第40話 マンドラゴン?
今日もヴァイスと一緒に錬金部屋に向かう。今日は昨日植えたマンドラゴンがどうなっているのか、楽しみだったんだよね。
「昨日植えたマンドラゴンは育ったかなぁ」
『さすがにまだ何もなってないだろう』
部屋に置いている水耕栽培のポットを見てみると、もうマンドラゴンが育っている。しかも、温泉気分でとても気持ちよさそうだ。
マンドラゴンは根がドラゴンの形をしていて、頭の上には茎と葉っぱがついている。そして、手足としっぽが動いている。
「きゅきゅっ」
「声も出るんだね~。どうしよう、ヴァイス。これは、可哀そうで使えない」
『カノンならばそうであろうな』
さすがにドラゴンみたいな根っこで、きゅって可愛い声が出ちゃうのは可哀そうで、収穫して使うなんて出来ないよ。
威力があがる装備をクラウスさんに作ってあげたいけれど、これはどうしたら良いかなぁ。
『気持ちよさそうだな』
「うん。気持ちよさそうだね~」
「きゅ~」
そう言うと、マンドラゴンが手をぺしぺし動かしている。どうしたんだろう?
「どうしたの?」
ついそう聞いてみると、お湯をぺしぺししている。
「お湯?」
「きゅっきゅっ!」
声と共に手のぺしぺしが早くなった。お湯がどうしたんだろう?
「可愛い……」
『可愛いのか!?』
「えっ、だってドラゴンの形だし、きゅっきゅって鳴き声も可愛いよ?」
マンドラゴンがちょっと照れてもじもじしていて、さらに可愛い。やっぱりこれは使えないよ!?
「ねぇ、ヴァイス。マンドラゴンってどうやって使われるの?」
『ああ、粉にしたりお湯で煮出したりだな』
「粉っ!? 無理だよ! あれ、お湯……煮出す?」
じーっとマンドラゴンを見つめると、お湯を鑑定してみる。マンドラゴンのエキスが出たお湯。錬金素材として使えますと書いてある。
「ヴァイス、このお湯で錬金素材になるって!」
『おお、そいつはいいな』
「えーっと、まずは名前を付けてあげようかな。マンドラゴンだから何が良いかなぁ」
『何でもいいだろう』
ピシャッ!
『うわっ、何をするっ!』
マンドラゴンがペシペシと怒ったように手を叩いてヴァイスにお湯を掛けている。うん、やっぱり意思があるんだね。
「マンドラゴンだから~アルフォンス!」
『なんでだよっ!!』
「えへへ。ヴァイスが突っ込むかと思って……いてっ」
ヴァイスのしっぽ攻撃にあったけれど、思った通りの反応でちょっと楽しかった。
「ん~、マンドラゴンのまーちゃんはどう?」
ぺしぺしっ!
「きゅーきゅっ!」
首を振っている。嫌なのかな?
『カノン、マンドラゴンを鑑定してみろ』
「ん? うん、分かった」
マンドラゴンを鑑定してみると、名前にアルフォンスと書いてある。気に入ったんだね。
「あっ、アルフォンスになってる! えーと、アルフォンスのアルちゃんだね!」
「きゅっ!」
ご機嫌になったみたいだ。アルちゃんなら良いみたいだから、今度からアルちゃんと呼ぼう。
「アルちゃん。お願いがあるんだけど、アルちゃんが浸かっているお湯を少し貰っても良い?」
「きゅっ!」
少しお湯を貰うと、アルちゃんがお湯の表面をぺしぺしと叩いている。
「お湯を足したらいい?」
「きゅっ!」
お湯と植物栄養剤も少し入れてあげよう。入れてあげるとご機嫌になった。
「きゅ~」
「ふふっ、気持ち良さそうだね~」
アルちゃんに協力して貰ったので、魔法の威力があがるアクセサリーを作ろう。
きちんと発動できるようにリングタイプにしておこうかな。クラウスさんは主に水、氷属性の魔法を使うらしいので、青の魔石(大)をリングに貼り付ける。
魔石を貼り付けたリングをアルちゃんのお湯と一緒に錬金釜に入れて蓋を閉める。これは大分魔力を使いそうなので椅子に座って、準備をしてから魔力を流していく。
チーン!
1時間くらい魔力を流したら完成した。蓋を開けて鑑定してみると、水、氷魔法の威力をあげるリングと出ている。
「おぉ、出来たよっ!」
『良かったな、カノン』
「うんっ。アルちゃんもありがとうね!」
「きゅ~」
師匠にも見て貰って来よう。それと合わせてアルちゃんの説明もしてこないとだね。びっくりして何かがあってもいけないからね。
何と言ってもヴァイスでさえ気絶するマンドラゴンだからね。
「カノン、これが本当にマンドラゴンかい?」
「はい! マンドラゴンのアルちゃんです」
「きゅっ!」
「……カノンの規格外もここまで来るとはねぇ」
『カタリーナ、それは今更だ』
「ええぇぇっ!? 師匠もヴァイスもどうしてっ!?」
「分からない辺りがまた、ねぇ」
『そうだな』
「えぇぇ!!」
変な認識を師匠とヴァイスにされているみたいだけど、私のせいではないと思うんだけど?
だって、アルちゃんの種はグリーンドラゴンから出た物だし、おかしくないはず!
気を取り直して、フードプロセッサーを宿屋にお届けして来よう。ヴァイスを肩に乗せて、師匠とアルちゃんに行ってきますの挨拶をしたらお店を出て宿屋へ向かう。
「アルマさん、こんにちは~」
「おや、カノンじゃないか。どうしたんだい?」
「お料理に使える魔道具が出来たので、持ってきました」
「えっ、もう出来たのかいっ!?」
宿屋の食堂へ移動してフードプロセッサーの説明をして、ハンバーグの作り方のレシピも渡して説明をした。アルマさんの旦那さんのカールさんは、今から作ってみると急いでお肉を取りに行った。
「ふふっ、あの人の楽しそうな顔ったら」
「新しいレシピは楽しいですよね~」
「カノンも楽しそうだもんねぇ」
「ふふっ、毎日楽しいですよ」
カールさんが帰ってくると、レシピに沿ってハンバーグを作っていく。大きなお肉の塊でもミンチに出来るから、カールさんも楽しそうだ。
蓋もガラスにしたから、細かくなっている過程が見えるから、アルマさんも楽しそうだ。2人が肩を寄せ合って見ている光景は、なんだかほっこりしてしまうね。
トマトソースのハンバーグを作ると、アルマさんもカールさんにも大好評だった。ついでにヴァイスも貰ってご満悦だ。
「カノン、ありがとうね!」
「カノンさん、ありがとうっ! これはみんな喜ぶぞ!」
「喜んで貰えて良かったです」
カールさんはキッチンへフードプロセッサーをうきうきと運んで行った。お支払いはまたお店の方にお願いしてから宿屋を出る。
『カノン、喜んでくれて良かったな』
「うんっ! 自分が作った物を喜んで貰えるの、本当に嬉しいよ」
ご機嫌でお店に帰って師匠に報告をした。クラウスさんのリングも出来ているから、今度来た時に渡してみよう。
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