第19話 フードドライヤーを作ろう
ゆっくり休んだ次の日、朝ごはんを食べていると師匠に聞かれた。
「今日は何を作るんだい?」
「今日はフードドライヤーの試作を完成させる予定です」
「そうかい。所で、フードドライヤーってのはなんだい?」
「お肉屋さんに頼まれている、ジャーキーを乾燥させるための道具なんです」
「なるほどね。出来そうかい?」
「今日は錬金釜で錬金してみる所なので、上手く行くといいんですけど……」
お片付けも終わらせてから錬金部屋へ向かう。昨日魔石を貼りつけたフードドライヤーを錬金釜へ入れて蓋を閉める。魔石に魔力を込めて行くと、やっぱり魔石が3個あるからなかなか終わらない。
『カノン、足りなければ我の魔力を使うと良い』
「うん、ヴァイス。ありがとう」
魔力が足りなくてヴァイスの魔力も借りてなんとか完成した。これ以上魔石を使う錬金はまだ難しそうだね。
錬金釜から完成したフードドライヤーを取り出すと、中を確認してみる。網を取り出して昨日漬けておいたお肉を並べてフードドライヤーを作動させる。このまま7~8時間様子を見てみよう。
『出来たのか?』
「どうだろう。まだまだ夕方まで時間かかるんだよ~」
『そんなにかっ!?』
しょんぼりするヴァイス。しっぽがへにょんとしてる。
「ヴァイス。ダンジョンで取って来たチョコを使ってチョコクッキー作ろうか?」
ぴょこん! と起き上がって目をキラキラさせるヴァイス。世界最強のドラゴンはどこに行ったかなと思うほど嬉しそうだ。
『クッキーが更に美味しくなるのか!?』
「ん~、さらにかは分からないけれど、チョコチップクッキーも美味しいんだよ?」
『食べるぞ!』
やっぱりヴァイスは元気じゃないとね。しょんぼりしていたらやっぱり可哀そうになっちゃって、つい甘やかしちゃうけど、普段甘やかされているから良いよね。
クッキーの材料を出して、チョコみるぎゅーから出たチョコも入れてクッキーの生地を作っていく。チョコも刻んで入れて生地が完成した。
錬金釜にクッキー生地の入っているボウルを入れて、蓋を閉めたら魔力を込める。ヴァイスが蓋の上でわくわくと中を眺めている。
「ふふっ、ヴァイス。また目が回るよ?」
『大丈夫だ!』
チョコチップクッキーが楽しみすぎて、目が離せないヴァイス。可愛すぎでしょう。
チーン!
出来上がりを知らせる音がなると、ぴょこん! と反応するヴァイスについつい笑顔になってしまった。早く味見させてあげよう。
蓋を開けて、まずは1枚をヴァイスの手に持たせてあげる。それから錬金釜から取り出して私も1枚味見をしてみる。
「ん、美味しいね!」
『カノン、お代わりだ!』
気に入ったようで、それから3回お代わりをしていた。ヴァイスが食べている間に師匠にも味見を持って行く。
「カノン、これも美味しいねぇ。みんな喜びそうだよ」
「喜んで貰えるの、とっても嬉しいですっ!」
ヴァイスの所に戻ると、クッキーを食べてお腹いっぱいになってお腹を上にして寝ていた。
(世界最強のドラゴンがそれでいいの!?)
たまにぴすぴすとかわいい寝息の音が聞こえて、ちょっかいを掛けたくなる可愛さです! でも可哀そうなので起こさないよ、大丈夫! 可愛い寝顔は眺めるけどね!
今度は何を作ろうか、錬金術の本を読みながら考える。本を見ていると、フローデスベルナーというのを見つけた。
どんな物なのか良く見てみると、床を滑るように早く進める靴が出来るんだって。これだったらダンジョンも早く進めるのでは!?
材料は靴、緑の魔石(中)か(大)、白の魔石(中)が必要らしい。どうして白の魔石がいるのか本を良く見てみると、安全のためらしい。確かに安全は大事だもんね。
よし、次はこれを作ろう!
まずは靴を買いに行かないとダメだね~。
魔石はワイバーンの魔石が緑の魔石(大)だったからそれと、白の魔石(中)はコックルミかシルクスパイダーの魔石があるね。白の魔石(大)はないから中サイズで作ろう。
『カノン、いつ戻ってきたのだ?』
「ふふっ、ヴァイスが寝ている間だよ。お腹大丈夫?」
『ああ、問題ないぞ。我だからな!』
「うん、そうだね。お買い物へ行くけど、ヴァイスはどうする?」
『ん? もちろん我も行くぞ!』
そういうと私の肩に乗ってくれたので、師匠に一言言ってからお店を出て靴屋さんへ向かう。
『カノン、何を買うのだ?』
「靴を買うんだよ」
『靴?』
「さっき錬金術の本を読んでいたら面白そうなのがあったから、靴の魔道具を作ってみようと思ったんだ」
『ほう。靴の魔道具か、それは面白そうだな』
「上手く使えたら、移動が早くなるんだよ!」
『そいつはいいな!』
靴屋さんに着いたので、ダンジョンで使えそうな靴を選んで注文をして来た。
日本と違って色々なサイズを作って置いているわけではなくて、注文して作って貰うのがほとんどらしいので、サイズを測って貰いお願いしてきた。
ただ、日本と違って魔法があるから出来上がりまで2日くらいで出来ちゃうらしい。異世界凄い、魔法凄い!
ついでに食材屋さんへ寄って小麦粉、お砂糖、バター、卵を補充しておこう。最近クッキーが良く売れているので、作ってもすぐになくなってしまうんだよね。
お店に帰ると、まずは発酵器の様子を見てみる。まだほとんど変化はないので、混ぜてまた発酵器にお任せしておいた。
フードドライヤーも様子を見てみると、少し乾いてきていた。
「うん、順調に出来てきているみたいだね。問題なさそうで良かったよ」
『まだ食べられないのか!?』
「うん、まだ夕方まではかかると思うよ~。さっ、お昼ごはんにしよう!」
ヴァイスがちょっとしょんぼりしかけたけれど、お昼ごはんの言葉でご機嫌になってちょっとホッとしたよ。
お昼ごはんはお肉にしてあげよう。ちょっと手間はかかるけれど、カツサンドにしてみた。ついでにカツを余分に揚げておいて、お夕飯の時にかつ丼にしちゃおう。今日はそれと豚汁で豚尽くしだね!
『カノンっ! 我はこれが好きだぞ!』
「ふふっ、だと思ったよ。カツサンドのこのキャベツの千切りが入っているのが美味しいんだよね~」
『うむ。このシャキシャキは我も好きだぞ!』
師匠の分も準備しておいて、お片付けをしたらお店番に入る。師匠にはご飯を食べてのんびりして貰おう。
お店番をしていると、やっぱりクッキーの人気が高いみたいで嬉しい。今日はチョコチップクッキーもある事を伝えると、それも! と言ってくれるのは幸せだね。
「そういえばカノン。明日から少しアクセサリー類を作って貰えるかい」
「はい、分かりました! どんなのが良いですか?」
「そうさね。リングとボタンが多めで、魔石は小サイズが多めかねぇ」
「分かりました。明日から作りますね~」
魔石の小サイズだったら沢山あるからいっぱい作れるね。リングとかボタンは錬金部屋の棚に沢山入っているのを使っていいのだって。
沢山錬金して錬金レベルが上がるといいなぁ。早く省略を使ってみたいよね!
『カノン、ジャーキーの試作はどうした?』
「あっ、ちょっと忘れてた。ヴァイス、ありがとう!」
フードドライヤーを開けると、ジャーキーが出来ていた。しかも、カチカチじゃなく少しだけ柔らかい感じの美味しそうなのが出来ていた。
ヴァイスのお口に1枚入れてあげてから、師匠と私も味見をしてみる。
「うん、これは良い味だね。それに、これに入れておいたらジャーキーが出来るなんて肉屋のベティーナも大喜びするさね」
「新しいのを作って持って行きますね」
『もぐもぐ……カノン、これ旨いぞ!』
フードドライヤーも無事に出来て良かった。もう1つ作ったらお肉屋さんに持って行って試して貰おう。
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