第44話 冷凍庫を作ろう

 今日もヴァイスと一緒に錬金部屋へ向かう。今日はアイスを入れる器のクッキーを作る。ワッフルも美味しいんだけど、型から作らなきゃいけなくなるから、クッキーで作ろうと思うんだよね。


 クッキー生地の材料をボウルに入れて、錬金棒でくるくる混ぜる。相変わらず、順番も関係なく全部一気に混ざっていくのが不思議だよね。

 生地が出来たら錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を流す。


 チーン!


 蓋を開けると、お皿に乗った10個のカップ型のクッキーが出来た。ヴァイスがしっぽをゆらゆらさせて、ソワソワしている。


『カノン、味見するぞ!』


「ふふっ、そうだね」


 カップ型クッキーを置くと、その中にアイスを入れる。アイスを入れた途端ヴァイスのしっぽが更に大きく揺れた。


『カノン、これは良いぞ!』


「うん、食べてからにしようか?」


『そ、そうだな』


 ヴァイスと一緒にアイスをクッキーと一緒に食べる。これは結構良いかもしれない。薄めのクッキーだから割りやすいし、アイスが乗っている部分はしっとりとして最後まで美味しく食べる事が出来た。


「これは最後まで美味しくて良い感じだね」


『そうだな。クッキーと一緒に食べても、どっちかだけ食べても旨くて良いぞ!』


 ふと見ると、ヴァイスの口の周りがべたべたになっている。そっとヴァイスの口を拭ってあげると、ちょっと恥ずかしそうにしているのが可愛い。


「アイスの味はこれだけで良いかな?」


『初めてだから1種類で良いと思うぞ』


「それもそうだね」


 今回は初めてだし、1種類にしておこう。もう1回分クッキーボウルを作っておこう。午後にお店に来てくれた人に味見して貰おうかな。

 アイスとクッキーボウルを省略スキルで作ってアイテムボックスに仕舞っておこう。


 次は、屋台のテーブルの上に置く冷凍庫が欲しいよね。錬金釜にガラスを入れて、ガラスの容器を作ろう。上の蓋をスライドさせられるようにしたら良いかな。

 日本に良くある、上がスライド出来る冷凍庫であんまり深さがないテーブルにおけるサイズで作ろう。


 ガラスの容器が出来たら内側に青の魔石(大)、外側に白の魔石(中)を貼り付けよう。魔石を丁寧に貼り付けたら、錬金釜に入れて蓋を閉めたら魔力を流す。


 チーン!


 錬金釜の蓋を開けて鑑定してみると、冷凍庫ときちんと書かれているから無事に出来たみたいだ。スライドさせてアイスクリーマーのボウルが二つ置けるようになっている。


 ぺしぺしっ!


「きゅっきゅー!!」


 マンドラゴンのアルちゃんに呼ばれて振り返ると、アルちゃんが寒そうにしている。冷凍庫の冷気でお湯が冷めて来ちゃったみたいだ。


「わわっ、アルちゃん。ごめんね! すぐにお湯を足すね」


「きゅっ!」


「ん? お湯をくれるの?」


「きゅきゅっ!」


「ふふっ、ありがとうね」


 お湯を少し貰ってから急いでお湯を足してあげると、ほっこりとまた温泉気分で気持ちよさそうになった。


「栄養剤も足しておくね」


「きゅきゅ~」


 小躍りしそうなほど喜んでくれて、とっても可愛い。アルちゃんから貰ったお湯はアイテムボックスに仕舞っておいた。


 今日は冷凍庫をお店に置いて屋台でやるように練習もしてみよう。後はキッチンへ行ってアイスクリームを作ったら良いかな。


 ヴァイスと一緒にキッチンへ行くと、アイスの材料をボウルに入れる。錬金棒を入れたらぽふん! あとアイスが出来た。

 アイスもアイテムボックスに仕舞っておいて、お昼ごはんを作ろう。今日のお昼ごはんはオムライスとスープを作ろうかな。


 材料を準備してふわとろオムライスを作っていると、お店にも良い香りがしたのか師匠がお店を一旦閉めてキッチンに来た。


「カノン、なんだか良い香りだねぇ。お腹が空いちゃってお店閉めてきたさね」


「ふふっ、ちょうど出来たので食べちゃいましょうか」


『うむ、食べるぞ! さっきから旨そうな香りでお腹が空いているのだ!』


 師匠もヴァイスも口の周りをオレンジにしながら食べている。相変わらずこの2人似てるんだよね。でも、とっても美味しそうに食べてくれるから、次は何を作ってあげようかと考えるのがとっても楽しい。


 ご飯のお片付けまで終わると、お店に冷凍庫を置いてお客様にアイスを配って行こう。


「こんにちは!」


「あっ、エルナ。いらっしゃい、良い所に来た!」


「ん? どうしたの?」


「今度の建国祭でお店の前に屋台を出そうと思っててね、それの味見をお願いしたいんだ~」


「味見? もちろん喜んでっ!」


 冷凍庫の蓋をスライドさせて、クッキーボウルにアイスを入れる。アイスをくるんと丸く取れるアイスディッシャーが、欲しいね。

 スプーンを付けてエルナに渡す。


「クッキーの器だから、全部食べられるからね」


「えっ、これ食べられるんだ! んん、冷たっ。えっ、溶けたよ!?」


「アイスクリームって言って氷みたいに凍らせているから、口の中でさらっと溶けちゃうんだよー」


「冷たいからいくらでも食べられそうだよ! このクッキーと一緒に食べるのも美味しいし、アイスクリームだけ食べても美味しくて、これは良いよ!」


「良かった~」


「建国祭の日も絶対に食べるよ!」


 エルナが帰ってから他のお客様達にも試食をして貰ったら、みんな冷たくて溶けるのにとても驚いていた。アイスもシャーベットも今までなかったみたいなので、建国祭の日がとっても楽しみになったね。

 最近少し暑くなってきたからアイスクリーマーも売れると良いな~。


「カノン、アイスクリーマーの在庫をもう少し作っておいておくれ」


「はい。今5個ありますけど、まだいりますか?」


「今日の試食の感じを見たら売れるだろうねぇ」


「確かに氷も何もなしで作れますし、便利ですよね」


「水を入れても良いんだろ?」


「はい」


「だったら売れるさね」


 なんでかと思ったら、普通に氷を手に入れるだけでも大変なんだそう。氷魔法を使える人は出せるけれど、それもそんなに長くは持たないみたい。

 確かにアイス以外にもシャーベット、冷たいお水にも出来ると考えたら色々と使い道がありそうだ。


 材料もなしにアイスクリーマーの本体が作れるから、いくつでも作れるよね。とりあえず20個を目安に作ろうかな。残ったら仕舞っておけば良いしね~。

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