第14話 冷蔵庫を作ろう

 今日は冷蔵庫作りを師匠に教わる予定です。これが出来たら発酵器に取り掛かるつもりなんだよね。

 冷蔵庫は箱に青の魔石を張り付ける。外側には緑の魔石を付けて冷気が外に出るのを遮断するんだって。説明して貰うと、なるほどって思うけれど、最初に作った人は凄いよね。


「カノン、地下から箱を取って来な」


「えっ、あるんですか!?」


「あぁ、うちの在庫用だから頑張ると良いさね」


「はいっ、きっちり仕上げられるように頑張ります!」


 急いで地下へ行くと、冷蔵庫用の箱がいくつかあったので1つ持って錬金部屋へ戻ろう。


「まずはこの青の魔石(中)を内側のここに貼り付けるよ」


「はい!」


 いつものように指をボールペンみたいにして魔力で魔石を貼り付けて行く。1個15分くらいで綺麗に貼れるようになってきたかな。


「次は外側のここに緑の魔石(中)を貼り付けるよ」


「はいっ」


 外側にも魔石を貼り付けていく。作業は慣れてきたけれど、集中力を欠くと上手く貼り付けられなくなるので、緊張感が凄い。

 2個目も15分くらいで貼り付けられた。次はこの箱を錬金ボックスに……って入るの?


「師匠、これ入るんですか?」


「ん? 問題ないさね。入れてごらん」


「えぇ!? だって、明らかに錬金釜より大きいですよね!? 蓋が閉まりませんよ?」


「良いから早くやってごらん」


 恐る恐る冷蔵庫の箱を持ち上げて錬金釜に入れると、なぜか入る。


「えっ、なんでっ?」


『はぁっ!? おかしいだろっ!?』


「そんなもんさね」


 ちゃんと蓋まで閉まっちゃったよ!? 錬金釜より大きかったのに、なんでなのー!?


『錬金釜より大きかったよな?』


「うんっ、蓋が閉まらないくらいだったよね。なんで入るんだろうね……」


 蓋の上の魔石に手を置き魔力を流していく。でも流しても流してもなかなかチーン! って鳴らない。


「師匠、これ魔力が凄い要りますね」


「そうさね。必要魔力が多いからなかなか作れないんだよ」


「なるほど」


『カノン、魔力足りなかったら我の魔力を使うと良い』


「うん、ヴァイス。ありがとうね」


 魔力を流している間、やっぱり蓋の中を見ると冷蔵庫がくるくる回ってるのがちょっと面白い。ひたすら魔力を流していると、やっと完成した。



「1回で出来るとはさすがだね」


「これ魔力が足りなかったらどうなるんですか?」


「もちろん失敗さね」


「うわぁ、厳しいですね」


 だから冷蔵庫の値段が高めだったんだね。魔力回復クッキーを食べて回復しよう。これはかなりきつい。ヴァイスの魔力を借りてなんとか出来たくらいだ。師匠の魔力は一体どれだけあるんだろうかと不思議に思うくらいだ。


「ヴァイスは普通のクッキーと魔力回復クッキーとどっちがいい?」


『我は普通のが良いぞ』


 私が魔力を結構借りたと思うのに、ヴァイスは大丈夫そうみたいだ。さすが世界最強! しかし、これは発酵器を作るのが大変そうだ。魔力足りると良いなぁ。


 冷蔵庫のスイッチを入れてみると、庫内が冷えてきた。外側に冷気も漏れている気配はない。風の魔石ってそういう使い方も出来るんだね。

 緑の魔石で身体の周りに膜を作って、赤の魔石か青の魔石を使えば身体の周りだけ温かく出来るんじゃない? それか外気を遮断するだけでも、熱い場所とか寒い場所で使えるんじゃないかな?


「師匠、質問です」


「なんだい?」


「緑の魔石で身体の周りに膜を作ったら、暑さと寒さに対応できませんか?」


「……ふむ。それは便利そうだねぇ。作ってみたらどうだい?」


「はい、やってみます! でも、何で作るのが良いですかね?」


「この指輪なんて良いんじゃないかい」


「はい! 後、赤の魔石とか青の魔石を使えば温かくも涼しくも出来そうですけど、まずは遮断するのが良いですかね?」


「順番にやって行った方がいいんじゃないかい」


 師匠の勧めもあり、まずは外気を遮断する膜を作ろう。酸素がなくなったら困るので、空気の入れ替えは出来るように作らなきゃね。


 まずは指輪に緑の魔石を貼り付けよう。


「カノン、まずは魔力は大丈夫なのかい?」


「はい、さっき魔力回復クッキーを食べたので大丈夫です」


 指輪に魔石を貼り付けて行く。さすがにさっきので少し疲れているのか20分ちょっとかかって魔石を貼り終えた。

 指輪を錬金釜に入れて、蓋を閉めて魔力を流す。チーン! と音がしたので、蓋を開けて指輪を取り出すと、さっきは表面にあった大きな魔石が内側に小さく付いているだけになっている。


 鑑定してみると、遮断の指輪と出ている。なんか見ると恰好良いんだけど、遮断するのが外の気温なあたり微妙な感じがする。


「付けてみてどうだい?」


「師匠、ここ暑くも寒くもないので良く分かりません!」


「そうさね。付けて冷蔵庫開けたらどうだい?」


「あっ、さすが師匠です! それ良いですね」


 そういうとウキウキしながら指輪をして冷蔵庫を開けてみる。さっきは冷気が当たっているのが分かったのに、今回は分からない。

 試しに外してみると、冷気が感じられる。


「師匠、ちゃんと出来てるみたいです!」


「そりゃいいね。野営の時とか良いだろうね」


「温かい方が良いですか?」


「場所によるだろうね」


「そうですね。山の上とか寒い所へ行くには暖かい方が良さそうですしね」


 師匠が言うには、冒険者だったら行く場所によって装備を変えるのは普通らしいので、どちらがあっても重宝するだろうって。緑の魔石だったら小と中サイズがあるから大丈夫だね。


 そろそろお昼だ。お昼ごはんを食べたらお店番に入ろう。


「いらっしゃいませ」


「ん」


(耳っ! 丸いくまみたいな耳がっ! あぁ、ぴこぴこ動いてるー!!)


 思わず少しだけみちゃったけれど、視線をずらして他の仕事をしよう。あんまり見ちゃ失礼だもんね。それにしても、あんまり獣人を街で見かけなかったけれど、いるんだね。

 くまの獣人さんだからか、とても身体が大きくてがっしりしている。大きな盾を持っているからタンクさんなのかな。


「おや、ハンスじゃないか」


「ん」


「ははっ、相変わらず無口だねぇ」


「あのっ、私は師匠の弟子のカノンです。よろしくお願いします」


「ん!」


 ハンスさんはくまの獣人でパーティでタンクをやっているらしい。いつも師匠のポーションと携帯食を買って行っているのだって。


「ハンス、良いのがあるよ」


 師匠はそういうと、クッキーを勧めている。とりあえず味見をして貰おう。クッキーを一枚ハンスさんに渡すと嬉しそうに食べ始めた。

 師匠が言うには、ハンスさんは甘いのが好きらしい。ついでに回復クッキーを勧めると喜んでくれた。今度はハンスさん好みのもう少し甘いお菓子も考えておこうかな。


「しかし、師匠。どうしてハンスさんの言っている事が分かるのですか?」


「なんとなくさね」


 なんとなくで「ん」だけの会話が出来るって師匠はやっぱり凄い!

 私にはお耳のぴこぴこで嬉しいのくらいしか分からなかった。


 ハンスさんはくまの獣人さんだから、やっぱり蜂蜜とか好きなのだろうか。それとも甘くて美味しければいいのかな?


 蜂蜜クッキーでも美味しそうだけど、蜂蜜入りのフィナンシェとかでも良さそうかな。


 ハンスさんは、回復ポーションと、クッキーと回復クッキーを買って帰って行った。

 お客様がいなくなると、お夕飯の準備を始める。今日は市場で買ってきた葉っぱがくるくる巻かれたお野菜にお肉を包んで食べようかな。それとご飯はおにぎりにしよう。


「ん。このお野菜美味しいっ! お肉の味を引き立てて甘みも感じるようになるね」


『うむ。これは旨いぞ。カノン、お代わりだ!』


「これは美味しいねぇ。こんなに美味しい野菜だとは思わなかったよ」


 今日は冷蔵庫が作れたから、明日は発酵器に取り掛かりたいなぁ。美味しいパンが街でも買えるようになったら嬉しいね。

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