン、すごく冷たくなっていて旨いぞ!』


 私は温かい紅茶を入れてみよう。温かい紅茶にひえひえマドラーを入れてくるくる混ぜる。


『カノン、さすがに温かい紅茶は無理なのではないか?』


「実験はしてみないとだしね」


『まあ、そうだな』


 くるくる混ぜてみると、温かい紅茶がひえひえのアイスティーになっている。まさか熱い紅茶まですぐに冷たい飲み物に出来るだなんて、素敵すぎる。


『冷たくできたのか、凄いな』


「うん、びっくりだね。まさかお湯まで冷やせるだなんて思わなかったね」


 師匠に見せたら、すごく喜ばれた。やっぱり暑い時期には冷たい飲み物が欲しいもんね。他にもお店にあると便利そうだという事で、20本作っておく事になった。

 1本作ったから省略スキルを使ってしまえば簡単に作れるもんね!


 2個まで省略出来るから、魔石を貼り付けるのを省略しようかな。マドラー、青の魔石(中)、白の魔石(中)を錬金釜に入れる。


 ぽふん!


「えっ!?」


『なんでだっ!?』


 思わず錬金釜の中のマドラーを見つめてしまった。鑑定をしてみるとひえひえマドラーと書いてある。


『あっ、カノン! 錬金スキルが15になってるぞ!』


「えっ!? あっ、本当だっ!!」


 いつの間にか錬金術(省略)スキルがレベル15になっていた。やっぱり新しい物を色々作るとレベルが上がりやすい気がする。錬金お玉を作ったりアイスクリーマーを作ったりと色々作ったもんね。


「ヴァイス、大変!」


『どうしたっ!?』


「マドラーが一瞬で出来ちゃう! いくらでも作れちゃうよ!」


『そこかっ!?』


「だって、マドラーと魔石を入れるだけで一瞬で出来ちゃうんだよ?」


『確かにな……』


 3個省略出来るって凄いよね。この調子でどんどん作っちゃおう~!

 蓋を閉める間もなく出来上がってしまうって素敵すぎる。この調子でどんどんレベルがあがったらもっと楽しい事になるよね。

 これからもっと新しい物も色々と作っていこう。そして錬金術(省略)スキルのレベルをいっぱい上げていくんだ~!



 3個減らせるとしたら、ポーションはどうなる? 蒸留水、刻んだ癒し草を入れるのを省略して、今までは蒸留水だけで出来ていたよね。

 えっ、もしかして何も入れなくてポーション出来ちゃう? 出来ちゃうの!?


 思わず錬金釜をじーっと見つめてしまう。これはやる? やるべきだよね!?

 おもむろに錬金釜の蓋を閉める。


『カノン?』


 蓋の上の魔石に手を置き、魔力を流していく。


 チーン!


「んっ!」


『カノン、何を作ったのだ?』


 錬金釜の蓋を開けると、瓶に入ったポーションが10本。鑑定してみると回復ポーション(上級)と書いてある。


『……何も入れていなかったよな?』


「うん。今まで蒸留水だけで出来ていたから、ちょっとやってみちゃった!」


『相変わらずおかしいな』


「ちょっ、しみじみ言わないで!?」


『カノンがおかしすぎるからだろ!!』


「私がおかしな人みたいに言わないでー!」


『いや、あってるだろ』


「ちょっとー!」


 納得いかないけれど、出来る物は出来るんだよ? そして省略出来ていくのがとっても楽しいのです。次は魔力回復ポーションも作ってみる。それも何も入れずに蓋をして魔力を流すと魔力回復ポーション(上級)が出来上がる。


「ふふっ、やっぱり楽しいっ!」


『だろうな』


 次を作る前に、少し材料を買い足しておこうかな。ガラスとか少なくなってきているんだよね。師匠に声を掛けてからヴァイスを肩に乗せてお店を出る。


 ガラスが沢山買えたので、ケイティさんのパン屋さんへ寄ってお昼ごはんを買って帰ろう。お店に入ってみると、丸パンとサンドイッチが売られていた。サンドイッチには厚切りのベーコンが挟んであって、とっても美味しそうだ。


「こんにちは~」


「おや、カノン。いらっしゃい」


「わぁ、サンドイッチも美味しそうっ! サンドイッチとパンを3個ずつお願いします」


「カノンのお陰で大繁盛だよ、ありがとうね」


「いえいえ、オスカーさんの腕が良いからですよ~。私も美味しいパンが買えて嬉しいです!」


 美味しそうなパンとサンドイッチを買ってご機嫌でお店に帰る。


「師匠、ただいまです。ケイティさんの所でパンを買ってきましたよ~」


「おや、それは良いねぇ」


『旨そうだったぞ!』


 スープを作ろうと思うけれど、3個省略? 材料は玉ねぎ、人参、キャベツ、ソーセージ。それぞれ切る、煮る、味付けで完成かな?


「ん~……」


『どうした?』


「ん、どこを省略しようかなと」


『そこなのか』


「大事な所だよ? 味付けなかったら美味しくないでしょう?」


『そういう問題か!?』


「うんっ!」


 ヴァイスに大きなため息を吐かれたけれど、手順を考えるのは大事だと思うんだよ?

 煮ると味付けを省略して、後1つは目が染みるから玉ねぎを切るのを省略しようかな。お鍋にお水、玉ねぎ、刻んだ人参、キャベツ、ソーセージを入れる。


「よし、行ってみよう!」


 錬金お玉でくるくるっとすると、ぽふん! と熱々野菜スープの出来上がりっ!


「きゃー、出来たっ! 錬金術(省略)スキルさん最高っ! 大好きっ!」


 そんな事を言っていたら、ヴァイスに横目で見られてまた溜め息を吐かれてしまった。だって、こんな簡単にお料理が出来ちゃうだなんて素敵すぎるでしょっ!


 ケイティさんのパン屋さんのパンとスープでご飯にする。ベーコンサンドもベーコンの味が日本にいた時よりもお肉の味もしっかりしていてとても美味しい。

 スープも省略して作ったけれど、とても美味しく出来ている。やっぱり素敵です!


『旨いな』


「ほらね、錬金スキルさんは素敵でしょう?」


「むむ、確かに……」


 ちょっと悔しそうだけれど、一応認めてくれたみたいだ。師匠も美味しく食べてくれて良かった。お片付けをして午後はまたお店番に入る。今日も色々な人が来てくれてとっても楽しかった。

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