第28話 発酵器を届けに行こう
次の日やることを終えてから錬金部屋に向かう。今日は体調も大丈夫そうだし椅子もあるから、まずはエリクサーを作ろう!
今日こそ成功させるぞ!
まずは今日の分の蒸留水を準備しよう。あれ、これも省略が使える? でも、どこを省略をしようかな。
あれ、でも省略するところがない? お水を入れて、蓋を閉めて魔力を込める。お水を入れないで錬金しちゃう?
思いついたらやってみないと、うずうずしてしまう。蓋を閉めたら魔石に手を魔力を流していく。
『カノン。中に何も入れてないが、何をしているのだ?』
「ふふっ、思いついたらやってみたくなっちゃって」
チーン!
あっ、×マークが出ない! 蓋を開けてみると、中には蒸留水の瓶が10本出来ていた。
「うわ~、本当に出来た!」
『いやいや、材料を入れないで何を作ったんだ!』
「ヴァイス。みてみてー! 蒸留水が出来たよ!」
『水はどっから来たんだよっ!?』
「省略したっ!」
『おかしいだろっ!?』
「ふふっ、面白いね~」
まさか何も入れずに蒸留水が出来るとは、面白すぎるでしょう。省略スキルさん、素敵です!
治癒草と魔力回復草を刻んで錬金釜に入れて、不死鳥の羽と蒸留水を入れて蓋を閉める。椅子を持ってきて座って準備が出来たら、蓋の上の魔石に手を乗せて少なめの魔力を込めていく。
今回はこのまま1時間魔力を注ぎ続けないといけないのだ。
『カノン、魔力はどうだ?』
「うん、まだ大丈夫だよ」
『足りなくなったら、我の魔力を使えばいいぞ』
「うん、ありがとうね。今度こそ成功させたいね!」
『ああ、カノンなら大丈夫だ。頑張るといいぞ』
「ふふっ、ありがとう」
1時間ほど椅子に座ったまま魔力を込めていると、やっと出来たみたいだ。
チーン!
「おぉ! ×マークが出てないよっ!」
急いで蓋を開けて鑑定してみる。
エリクサー:欠損も呪いも何でも治せる治療薬。但し蘇生は出来ない。
「ヴァイス、出来たよー!」
『うむ、さすがカノンだな。良かったな』
「うん、嬉しいっ!」
次はポーションを作ろう。いつもは5本ずつだけど、今日は10本纏めて作ってみようかな。
蒸留水を作ってから材料を10本分どさっと入れてから蓋を閉めて魔力を込める。
チーン!
錬金釜の蓋を開けると、10本の回復ポーションが出来た。魔力回復ポーションも10本で作ってみたけれど、問題なく出来た。
後は、ヴァイスにホットケーキを作ってあげようかな。水晶糖のシロップで食べたかったんだよね!
小麦粉、卵、牛乳、ふわふわの実、砂糖を錬金棒でまぜまぜする。
ぽんぽんぽんっ!
『はっ!?』
「えっ?」
目の前にはお皿に乗ったホットケーキが3個。ホットケーキの過程を考えたら、この後は焼いたら完成だよね。
「もしかして、焼く工程を省略したのっ!?」
『だからおかしいだろっ!?』
「いやぁ、錬金術凄いね!」
『違うからなっ!? カノンがおかしいんだぞ!?』
「おかしくは……あるね、うん。私もびっくりしたよ」
まさか錬金棒で混ぜるだけで、ホットケーキが焼けるだなんてびっくりすぎる。
「そういえば、錬金棒で混ぜてたね」
『無意識か』
「つい、いつもの調子で使ってたよ」
錬金おたまが早く欲しくなったな。色々なお料理が簡単に作れるようになりそうだ。でもその為には、魔石の大サイズを集めないとだね。
出来たらいくつか集めてお玉以外の道具も作りたいなぁ。
残りの魔石(大)は赤と黒。どこにあるんだろうなぁ。
「ねえ、ヴァイス。赤と黒の魔石の大サイズはどこで手に入るかなぁ?」
『そうだな、赤だったら火山だろうな。黒は、鉱山だと思うぞ』
「火山と鉱山。それはまた大変そうな所だね」
『そうでもないぞ。我がいるから問題はないだろう』
「そうなんだ。火山と鉱山ってどこにあるの?」
『火山は隣の国にあるから、少し遠いな。鉱山は我がいた山に鉱山ダンジョンがあるぞ』
「えっ!? ヴァイスがいた山に鉱山ダンジョンなんてあったんだ!」
鉱山ダンジョン、鉱石が沢山手に入りそうで楽しそうだ。そのうち行ってみよう。
火山はこのアプリフェル王国の西にあるランジェット王国に火山があるんだって。こっちもそのうち行ってみたいけれど、隣の王国にヴァイスで乗り込むわけにはいかないだろうから、お休みが取れるようになってからかな。
「とりあえずは近くのダンジョンをクリアしてから考えようか」
『そうだな。そこで大サイズの魔石が出るかもしれないしな』
「そうだね!」
ダンジョンも下層になればなるほど魔石の大きさも大きくなっていくから、赤と黒の魔石が出るかもしれないもんね。
「よし、まずはホットケーキを食べようか!」
『それは良い!』
アイテムボックスに仕舞ってからキッチンへ移動する。師匠も一緒に食べられそうなので、水晶糖を熱して溶かしたらホットケーキに掛ける。
「ん~! 美味しそうっ!」
『カノン、早く食べるぞっ!』
「今日は何だい?」
「今日はホットケーキですよ。甘いシロップで食べると美味しいですよ~」
一口食べると、甘いシロップとホットケーキのふわふわがとっても美味しい。これはきっとヴァイスも師匠も好きなはずだ。
そっと2人を見てみると、とても嬉しそうな顔で食べ進めていて、気に入ったみたいで嬉しい。
「これは美味しいねぇ」
『うむ! カノン、またこれを食べたいぞ!』
「ふふっ、いつでも作るよ!」
そういうと、ヴァイスのしっぽがご機嫌に揺れた。あまりにも可愛いヴァイスに、にこにこしてしまう。
「そうだ、師匠。エリクサーが作れました!」
「はっ? エリクサーだって!?」
師匠にエリクサーを見せると、すごく驚いていた。普通は不死鳥の羽がなかなか手に入る物ではないから仕方ないかな。
「カノンに私が教える事がなくなった気がするねぇ」
「えっ! そんな事ないですよ? まだまだ知らない事だらけです」
「これは1本だけかい?」
「はい。1本失敗してしまったので……」
「これ1本で一生暮らせるくらいだから、大事に仕舞っておきな」
「えっ、そんなに高いんですか?」
「当たり前さね。不死鳥の羽なんて手に入るもんじゃないんだよ」
確かに私もヴァイスの所になかったらこれも作れていなかったもんね。アイテムボックスに仕舞っておいた。
「必要になる時まで仕舞っておきます」
「それが良いと思うさね」
お片付けをしたら、師匠とお店番を交代する。後で師匠と交代してパン屋さんへ行く予定だ。それまで少しのんびりお店番だ。
「カノン、そろそろパン屋もお客が減っただろうから、行っておいで」
「はい、行ってきますね」
ヴァイスを肩に乗せてお店を出てパン屋さんへ向かう。今日は発酵器のお勧めに行くんだけど、一応師匠が話を通してくれているので、基本的には使い方と設置に行くんだよね。
パン屋さんに入ると、すぐに厨房に通された。発酵器を出して使い方を説明して、実際に酵母液を作ってみる。出来た酵母液も見せて説明をして、出来たパンを取り出して味見をして貰った。
「このパンは味も香りも良いね」
「ケイティさん、良かったです。慣れるまで少し時間が掛かるかもしれませんけど、私の分かる範囲でお手伝いさせて頂きますね」
「ああ、そりゃ助かるよ」
旦那さんのオスカーさんも、目を閉じてパンを味わっている。街でも美味しいパンが食べられるようになると嬉しいよね。
そのうち総菜パンとか甘いパンも食べられるようになると良いなぁ。
「カノン、ありがとうね。何かあったらお店に寄らせてもらうよ」
「はい、試して頂いてありがとうございます」
パン屋さんを出てお店に戻ろう。お店に戻る間もヴァイスと話しながら歩いて行く。
「きちんと酵母が出来て、美味しいパンが出来るといいね」
『そうだな。だが、職人だからきっと大丈夫であろう』
「そうだね!」
お店に帰ったら、師匠と交代してお店番だ。今日も色々な人が来て、冒険者さんのお話も聞けて楽しかった。
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