第29話 携帯食を作ろう
次の日、錬金部屋でポーションを作っていると、ヘルミーナが呼んでいると師匠が呼びにきた。
急いでお店に行ってみると、ヘルミーナが勢い良く飛び付いてきた。
「カノンっ、助けてっ!」
「えっ、ヘルミーナどうしたの!?」
「3日後から泊りがけでダンジョンに行くんだけど、あの携帯食が辛いのー!」
何かと思ったら、携帯食が美味しくないから改良して欲しいとの事だった。最近美味しいクッキーとかを食べているから、携帯食がさらに辛くなったらしい。
それはなんだかとても申し訳なく感じるね。
「携帯食かぁ。何か考えてみるね」
「うんっ、出来たら3日後に間に合うようにお願いねっ!!」
「ふふっ、分かったよ」
ホッとした顔をしてヘルミーナは帰って行った。錬金部屋にって、携帯食を考えてみる。
今の冒険者ギルドとかで売られている携帯食は、栄養が取れれば良いっていう感じで、味が美味しくないんだよね。
しかも、パサパサしていて口の中の水分をすごく持って行かれるし。私も味見で食べたけれど、あれはもう二度と食べたくないもんね。
ヘルミーナの辛い気持ちも良く分かる。私は時間停止のアイテムボックスがあるから良いけれど、何日も帰れない所とかだと携帯食に頼るしかなくなるから大変だと思う。
『確かにあの携帯食はまずかったな』
「そうだね。私もあれは辛いわ」
私が味見している時に、ヴァイスも味見をしたら、その後しっぽがずっとしょんぼりしてたんだよね。よっぽど美味しくなかったんだろう。
冒険者だから、動くためのカロリーは必要だろう。そう考えるとやっぱりドライフルーツは入れたいね。日本にいた時の栄養補助食品みたいな感じで良いと思うんだよね。
甘いのは、ドライフルーツの味とチョコ味、しょっぱいのはチーズ味で良いかな。
ドライフルーツのはアーモンドとクルミも入れようかな。フルーツはリンゴ、ブドウ、マンゴーで良いかな。
フルーツを切ったら錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を込める。
チーン!
蓋を開けると、ドライフルーツが出来ている。ボウルに小麦粉、オイル、砂糖、塩、ドライフルーツ、刻んだアーモンドとクルミを入れて錬金棒で混ぜてから錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を込める。
チーン!
錬金釜の蓋を開けると、見覚えのある栄養食品のクッキーバーみたいなのが出来ている。鑑定してみると、カロリーも保存もOKだった。
『カノン、我が味見してやるぞ!』
携帯食を作っているというのに、わくわくしてしっぽをゆらゆらと揺らしている。あの携帯食を食べているのに、よくしっぽを揺らせるね。
「ヴァイス、私が作っているの携帯食だけどいいの?」
『カノンが作る物に間違いはないから、大丈夫だ!』
「えへへ、そっか」
ヴァイスにドライフルーツの携帯食を1個渡してあげる。私も味見をしてみると、バターを使っていないけれど、美味しく出来ている。
『カノン、これが携帯食なのか!? 旨いぞっ!!』
ドライフルーツの甘みもあるし、ナッツの噛み応えもあってとても美味しい。
次はチョコ味だね。チョコにもアーモンドとクルミを入れよう。小麦粉、オイル、砂糖、塩、チョコ、刻んだアーモンドとクルミを入れて、錬金棒で混ぜたら錬金釜に入れて魔力を込める。
チーン!
錬金釜を開けてチョコ味も味見をしてみる。こっちもチョコとナッツのカリっとした歯ごたえがなんとも美味しく出来ている。
『カノン、これも旨いぞっ!』
「次はしょっぱいのを作るよ。甘いのだけだと飽きちゃうだろうからね」
小麦粉、オイル、砂糖、塩、チーズを入れて錬金棒で混ぜて錬金釜に入れて魔力を込める。
チーン!
「ん、チーズ味も美味しいっ!」
『うむ。我もこのチーズ味も好きだぞ!』
3種類なんとか出来て良かった。これで携帯食問題も解消出来るかな。ヘルミーナのパーティメンバーの分もあるだろうから、少し多めに作っておこう。
「よし、後2回分ずつ作っておこうかな」
『そうだな。我もまた食べたいぞ!』
3回分ずつ作っておこう。材料を準備して錬金棒で混ぜていると、ぽんぽんっと携帯食が出来ていく。
そういえば、また錬金棒で混ぜていたな。
『カノン、またか!?』
「え、えへっ?」
その後も錬金棒で混ぜているとぽんぽんと出来上がっていく。省略スキルさん、面白すぎます!
「でも、これで出来ちゃうの楽しいね! 錬金釜に入れるんだったら、混ぜないで材料を入れるだけでも作れそうだね」
『確かにな』
試しに材料をボウルに入れて、錬金棒で混ぜずに錬金釜に入れて、蓋を閉めたら魔力を込める。
チーン!
蓋を開けると携帯食が出来ている。でも簡単で面白いのは錬金棒で混ぜる方かな。
お昼ごはんを食べて、お片付けを済ませたら師匠とお店番を交代する。アイテムボックスの中身を考えながら、次に作る物を考える。
「おう、カノン来たぞ!」
「ゲルトさん、いらっしゃいませ!」
「回復ポーションを5本と回復クッキーを頼む」
「はい、準備しますね~」
携帯食を3回分ずつ作ったから、少し持って行って貰おうかな。
「ゲルトさん。携帯食を作ってみたのですが、味見をお願いしても良いですか?」
「携帯食? あれ、旨くねぇんだよなぁ」
「そうですよね。私も味見してみたんですけど、きつかったですね」
「だよな! でも何日も泊まりだと、どうしてもそれになるんだよな」
そういうとゲルトさんは、包んである携帯食を1つ開けて口に入れた。
「んんっ!? うまっ!! カノン、これは携帯食なのかっ!?」
ゲルトさんも携帯食で苦労していたみたいで、携帯食を喜んで買っていってくれた。他にも手軽に美味しく食べられる物があったら助かると言っていたので、また何か考えてみようかな。
「カノン、後でクッキーを作っておいて貰えるかい?」
「師匠、分かりました。夜に作っておきますね~」
「カノンの作るのはどれも美味しいから人気があるんだよ」
「えっ、そうなんですか!?」
「ああ、買えなかった者がいつもしょんぼりしてるさね」
私の作った物が買えなくてしょんぼりしてる人がいるだなんて、とても嬉しい事を聞いた。買えなかった人には申し訳ないけれど、それだけ喜んで貰えているという事だもんね。
夜にクッキーを作っていると、チョコがなくてもチョコチップクッキーが作れたり、薬草を刻まなくても回復クッキーと魔力回復クッキーが出来た。
省略スキルが楽しすぎて、早くレベル10にならないかなと待ち遠しい。鑑定してみたら、今の錬金術(省略)スキルのレベルは8だった。
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