第37話 フードプロセッサーの試作

 今日も錬金部屋にヴァイスと一緒に向かう。今日も省略スキルでささっとポーションを作ると、錬金お玉に取り掛かろう。

 錬金お玉に残り2種類の白と黒の魔石(大)を貼り付けよう。椅子に座ってゆっくりと魔石をお玉に貼り付けていく。


「よし、出来たーっ!」


『もう出来たのか。早くなったな』


「えへへ、ありがとう。後は錬金釜に入れたら完成だけど、明日にしておくね」


『そうだな』


 今日は他に何を作ろうかな。ヴァイスに新しいお菓子を作ってあげようかなぁ。ふわふわの実を使ってマドレーヌを作ろう。


 ボウルに小麦粉、砂糖、バター、卵、ふわふわの実を入れて錬金棒で混ぜる。生地が出来たら錬金釜に入れて蓋を閉める。


『カノン、今度は何を作っているのだ?』


「今日のおやつだよ~。いつものクッキーと違ってちょっとふわっとしてるマドレーヌを作るよ」


『おやつ! 楽しみにしてるぞ!』


 しっぽをゆらゆら揺らして錬金釜を覗き込むヴァイス。蓋の魔石に魔力を込めるとチーン! と出来上がりを知らせてくれる。


 錬金釜の蓋を開けてみると、こんがりとした焼き色が美味しそうなマドレーヌが出来上がっている。ヴァイスにマドレーヌをあげてから、お茶を入れよう。


『カノン、我はこれ好きだぞ!』


「ふふっ、今お茶も入れるね」


『うむ。確かに紅茶に合いそうだな』


 美味しかったみたいでぱくぱくと食べ進めているヴァイスに、もう1つマドレーヌのお代わりと紅茶を出してあげて、私も一緒に食べる。


「しっとりふわっとしていて美味しいね!」


『うむ!』


 ヴァイスとのんびりお茶をしていたら、お店の方から呼ばれた。お店に行ってみると、ヘルミーナがいた。


「ヘルミーナ、いらっしゃい。おかえりなさい」


「カノンっ! この前はありがとうね。おかげで今回のダンジョン探索は大成功だったよ!」


「わぁ、そうだったんだ。良かったね~」


「カノン、まだ携帯食ある?」


「あるけど、他にも良いのがあるよ~」


 ヘルミーナにマドレーヌとお茶を出してあげて、食べながらお話をする。おにぎりの実の種とか味付きの回復ポーションと魔力回復ポーションの話をしたら、とてもとても驚いていた。


「なんで、私がダンジョンへ行っている数日の間にそんなに増えてるのよ!?」


「えへへ。なんか他にもご飯で困っていた人がいたから、ついつい色々作っちゃった!」


「どれも興味がありすぎて何を買うか困っちゃうよー!?」


 うんうん唸って、結局全部を少しずつ買って帰って行った。でも、とても喜んでくれていたので嬉しいな。

 やっぱりポーションだけだとお腹がきつい時もあるし、間に合わなくなる時もあるらしい。ヘルミーナだけでなく、お店の他のお客様からも、一口でぱくりと食べられるチョコとかキャンディーは好評だった。


「ふふっ、喜んで貰えるの嬉しいよね」


『そうだな。ヘルミーナも嬉しそうだったな』


「うんっ」



 時間もちょうど良さそうなので、そろそろお昼ごはんを作っちゃおう。今日のお昼ごはんは天丼にしよう!

 贅沢にエビとカニの天ぷらも入れちゃうんだ~。後ホタテとかの貝類もあるから、お野菜と合わせてかき揚げも作ろう。

 お醤油も増やせるようになったし、タレも作って天丼の完成!


「ん~、美味しそう!」


『カノン。なんだか旨そうだが今日は何の丼なんだ?』


「今日は天ぷらを乗せた天丼だよ~。海ダンジョンで取って来たエビとカニも入ってるんだよ!」


『それは旨そうだな』


 今日は師匠も一緒にお昼ごはんを食べられたので、熱々のうちに美味しく食べちゃおう。


「ん~、エビもカニも甘みがあった美味しいね~」


『そうだな。我もこれ好きだぞ!』


「これも美味しいねぇ。さくっとして中はふわっとしていて、私も好きだね」


 みんなで美味しく食べたら、午後はお店番をする。錬金術の本を読んだり、お店の品物を鑑定しながら過ごしていると、宿屋の女将さんのアルマさんが来た。。


「こんにちは」


「アルマさん、いらっしゃいませ」


「おや、アルマ。久しぶりだねぇ」


「そうなんだよ。最近お客が増えて忙しくてね~」


「それは何よりだねぇ」


「それが旦那の料理が大変になって、何か良い道具はないかい?」


「カノン、何か思い浮かばないかい?」


 宿屋のご飯で使うのに多いのは、やっぱりお肉と玉ねぎが多いらしい。フードプロセッサーみたいなの作れないかな?


「食材を細かく刻んでくれる道具ってどうですか?」


「おや、それは良さそうだよ。カノン、お願いしても良いかい?」


「はい、作ってみますね」


「カノン、頼んだよ」


「はい、師匠」


 フードプロセッサーはどのくらいの大きさが良いかな。宿屋で使うなら大き目のサイズの方が使いやすいかな。ついでに、塊のお肉もミンチに出来るくらいパワーがあると便利かもしれない。

 私も欲しいから、まずは私用のを作って試してみよう。


 やっぱりボウルに蓋を付けた感じが使いやすいかな。中に緑の魔石を付けたら風の刃でミンチに出来るかな。外側には安全の為に白の魔石で大丈夫かな?


 お夕飯の後に試しに作ってみよう。お肉もミンチ出来るようにするなら、威力が欲しいから緑の魔石は(大)かな。外側の白の魔石は中サイズで大丈夫だと思うんだよね。



 お夕飯の後、早速試作に取り掛かる。

 錬金釜にミスリルを入れて蓋を閉めて魔力を流して蓋付きのボウルを作る。錬金釜からボウルを取り出して、内側に緑の魔石(大)外側に白の魔石(中)を貼り付けよう。


「よし、張り付け終わったから錬金釜に入れてみようか」


『昼間言ってたやつか?』


「うん、そうだよ。フードプロセッサーを作ってるんだよ。これが作れれば、ハンバーグが作れるよ」


『はんばぁぐ?』


「うん、ハンバーグだよ。ごはんのおかずにもなるし、パンに挟んでも美味しいんだよ!」


『旨いのか! よし、カノン。我の魔力を使っていいから早く作るぞ!』


「ふふっ、そうだね」


 錬金釜の蓋を閉めて魔力を流していく。魔石の大サイズを使っているから、少し時間が掛かるね。


 チーン!


 錬金釜の蓋を開けて鑑定してみると、泡だて器と書いてある。よく鑑定をしてみると、風の力で泡立てが出来てしまうらしい。


「うわぁ、違うものが出来た」


『違うもの?』


「うん、泡だて器が出来ちゃった。風の力で泡立てられるって」


『なるほどな。他にも魔石が必要なのか?』


「そうかもしれない。風と他に刻むとしたら何の魔石だろう。私が居たところでは、金属の刃を回して刻んでいたんだけど、出来たら魔石でやりたいよね」


『ふむ。なら黒の魔石でも足してみるのはどうだ?』


「よし、やってみよう!」


 泡だて器はそれはそれで便利そうなので、アイテムボックスに仕舞っておいた。またミスリルを取り出して錬金して蓋つきボウルを作る。


 内側に黒の魔石(中)、緑の魔石(大)を、外側に白の魔石(中)を貼り付ける。

 魔力回復クッキーを食べて魔力を回復させてから、錬金してみよう! いつもだったら明日にするんだけど、やっぱり成功しないのはちょっと悔しいので頑張っちゃう!


 錬金釜に入れて蓋をして魔力を流していく。また少しヴァイスの魔力を借りて錬金する。


 チーン!


 蓋を開けて鑑定してみると、フードプロセッサーと書いてある。


「やった! 出来たみたいだよ」


『良かったな』


「よし、ちょっとキッチンへ行って使ってみようか」


『今から料理するのか?』


「ミンチにしてみるだけでお料理はしないよ~」


『それは残念だ』


 さっきあれだけお夕飯のお肉を食べたのに、まだ食べるつもりだったのだろうか。さすがヴァイス、食いしん坊代表だね!


「いたっ」


『また何か失礼な事を考えているだろう!』


 しっぽで私を叩いたヴァイスにジト目で睨まれてしまった。どうして分かるんだろうなぁ。


『分かるからなっ!』


「えへへ」


 笑ってごまかしてキッチンへ向かう。キッチンでフードプロセッサーにクリーン魔法を掛けてから、ぶつ切りにしたお肉を入れて蓋をする。蓋の上についている魔石に触れると、手に少し振動が伝わってきた。


「上がガラスじゃないから、どれくらい細かくなっているか見えないね」


『そういえばそうだな』


 材料にガラスを入れてからボウルを作れば蓋をガラスに出来るかな。次に試す時にやってみよう。少ししてから蓋を開けてみると、ミンチ状のお肉が出来ていた。

 明日はこれを使ってハンバーグを作ってみようかな。


「うん、ちゃんとミンチ状になってるね」


『ふむ。これで成功なのか?』


「多分。明日、これでハンバーグを作ってみるね」


『うむ! 楽しみにしてるぞ!』


 明日は朝にハンバーグを作って、お昼にハンバーガーにして食べよう!

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