第22話 海へ行こう!

 数日経って今日は定休日だ。朝早く起きて師匠の朝ご飯とお昼ごはんの準備をして、3人で朝ごはんを食べる。


「カノン、海まで行くのかい?」


「はい! ヴァイスが乗せてくれるので日帰り出来ちゃうんですよ!」


「明日もお休みして良いから、ゆっくりしておいで」


「えっ!? でも師匠、お店大変じゃないですか!」


「何言ってるんだい。今まで1人でお店をやってたんだ、問題ないさね」


「師匠、ありがとうございます! 素材たっぷり持って帰って来ますね~」


「ははっ、そりゃありがたいねぇ」


 師匠が1泊してきていいと言ってくれたので、今日はリンドーロに泊って楽しんで来ようかな。師匠に行ってきますの挨拶とリンゴの酵母のお世話を頼んで、ヴァイスを肩に乗せてお店を出る。


 今日は早速フローデスベルナーを履いてきた。歩くスピードが速くなるのか楽しみだけど、街の中は危ないから使わないでおこう。外に出たらすぐに使ってみよう!


 南門を出てから、少し離れた所まで行ってから大きくなったヴァイスの背中に乗せて貰う予定だ。そこまでフローデスベルナーを試してみよう!


 手で靴の甲の辺りにある魔石を触ってスイッチを入れる。そうすると、少し浮かんだ気がした。歩こうと前に足を出そうと思ったら、びゅん! と前に移動してびっくりした。


「きゃぁぁぁ!」


『カノンっ!』


 ヴァイスが風で空気のクッションを作ってくれたので、なんとか木に激突しないで済んだ。

 まさか、地面の上を少し浮いて滑るとは思わなかった。ふと名前をよく思い出してみる。


「フローデスベルナー……フロア? で滑る? も、もしかしてまたそんな感じなのっ!?」


『どうした?』


「フローデスベルナーって床の上を滑って進める事なのかなって思って」


『なるほどな』


 少しコツを掴むまで練習をしたら、簡単に進めるようになった。


「うん。慣れたらこれ凄く楽だね!」


『ああ。しかも速いな』


 フローデスベルナーのスイッチを切ったらヴァイスの背中に乗せて貰う。大きく羽ばたくとぐんと空に舞い上がっていく。風魔法を使ってくれているから、落ちる心配も風の心配もないんだよね。

ぐんぐんスピードが上がっているのに、全然揺れないんだけどどうなっているんだろう。後でヴァイスに聞いてみよう。


 景色を楽しんでいると、遠くの方にきらきら光る海が見えて来た。

 日本にいた時には、なかなか海に行く機会がなかったから物凄く久しぶりの海な気がする。とっても楽しみだ。


 海の少し手前には港街のリンドーロが見える。冒険者ギルドに行って何か依頼がないか見てみようかな。リンドーロの手前で降りて貰い、小さくなったヴァイスを肩に乗せて街まで歩いて行く。


「やっぱり海が近いからか暑いね~」


『そうだな』


 ヴァイスはもふもふだから余計暑そうだよね。以外と肩に乗せていても、暑く感じないのが不思議なんだよね。


 街に入り冒険者ギルドに行くと、左の壁にある依頼票ボードを見てみる。

 砂浜で貝の採取とか海底ダンジョンでの討伐依頼とか色々ある。


「ヴァイス、海底ダンジョンなんてあるの?」


『そのようだな。行ってみるか?』


「ちょっと楽しそうだね。受付のお姉さんに聞いてみようか」


 受付のお姉さんに海底ダンジョンの事を聞いてみよう。


「こんにちは。少しお話しても大丈夫ですか?」


「えぇ、どうしましたか?」


「あの、海底ダンジョンってどこら辺にあるんですか?」


「海底ダンジョンは、南門を出てすぐに入り口があるのよ。南門を出たらすぐに分かると思うわ」


「わわっ、そんなに近いのですね! やっぱりお魚とかが多いダンジョンなのですか?」


「ええ、そうよ。大体お魚と貝が多いわね~」


「ありがとうございます。ちょっと行ってみますね」


「気を付けて行ってらっしゃい」



 受付のお姉さんに挨拶をして冒険者ギルドを出ると、街を見ながら南門へ向かう。ここは港町でちょっと暑いくらいだから、みんな薄着で歩いている。


「ヴァイス、お魚採りに行こう! お魚に貝なんて素敵!」


『そうだな。そのままダンジョンで泊まって攻略して来たら良いしな』


「あっ、それも良いかもしれないね。青の魔石も手に入りそうだしね~」


 ヴァイスと話をしながら南門へ向かう。南門で手続きをして貰い外に出ると、すぐ近くに大きな石造りの扉があった。その石の扉に模様も描かれているので、尚更恰好良い!


「うわぁ、確かにすぐに分かるね。しかも恰好良い!」


『よし、行くぞ!』


 扉の横にある受付所でギルド職員に手続きをして貰うと、扉の魔石に手を触れて中に入る。


「うわぁ、綺麗っ!」


『これは凄いな』


 ダンジョンの中に入ると、白い石造りのフロアに水の煌めく感じが映っていたり、色々な所に波紋が見えたり、本当に海の中にいるみたいな気分だ。


「綺麗だねぇ~」


『このダンジョンならカノンも怖くないだろうから、泊まれそうだな』


「うん、確かにっ!」


 思い切り頷いてしまったよ。だってジメジメしている暗いダンジョンで寝るのは怖すぎるもん。この綺麗な海の中みたいなダンジョンなら全然怖くない。


 ヴァイスが少し上に飛んで、階段の位置を確認してくれたので階段に向かって歩いて行く。


「ここの階は何もいないのかな?」


『いるぞ?』


「えぇぇっ!? どこっ!?」


『地面の下だな』


 思わず地面を見つめちゃう。いやいやいや、一体どんな魔物なの?


「えーっと、ちなみにどのあたり?」


『カノンのもう1歩先の地面の下にもいるな』


「えっ!?」


 良く見てみるけれど、良く分からない。座り込んでみてみると、小さな穴が開いている。

 ヴァイスが土魔法で地面を掘り起こしてくれたら、貝がいた。


「あっ、貝なんだね」


『カノンっ!!』


「えっ!?」


 ぽふん!


『カノン、手を出したら危ないぞ!』


「えっ? えっと、貝だよね?」


『噛みつかれるがな』


「そ、そうだった……危ないんだよね。倒してくれてありがとうね」


 ついつい日本の感覚で貝を拾いそうになった所で、ヴァイスが倒してくれた。突然で驚いたけれど、この世界の魔物はこんな小さな貝でも怖いんだね。本当に気を付けないと危ないな。


 貝から出たのは青の魔石(小)、アサリだった。


「おぉ、アサリだ!」


『知っているのか?』


「うん。お料理にすると美味しいんだよ~」


『何っ!? よし、取るぞ!』


 そういうと、歩いて行く先を土魔法で掘り起こして貝を倒していくヴァイス。アサリの他にホタテもハマグリも出た。これは美味しい貝なんだね。


「貝がいっぱい採れたね~」


『美味しい物が食べたいぞ!』


「そうだね。師匠にも食べさせてあげたいから、帰ったらこれでお料理作ろうね!」


『うむ! もちろんカタリーナにもお土産だな』


「そうだね~」


 意外と師匠とヴァイスの仲が良いんだよね。しかも食の好みも似ているみたいで、いつも楽しくご飯を食べているんだよね。


 1~2階はこの貝が沢山いたので、ちょっとだけ時間が掛かったかな。3階へ下りると、今度はぴょこぴょこ動いているのが見えて、なんだか既視感が。


 階段を下りて、ぴょこぴょこ顔を出す魔物を鑑定してみると、シーモールと書いてあった。


「なるほど、海もぐらって事なのだね」


『またもぐらか』


「そうだね」


 シーモールが顔を出した瞬間にヴァイスが魔法で倒していく。あまりの早さにちょっとびっくりするくらいだ。

 シーモールのドロップ品は青の魔石(小)、水色が綺麗なシーブルーカルセドニーだった。次に倒した時には白いカルセドニーが出た。シーブルー、ホワイト、ピンクがランダムで出るみたい。


 5階のボス部屋には大きなシーモールがいた。


「ヴァイス。シーモールって、ぴょこぴょこ顔を出したり引っ込めたりするから倒しにくいと思うんだけど……これ倒しやすそうだよね?」


『そ、そうだな』


 大きいから動きがそこまで速くない。ヴァイスなら速くても平気そうだけれど、これだったら簡単に倒されちゃいそうだよ?

 まあ、5階のボスだから良いのかな。


 大きなシーモールを倒すと青の魔石(中)とピンクカルセドニーが出た。宝玉に手を置いてから6階へ向かおう。

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