第23話 海ダンジョン1
6階の階段の上から見てみると、空中にお魚が泳いでいる。水はないけれど泳げるんだね。
「なんだか、本当に海の中にいるみたいで素敵だね!」
『ああ。だが、あれはちょっと危ないから気を付けろよ』
「う、うん!」
お魚を鑑定してみると、刀魚(とうぎょ)と書いてある。良く見てみると、刀みたいに鋭い歯を持っていて、人に向かって突っ込んでくるんだそう。
「こわっ!!」
『だろう?』
「えっと、私何かする事ある?」
『いや、普通に進んで構わないぞ。我に任せろ!』
「お願いしますっ!」
私、異世界に来たけれど、戦闘職じゃなくて良かった。こんなの怖くて無理だったよ。本当にヴァイスが居てくれて良かった。安心感が半端ない。
フローデスベルナーを使って少し速めに進んで行く。これの強弱も付けられるようになったんだよ。体重の乗せ方で速さが変わるから、慣れたら凄く使いやすかった。
少し進むと、刀魚が次から次へと突っ込んでくる。さすがにちょっと怖いけれど、ヴァイスが次々に倒してくれるから、私に当たる刀魚は1匹もいない。
刀魚のドロップ品は、青の魔石(小)、サンマ、太刀魚だった。
「サンマも太刀魚も出たね」
『旨いのか?』
「うん、どっちも美味しいよ~」
しかし、まだ8階なのにこんな魔物が出てくるって、このダンジョン難易度高めなのかな?
「こんなに襲われたら普通の冒険者達ってどうするんだろう?」
『さあ、どうだろうな。だが、難易度は高そうだな』
「やっぱりそう思うよね」
次の9階も刀魚が出て、物凄く襲われた。ヴァイスが全方向に魔法を撃っていたけれど、あれは一体どんな魔法なのだろうか?
「ヴァイス、魔法で全方向に撃てるの?」
『ん? ああ、もちろんだ。このフロア全体に撃てる魔法もあるぞ』
「えぇぇ!? そ、そんなのまであるんだ。さすがヴァイスだね!」
『ふふん!』
えっへん! と胸を張るヴァイスを思わずなでなでして、クッキーをアイテムボックスから取り出して渡しちゃう。
ちょっとお行儀悪いけれど、歩きながら食べちゃおう。今度はパウンドケーキとかマドレーヌとか他の焼き菓子も作りたいな。きっとヴァイスは気に入ると思うんだよね。
10階のボス部屋に入ると、巨大な刀魚と普通サイズの刀魚が沢山いる。
「でかっ! こわっ!」
『カノン、大魔法行くぞ!』
「う、うん!」
次の瞬間、視界がちかちかして見えなくなったので目をぎゅっと瞑った。少し落ち着いて目を開けると、辺り一面にドロップ品が転がっている。
「あの一発で倒しちゃったの? 全部?」
『ああ、もちろんだ』
「すごいっ! どんな魔法を撃ったのかもよく分からなかったけれど、凄いねぇ」
ヴァイスのしっぽがゆらゆらとご機嫌に揺れている。フローデスベルナーを使って、ボス部屋の中を移動してアイテムボックスに収納していく。
やっぱりこのフローデスベルナー、速くて便利。これはもう手放せないかも!
11階へ行くと、今度はあちこちに貝がいる。
「今回は貝なんだね~。さっきの刀魚からのギャップが凄いね」
『カノン、鑑定はした方がいいぞ』
「ん? うん、分かったー」
鑑定してみると、嘘つき貝と書いてある。嘘つき? と思い良く見てみると、貝に擬態している魚だった。しかも、近づくと食べられるらしい。
「うわ、こわっ!!!」
『だろう?』
「うん、ちゃんと鑑定するね」
『その方が良いと思うぞ』
ヴァイスが倒してくれた嘘つき貝のドロップ品は青の魔石(小)、白身魚、貝柱だった。
「お魚と貝どっちも出るんだ。えっ、なんでっ!? 擬態してるだけじゃないのっ!?」
『カノン、それは食べられるのか?』
「えっとね、白身魚も貝柱も天ぷらにすると美味しいって書いてあるよ」
『それは良い!』
鑑定スキルさん、美味しいかどうかまで教えてくれるんだね。でも、美味しい調理方法を教えてくれるのは助かるなぁ。
天ぷらに、天丼、天ぷら茶漬けにしても良いなぁ。うん、どれも美味しそうだ。ヴァイスも師匠もきっと気に入るだろうから、どれも作ってあげなきゃだね!
しかし、フローデスベルナーを使っているから進みがやっぱりかなり早い気がするね。まだお昼前なのにもう11階まで着けたもんね。
少し早いけれど、お昼休憩にしちゃおうかな。
「ヴァイス。少し早いけれど、お昼休憩にしようか?」
『もちろんだ! 旨い飯を食わねば力が出ないぞ!』
本当に、食いしん坊さんになったな~。とヴァイスを眺めていたら、やっぱりしっぽで叩かれた。
「いたたっ」
『何か失礼な事考えたであろう!』
「え、えへ?」
ちょっとぷんぷんと怒ったヴァイスだけど、安全エリアに入ってお昼ごはんを出したらご機嫌になった。お昼ごはんを食べた後は、魔力回復クッキーとチョコチップクッキーとお茶を出してあげてゆっくりお茶をしてから、次の階に行ってみよう。
12階も嘘つき貝が沢山いたので、ヴァイスに次々に倒して貰う。フローデスベルナーを使って足早に進んで行くと、すぐに階段までたどり着けた。
13階に下りると、ダンジョンの中をイカが泳いでいる。イカだけど、きちんと鑑定しておかないと危ないから、鑑定してみる。イカスッミーという名前で、近寄ると墨を吐いてくるんだそう。
ここまでは普通のイカだと思うんだけど、この墨に触ると麻痺するらしい。しかも、麻痺した所を食べられるって!
「麻痺……こわっ!」
やっぱり異世界でしかもダンジョンともなると、普通だと思っちゃダメなんだね。本当に気を付けないと危ないね。
このイカスッミー、倒すと青の魔石(小)、イカ、イカの塩辛をドロップした。
「イカの塩辛!? なんで加工済みで瓶に入ってるのー!!」
『加工済みってことは旨いのか?』
「うん、私は好きだよー」
しかし、ヴァイスったら……よく加工済みって言葉から美味しい物って分かったなぁ。そして、イカの塩辛があるなら、日本酒が欲しかったなぁ。
日本にいた時にはお酒をあんまり飲まないから、買ってなかったんだよね。残念だ。
14階に下りてもイカスッミーがいたので、倒しながら進んで行く。
イカの美味しいお料理は何かなぁ。イカ刺し、イカ飯は出来ないから、炊き込みご飯にいしょうかな。後は煮物にもしたいなぁ。貝もあるからパエリアもいいな~。
『カノン、何か旨い物か?』
「えっ、なんでわかったの!?」
『そんな気がしただけだ』
そんなに顔に出てたかな? あっ、でも美味しい物の事考えていたからかな。
そんなことを考えながら進んでいたら、階段に着いた。階段を下りてボス部屋に行くと、巨大なイカスッミーと普通サイズのイカスッミーが沢山いた。
「うわぁ、大漁だね」
『カノン、すぐに終わらせるから、目を閉じていろ』
「ヴァイス、お願いします!」
目をぎゅっと瞑ると、目を瞑っていても分かるくらい白く光った。
『カノン、終わったぞ』
目を開けると、ドロップ品のイカがそこかしこに散らばっている。急いでアイテムボックスに仕舞っていく。
「ヴァイス、イカと塩辛が大漁だね!」
『カノン、旨いものを頼んだぞ!』
「うんっ、任せて!」
全部を仕舞い終わると、宝玉に手を置いてから階段を下りて行く。16階への階段を下りて行くと、とげとげの黒い物体が動いている。
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