第15話 ジャーキーを作ろう

 今日は発酵器を作りたいけど、箱がない。


「師匠。冷蔵庫用の箱1個使ってもいいですか?」


「ああ、構わないよ。昨日言っていた発酵器を作るのかい?」


「はい。発酵器が出来ても発酵させるのに時間が掛かるから、早めに作って検証したいなと思って」


「そうさね。試さないと売れないからね。頑張るんだよ」


「はい」


 準備が出来たら、ヴァイスと地下から冷蔵庫の箱を持って錬金部屋向かう。昨日は冷蔵庫を作るのに魔力が足りなかったんだよね。また、昨日みたいに魔力が足りなくなるかもしれない。


『カノン、どうした?』


「んー。発酵器を作りたいけれど、また昨日みたいに魔力がなくなりそうで」


『我がいるから問題なかろう』


「ヴァイスは大丈夫だったの?」


『ああ、問題ない。任せておけ』


「うん、お願いね」


 発酵器だったら中側に赤の魔石、外側に緑の魔石を貼り付けよう。まずは内側に巨大とまとんから出た赤の魔石(中)を貼り付けよう。今日は10分ほどで貼り付けられた。

 次は緑の魔石を貼り付けよう。アイテムボックスの中から緑の魔石(中)を取り出そうと思っても出てこない。


「あれ?」


 アイテムボックスの中をよく思い浮かべてみると、緑の魔石は大と小しかなかった。


『どうした?』


「緑の魔石の中サイズがなかった。ワイバーンから出てきたのは大だったよ」


『そういえばそうだったな。ダンジョンでも小しか出てなかったな』


 師匠にあるか聞いてみよう。お店に移動して師匠に確認してみる。


「師匠、緑の魔石の中サイズありませんか?」


「どうしたんだい?」


「それが、私が持っている魔石が大と小しかなかったんです」


 師匠が魔石を探しにいってくれたので、その間お店番をして待っている。


「カノン、うちも緑の魔石の中サイズは在庫切れしてたよ。錬金術師ギルドか自分で取ってくるしかないね」


「あとで錬金術師ギルドに行って聞いてみます』


 お店番を師匠にお願いして錬金部屋に戻る。発酵器が作れないから、今日は何を作ろうかな。緑の魔石がないから、遮断の指輪も作れないんだよね。


 アイテムボックスの中を考えて作れる物を考える。お肉類は沢山ある。魔石は中サイズは黄、白、黒がある。小サイズは青、赤、黄、緑、白があるね。魔石の大は緑だけだね。


『カノン?何を悩んでいるのだ?』


「今日は何を作ろうかなと思って、アイテムボックスの中を確認してたんだ。魔石の小とお肉は沢山あるんだけど、何が良いかなぁ」


『我は食べる物が良いと思うぞ!』


「うーん、食べる物かぁ。あっ、ジャーキー作ろうかな」


『それは何だ?』


「保存食にもなるんだよ。冒険者さん達にも良さそう!」


 アイテムボックスの中から牛肉を取り出すと、お肉をまずは焼肉のカルビのお肉くらいの厚さに切る。切ったお肉を醤油、胡椒、砂糖、みりんのタレの入っているボウルに入れて混ぜてから、錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を込める。


 ヴァイスがまた錬金釜の中を覗いて楽しそうにしっぽをゆらゆらさせている。


 チーン!


 蓋を開けると、ジャーキーが出来ている。出来上がりがあっという間なんて、素敵すぎる。


「錬金釜も錬金術も凄いね! こんなに簡単にジャーキーが出来るなんて、素敵すぎるよ」


 鑑定してみると、美味しく出来ていると書かれているので、安心して味見をしよう。ヴァイスの口に1つ入れてあげてから、自分も口に運ぶ。もぐもぐと噛んでいると、お肉の美味しい味が口に広がっていく。


『カノン。これは噛み応えがあるが、こういうものなのか?』


「うん。ジャーキーと言ってお肉に味をつけて乾燥させているんだよ。保存食だから良く噛んで食べてね」


『そうなのか。だが、噛んでいると味が広がって旨いな。なんだか癖になる味だな』


 ヴァイスも気に入ってくれたみたいで嬉しいな。冒険者さん達にも食べて貰えるといいなぁ。師匠は、固いけどどうかな。後で試食を勧めてみようかな。


 ジャーキーが作れるってことは、他のお肉でも作れるかな。ジャーキーは脂のない所の方が美味しいから、馬肉とかうさぎ肉あたりで作ったらおいしいかもしれないね。


 どっちも作ってみようかな。さっきと同じタレに漬けて錬金釜でジャーキーにする。馬肉ジャーキーも美味しかったけれど、うさぎ肉で作ったのがあっさりと食べられて気に入った。

 ヴァイスはどれも好きみたい。



「師匠、ジャーキーを作ったので味見お願いします。保存食なので硬いですけど」


「また何か出来たのかい。色々種類がありそうだね」


「牛肉、馬肉、うさぎ肉で作ってみました。私はうさぎがあっさりしていて好きですね」


 師匠がもぐもぐと味見してくれている。


「ふむ、これは冒険者用かい?」


「そうですね」


「うん、いいんじゃないかい。どれも味わい深くていいね」


 師匠からの合格ももらったので、今度誰かに試食して貰おう。スープにしてもいいんだよね。


 師匠に味見もして貰ったし、そろそろ錬金術師ギルドに行ってみよう。ヴァイスを肩に乗せて、お店を出て錬金術師ギルドへ向かう。

 錬金術師ギルドへ着くとマリーさんがいたので、緑の魔石がないか聞いてみよう。


「マリーさん、こんにちは」


「あっ、カノンさん。こんにちは。カタリーナさんのお店で働いているそうですね。弟子入り出来ましたか?」


「えぇ、お蔭様で毎日とても楽しいです。ありがとうございました!」


「良かったです! 本日はどうされましたか?」


「緑の魔石の中サイズが欲しいのですが、ありますか?」


「少々お待ちください、確認してきます」


 受付でヴァイスと待っていると、マリーさんが戻ってきた。


「カノンさん、大変申し訳ありません。ただいま緑の魔石の中サイズは品切れで、在庫がひとつもないのです」


「そうなのですね。ありがとうございます」


『今度の休みの日にまたダンジョンへ行くか』


「うん、ヴァイス。お願いして良いかな?」


『ああ、もちろんだ。任せておけ』


 定休日にヴァイスと一緒にまたダンジョンの続きを探検しに行く事になった。緑の魔石(中)が出ると良いなぁ。


 ヴァイスとお店に戻ると、お昼ごはんを食べてから師匠とお店番を交代する。

 今度は何を作ろうかな。なんだか毎日新しく作れるものが増えていくのはとても楽しい。そういえば、マンゴーみたいな果物を買っていたんだった。あれもドライフルーツにしようかな。


「こんにちはー」


「いらっしゃいませ」


 来たのは、お肉屋さんのベティーナさんだった。


「カノン、なんかくっきー? っていうのが美味しいって聞いて来たんだけど、どれだい?」


「これです。味見をどうぞ」


「おや、ベティーナじゃないか。これも味見にどうだい?」


 師匠はジャーキーを渡しているけど、お肉屋さんの奥さんにそれはどうかと?


「干し肉かい?」


「カノンが作ったんさね。干し肉とまた違う味で美味しいんだよ」


「あら、本当だね。カノン、これは味が深いけど塩じゃないのかい?」


「違う調味料を使っているんですよ」


「干し肉と言えば、干すのが楽になるような魔道具が作れないかい?」


 日本ではフードドライヤーがあったね。あれがあると何日も掛かるジャーキーが早く作れちゃうんだよね。お天気も気にしなくていいしね。


「今魔石がないので少し時間が掛かりますけど、出来たら試してもらっていいですか?」


「ぜひお願いするよ!」


「カノン、何か思いついたんだね?」


「はい。でもまた緑の魔石が必要なんですよね」


「そうさねぇ。緑の魔石は結構便利に使えるからすぐになくなるのさね」


『我に任せておけ』


「うん、ヴァイス。お願いね」


 ベティーナさんは、クッキーとジャーキーお買い上げ頂いた。お肉屋さん干し肉ちょっと気になるかな。今度買ってみようかな。

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