第43話 アイスクリーマーを作ろう
今日も錬金部屋へ行くと、マンドラゴンのアルちゃんが元気に挨拶してくれた。
「きゅきゅっ!」
「アルちゃん、おはよう」
『アル、おはよう』
アルちゃんは嬉しそうに手をペシペシしている。やっぱり見ていると日に日に可愛く思えてくるね。
今日はアイスクリーマーを作ろうと思うんだよね。本格的に暑くなる前にお店に出せると良いよね。アイスクリーマーを作るのに必要なのは、凍らせるから青の魔石、それと混ぜるから緑の魔石、それと安全のための白の魔石かな。これで出来る気がするよね。
ボウルとガラスでフードプロセッサーと同じ蓋つきのボウルを作ろうと思うけれど、材料を減らせるかな。何も入れずに蓋を閉めて魔力を流す。
チーン!
蓋を開けてみると、蓋つきのボウルが出来ている。
「お~、材料いらず!」
『……相変わらずおかしいな』
「しみじみ言わないで~!」
蓋つきのボウルが出来たので中に青の魔石(中)と緑の魔石(中)、外側に白の魔石(中)を貼り付けよう。魔石の大サイズを使っちゃうと値段が上がってしまうので、なるべくなら中サイズまでで作りたいよね。
貼り付けが終わったら、錬金釜に入れて蓋をして魔力を流す。30分くらい魔力を流していると、チーン! とレンジの音がして出来上がりを知らせてくれる。
蓋を開けて鑑定をしてみると、アイスクリーマーと書いてある。一回できちんと出来たのは嬉しいな。
「よし、出来たよ!」
『やったな』
「ということで、作ってみよう~!」
『よし!』
アイスを作るので、とても嬉しそうなヴァイス。また食べ過ぎないように気を付けないとだね。
試作で作ったアイスクリーマーに材料を入れて蓋をしたら、ボウルの横についている魔石に手を重ねて魔力を流してスイッチを入れる。ボウルの中がくるくる回っている。
「ふふっ、ヴァイス。見ていると錬金釜と同じく目を回すよ?」
『うっ。だ、だが、我はこれを見届けなくてはいかんのだ!』
そんな使命感を持たなくて良いと思うよ? アイスを作っているだけなんだし。
「そ、そうなんだ」
『うむ、そうなのだ!』
それだけアイスが気に入ったのね。食べ過ぎてお腹を壊さないように本当に気を付けよう。その間もボウルの中はぐるぐる回っていて、中のアイスがもったりしてきている。
だけどボウルの外側を触っていても、冷たくなっていないのは白の魔石のお陰なのだろう。
中を確認しながら作っていると、少しトロリとしたソフトクリームくらいの硬さで一度スイッチを切って味見をしてみる。
「ん~、美味しいっ」
『トロリと蕩けて旨いぞ!』
「ふふっ、このトロっとした状態のアイスも好きなんだよね~』
またスイッチを入れてもう少し硬めにも作ってみる。結局柔らかめから硬めまでどんなのでも作れた。魔道具凄い!
ついでにオレンジを使ってシャーベットも作ってみるとジェラートみたいに柔らかく美味しそうに出来上がった。これ以上作ったら、ヴァイスのお腹が大変だ。そろそろ他の物を作ろう。
『カノン、味見だ!』
「ヴァイス、お腹は大丈夫? 冷たいの食べすぎるとお腹壊すよ?」
『我はドラゴンだぞ。大丈夫だ!』
(本当かなぁ……いつもお腹ぽっこりさせてるんだけど?)
『カノン、これはさっぱりとしていて旨いぞ!』
「うん、さっぱりと美味しいね」
アイスを作るのを止めておこう。というか食べ物はちょっと控えておこうかな。
「アイスをどうやって売ったら良いかなぁ?」
『ふむ、それは悩む所だな』
クリーン魔法があるから食器でも良いけれど、何か面白いのにしたいなぁ。あっ、日本でもあった器も食べられるのにしようかな。
あっ、でも今作っちゃダメ。絶対ダメ。ヴァイスにこれ以上アイスを食べさせたらいけないと思う。
「ヴァイス、器も食べられるのはどうかなぁ?」
『何っ!? 食器が食べられるのか!?』
「ふふっ、違う違う。クッキーとかワッフルをボウルみたいに焼いて、それにアイスを入れると一緒に食べられるでしょう?」
『カノン、試作だっ!』
「また明日にしようね?」
『なんでだっ!?』
ガーン! とショックを受けてしっぽも身体もしょんぼりしたヴァイスだけど、もう味見で結構な量のアイスを食べているのだ。絶対にアイスと一緒に味見するぞ! って言いだすはずだもんね。
「もうアイスを沢山食べているから、また明日味見をお願いしても良いかな?」
『明日は絶対だぞ!』
「うんっ。一緒に食べてみて感想を聞かせてね!」
『任せておけ』
お昼はお腹に優しい温かい物を作ろう。スープにして、じゃがいものニョッキを入れようかな。ニョッキを作るのにじゃがいもを茹でるのも簡単なんだよね。お水に洗ったじゃがいもをぽんと入れて、火に掛けながら錬金棒でぐるぐる混ぜていると、ぽん! と茹で上がる。
ボウルに茹でたじゃがいもを入れて錬金棒でくるくるっと混ぜると、皮が剥かれてマッシュポテトの出来上がり。
そこに小麦粉を入れてまたくるくるっと混ぜると、ニョッキの生地の完成っ!
ここまで5分も掛からないのが素晴らしい。錬金スキルさん素敵っ、大好きです!
錬金釜に入れて魔力を込めると、茹で上がったニョッキが出来るので、スープに入れたら完成っ!
『カノン、このニョッキ旨いぞ!』
「美味しいよね~。本当はこれにソースを絡めるんだけど、こういう食べ方も好きなんだよね」
「カノンの作る料理はどれも目新しいのに美味しいねぇ」
「ふふっ、良かったです」
午後は師匠と交代してお店番に入る。
これから作る物を考えよう。アイスを入れるクッキーかワッフルの器。屋台のテーブルは借りられるみたいだから、アイスを入れておく冷凍庫が欲しいな。それと器を入れておくものも欲しいよね。
そんなことを考えていたら、くま獣人のハンスさんが来た。
「ん」
「ハンスさん、いらっしゃいませ」
「おや、ハンスじゃないかい。いらっしゃい」
相変わらず、どうして師匠はハンスさんの言いたい事が分かるんだろう。でも、視線と手の動きで大体分かるのは師匠を見ていたら分かった。後は耳? 耳の動く速さで感情が分かりやすいというのも最近気が付いた事だ。
ハンスさんは回復系のチョコとかジュース類を色々買って行ってくれたみたいだ。やっぱり甘い物が好きみたいだね。生チョコを試食したときのお耳ピコン! は可愛かった。そして、その時は表情も少し変わって可愛かった。
「こんにちは。カノン、いるかい」
「アルマさん、いらっしゃいませ」
「カノン、あのフードプロセッサーは良いね! 今じゃ宿の人気メニューだよ、ありがとうね」
「喜んで貰えて良かったです」
「今日はお菓子が欲しいんだけど、何かあるかい?」
「だったら、クッキーかパウンドケーキがありますよ~」
「パウンドケーキ?」
パウンドケーキの説明をして、試食を出したら凄く気に入ってくれた。やっぱりジャム入りがしっとりと美味しいみたいだ。プレーンのはアイスとかクリームと一緒に食べたくなるよね。
「カノンの作るおやつはどれも美味しいんだよねぇ。他にも出来たら教えておくれね」
「はい、ありがとうございます」
その日の夜、フードプロセッサーを作る時に出来た魔石で動かす泡だて器。これに卵白とお砂糖を入れてメレンゲを作る。これを本当だったらオーブンの低温で焼くんだけど、今は錬金釜があるのでそれで作ろう。
錬金釜にメレンゲをボウルごと入れて蓋をして魔力を流す。
チーン!
『カノン、何を作ったのだ?』
「ふふっ、メレンゲを焼いて作ったメレンゲクッキーだよ。甘くってほろりと溶けるクッキーなんだよ」
味見にヴァイスに1個持たせてあげると、早速食べだした。私も味見しよう。
『なんだこれは!? カノン、なくなったぞ?』
「ふふっ。しゅるって溶けちゃうんだよね。だけどこれが美味しいんだよ~」
『うむ! 我はこれも好きだぞ!』
結構どれも好きだと言っているけれど、ヴァイスが苦手な物ってあるんだろうか?
今まで調理が出来なかったから、生の肉はもう食べたくないって言ってる。確かに私と会う前はそのまま食べるしかなかっただろうしね。
私がいなくなったらまたそうなるのかと思ったら切なくなった。やっぱり一緒に居られる間に美味しい物を沢山食べさせてあげよう。
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