第25話 海ダンジョン3

 朝目が覚めたら、ヴァイスのふわふわ気持ちの良い毛皮に埋もれてた。気持ち良すぎて、もっともふもふすりすりしたいっ!


『カノン、起きたか』


「ヴァイス、おはよう。気持ち良くてこのまま二度寝したい~」


 そういうと、ぽいっと外に出された。


「さむっ! ヴァイスが温かかったから寒く感じるね」


『腹が減ったぞ』


「ふふっ、朝ごはん食べようね」


 朝ご飯は簡単に目玉焼きとベーコンを焼いてパンと一緒に食べよう。ヴァイスにはパンに挟んでから渡してあげる。


「今日は26階からだね」


『そうだな。午前中には終わりそうだな』


「そうだね。ヴァイスの強さとフローデスベルナーの速さで、凄い勢いで進んでるもんね」


『フローデスベルナーは良いな。速くて良い!』


 お片付けをしたら、26階へ向かおう。降りている途中で大きな魚がゆったりと優雅に泳いでいるのが見えた。

 鑑定してみると、人米ザメと掛かれている。なんて読むんだろう? と良く鑑定してみると、ジンベイザメと出た。書き間違えたのか、人米ザメであってるのか不思議だね。


『ふむ。あれは人も食べるんだな』


「えっ?」


 ヴァイスの言葉にもう一度人米ザメの鑑定を良く読んでみると、あの大きい口で何でも食べるらしい。地球のジンベイザメとは違うんだね。


 ヴァイスが人米ザメを倒すと、ドロップ品が出た。人米ザメのドロップ品は、青の魔石(大)、米俵だった。


「お米っ!?」


『むむ?』


 米俵の中身を確認してみると、やっぱりお米だった。これは嬉しい!


「やっぱりお米だよ! 人を食べちゃう魔物だけど、米俵で出るなんて素敵すぎるよ!」


『よし、倒すか!』


「おー!」


『あっ、カノン。そこの花を取って行くといいぞ』


「あっ、本当。可愛いお花が咲いてるね」


『それはポーションの材料のはずだ』


「わわっ、ありがとう!」


 ヴァイスが教えてくれたので、鑑定してみると水中花という名前で、耐水ポーションの材料になるんだそう。でも、このポーションは飲むんじゃなくて、防具とか服に染みこませると耐水性があがるんだそう。


 26,27階の所々に水中花が生えていたので、採取しながら人米ザメを倒して進んでいく。人米ザメを沢山倒したので、米俵も沢山手に入った。


「これって、アイテムボックス持ってなかったら、持って帰るの大変だね」


『確かにな』


「後3階層だね~。次は何だろうね」


『ああ、楽しみだ』


 ヴァイスとそう話ながら28階へ下りて行く。階段を下りている途中から大きな変な形の魚が見える。


「ヴァイス、あれ何?」


『ん? ああ、あれはハンマーシャークだな』


「んん? ハンマーヘッドシャークじゃなくて?」


 私も鑑定してみると、確かにハンマーシャークと書いてある。ハンマーシャークを見てみると、納得した。

 大きなサメのひれに大きなハンマーを持っている。


「あれ、どうやって持ってるんだろうね?」


『確かに不思議だな』


「しかも泳ぎにくくないのかな?」


『そこか?』


「だって、バランスが悪すぎでしょ?」


 あんなに大きなハンマーを持っていて、泳げているのが不思議で仕方ない。


 ヴァイスが倒すと、ドロップ品が落ちてぽふん! とハンマーシャークが消えた。ドロップ品は青の魔石(大)、アクアマリンだった。


「おぉ、アクアマリンだね~」


『ふむ。今回は旨い物がなくて残念だったな』


「確かにそうだね~。でも青の魔石(大)が沢山手に入ったから嬉しいよ」


 28、29階でも水中花が咲いていたので、採取しながら進んで行く。アクアマリンが沢山手に入ったけれど、何かに使えるか帰ったら師匠に聞いたりして考えてみよう。


「やっぱり30階まで来るの早かったね~」


『そうだな。テンポが良くなったから面白かったぞ』


「ふふっ、そうだね。フローデスベルナーに風の魔石の大サイズを使った甲斐があったね!」


『うむ』


 30階のボス部屋に入ると、両手(ヒレ)にハンマーを持ったダブルハンマーシャークがいた。


「うん、バランスって大事だよね!」


『カノン、そこか!?』


「いやぁ、泳ぎにくそうだなって思ってたんだよね」


『だから、そこじゃないだろ!?』


 バランスの良さは大事だと思うんだよ? 両手に巨大なハンマーを持った大きなダブルハンマーシャークだけど、ヴァイスに一撃でやられちゃうのは、ちょっと可哀そうな感じだったね。


「ヴァイス、最後のボスでも全然苦戦しないよね」


『当たり前であろう。我は世界最強だぞ』


「確かに、これで苦戦してたらびっくりだけど、あまりのあっけなさにそれはそれでびっくりだったよ」


 ダブルハンマーシャークのドロップ品は青の魔石(大)、シーブルーサファイアだった。


「綺麗な宝石だね~」


『そうだな。だが、カノンは食べ物の方が嬉しそうだな』


「うっ! で、でもそれはヴァイスもでしょう!」


『うむ、そうだぞ』


 ヴァイスに開き直られてしまった。別に宝石が好きじゃないわけじゃないんだよ!? ただ、食べ物がさらに嬉しかっただけで。


「うぅ、だって、高級食材が沢山で嬉しかったんだよー! でも宝石のキラキラ綺麗なのも好きなんだよ?」


『分かっておる』


 ちょっと目が笑ってるヴァイスだけど、これ以上言ってもどうしようもないので黙っておこう。30階でも宝玉に手を置くと、近くにあった魔法陣に乗って1階に戻る。

 ダンジョンの外に出て、リンドーロの街へ向かう。


「なんかずっと青い世界にいたから、視界がおかしい感じがする」


『確かにそうだな』


「しかし、ヴァイスのおかげで色々な材料が手に入ったよ~。ありがとうね」


『我だからな!』


 ヴァイスのおかげで青の魔石も大中小と沢山手に入ったから、お店に帰ったら色々作れそうで楽しみだ。

 門番さんに手続きをして貰い街の中に入る。まだ午前中なので、市場もにぎやかだ。色々なお野菜を買って行こうかな。


「このかぼちゃ花が咲いてる!」


「それは花かぼちゃって言うんだよ。甘みがあって美味しいんだよ」


「これはどうやって食べるのが美味しいんですか?」


「焼いて食べるのがお勧めだよ」


「ありがとうございます。花かぼちゃを5個ください」


「はいよ」


 お金を支払い、花かぼちゃはアイテムボックスに仕舞う。他にもくるくる巻いてあるお野菜がまたあったので、それも美味しかったから沢山買っておいた。


 市場を歩いていると、キラキラした宝石みたいなのを売っているお店があった。なんだか気になったので、お兄さんに声を掛けてみる。


「こんにちは、これはなんですか?」


「いらっしゃい。これは水晶糖って言って、舐めると甘いよ。味見をどうぞ」


 小さな欠片を手の平に乗せてくれたので、鑑定してから食べてみる。


「んっ! あま~いっ!!」


 鑑定結果を見ると、水晶糖は甘い木の樹液の結晶だそう。この水晶糖に熱を加えて溶かすと、メープルシロップになるんだそう。


(メープルシロップ! これは沢山買っておこう!)


 今持っているお金で買えるだけ全部買わせて貰ったら、水晶糖が5kgくらいになった。お金がほとんど無くなったけれど、ダンジョンで取って来たものを買い取って貰えればお金あるから良いのです!

 メープルシロップは大事なのです!とりあえず、冒険者ギルドで少し買い取って貰おう。

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