第13話 パンを作ろう
朝ごはんを食べ終わってお片付けをしたら、ヴァイスと一緒に錬金部屋へ向かう。
「昨日蒔いたお醤油どうなってるか楽しみだね!」
『あれで本当に育つのか?』
「分からないけれど、師匠が言うんだからきっと大丈夫なんだよ」
部屋に入って、早速プランターを見てみる。
「うわっ!」
『すごいな』
プランターの上に大きな醤油の瓶とみりんの瓶と蓋の付いた味噌の瓶がある。
「本当に大きくなったね……」
『いやいや、おかしいだろ!? なんで瓶が大きくなるんだよっ!』
「錬金術ってやっぱり凄いよね~」
『そうじゃないだろっ!』
容器を準備してから蓋を開けよう。なくなったら困るもんね。それにしても、元の大きさから5倍くらい大きくなってる。小瓶に入れたのに、お店で売られているくらいのサイズになってるんだよ、凄いよね!
「でも、これでお醤油もお味噌も使い放題、やったね!」
『ま、まあ……旨い物が食べられるから良い……のか?』
「ヴァイス、魔法なんだから深く考えちゃダメだよ!」
『いやいやいや、おかしいからなっ!?』
調味料を収穫し終わったら、プランターも綺麗になった。土は一体どこに行ったんだろうなぁ。
今日の分のポーションを作ったら、パンを作ろう! ふっくらふわふわなパンが出来たらいいなぁ。
まずはリンゴとお水とお砂糖を錬金釜に入れて蓋を閉める。蓋の上の魔石に手を置いて魔力を流す。
チーン!
レンジみたいな音がして、酵母が出来たことを知らせてくれる。蓋の上に×マークが出なかったのでちゃんと出来たんだろう。
蓋を開けてみると、瓶に入った酵母液が出来ていた。
ボウルに小麦粉、塩、砂糖と酵母液を少し入れて錬金棒で混ぜる。錬金棒で混ぜるとなぜかすぐに混ざるのが不思議だよね。混ざったら錬金釜に入れて蓋を閉める。
『カノン、今日は何を作ってるのだ?』
「今日はふわふわなパンを作ってるよ~。うまく行くといいんだけれど……」
『ふわふわなパンは旨いのか?』
「うん、私は好きだよ。ふわふわで甘みがあって美味しいんだよ」
『それは楽しみだ!』
錬金釜の蓋の魔石に手を置くと、魔力を流し始める。錬金釜の中がくるくる回っているのをついつい眺めてしまう。
ヴァイスも一緒に眺めていたら、途中で目が回ったみたいでフラフラしてる。
「ふふっ、ヴァイス。大丈夫?」
『だ、大丈夫だ!』
チーン!
相変わらずレンジみたいなチーン! となった一瞬で出来上がるのが凄いよね。今も鳴る直前までパン生地だったのに、鳴った瞬間に丸パンがボウルと籠に山盛りに入っている。
「おぉ、出来たね! 味見してみようか」
『我も食べるぞ!』
1個を手に取り半分こしてヴァイスに渡すと、ヴァイスは小さい手で半分のパンを持ってもぐもぐと食べ始めた。
私も味見してみると、甘みがあって香りの良いパンだった。
「うん、美味しいね」
『カノン、何だこれは!? これがパンなのか? いつも食べているパンと比べ物にならないくらい旨いぞっ!?』
「ふふっ、酵母をパン屋さんに売っても良さそうだよね」
『それが良いかもしれないな』
「どうしたんだい?」
「師匠、今日は錬金釜でパンが出来たので、味見お願いします~」
「は? パンまで出来たのかい?」
師匠に1個パンを渡すと、ふわふわの柔らかいパンに驚いていた。この街で食べられているパンってイーストがないから、ぺったんこの平べったいパンなんだよね。
「カノン、これはなんだいっ!?」
「パンですよ?」
「これがパンだって!? こんなにふわふわなのはどうしてなんだい」
「リンゴとお水で錬金すると、ふわふわになる元が作れるんですよ。それにパンの材料を合わせて発酵させて焼くとこうなります」
「また凄い物を作ったね。このパン、甘みがあって美味しいよ。でも、これを食べちゃうと今までのパンが食べられなくなりそうだね」
「今のパンは、あれはあれで具材を巻くと美味しいですよね~」
師匠もパンが気に入ってくれたみたいで良かった。だけど、このパンはお店には並べられないので、自分達用です。
「師匠、このパンは自分達用ですよ。さすがにパン屋さんが困ってしまうのは良くないので売りません」
「そうさね。それが良いと思うよ」
「でも、パン屋さんに酵母を売るのはどうですか?」
「それは良いね。だけど、それだと毎日大変になると思うけどどうするね?」
「うーん……そうですよね~」
酵母を安定供給出来る良い方法はないかなぁ。そもそも酵母を作る時に温度管理をしないと失敗するときもある。ここが問題だよね。
「あっ、醗酵器があれば良いんだ!」
『はっこうき?』
「カノン、発酵器ってのはなんだい?」
「一定の温度に保つ箱が作れれば温度管理が出来るので、失敗しないで酵母が作れます」
「その酵母が出来れば、このふわふわのパンが出来るんだね?」
「はいっ!」
「ふむ、温度を一定に保つのは大丈夫だと思うよ。ただ、魔石の交換をしないと魔石の魔力がなくなると使えなくなるね」
「なるほど。師匠、冷蔵庫の魔石って交換できるんですか?」
「あぁ、それがあったね。冷蔵庫は魔石の交換が出来るから同じに作ればいいさね」
冷蔵庫も魔石が交換出来るなら、発酵器の魔石も交換が出来るよね。本当は温度調節も欲しいけれど、それも難しいかもしれないからまずは簡単な所から作って改良したら良いかな。
「まずは冷蔵庫が作れないとだね」
「そうですね。師匠教えて下さい!」
まずは冷蔵庫を教えて貰う事になった。だけど、そこでお客様が来たので後でになった。お客様はエルナだった。
「あっ、エルナ。いらっしゃいませ」
「あっ、おばぁちゃん、カノン。こんにちは~」
「エルナ、魔力回復クッキーが出来てるから味見するかい?」
「わぁ、もう出来のっ!? いただきますっ!」
師匠がエルナに魔力回復クッキーを渡してあげていたので、ドキドキで見ちゃいます。
「んっ、美味しい! これどれくらい魔力回復するの?」
「魔力回復ポーション(小)と同じくらいですよ~」
「そんなにっ!? これくださいっ!」
気に入って貰えたようで良かった。1枚食べて多少回復してくれるなら、休憩の時とかにも回復出来そうだよね。
「カノン。これ、美味しいのに魔力も回復しちゃうなんて素敵すぎだよっ」
「喜んで貰えて嬉しいです!」
「そうだ、カノン! この前の回復クッキー、うちのメンバー達も凄く喜んでたよ。美味しいのに回復するの凄いって言ってた!」
「わぁ、それは嬉しい! ありがとう!」
エルナは魔力回復クッキーと回復クッキーを買って帰っていった。やっぱり自分が作った物が喜んで貰えて、リピートして貰えるのはかなり嬉しい。
パンもみんなに喜んで貰えるように、発酵器を頑張って作ろう!
お昼ごはんはさっき作ったふわふわのパンを使って、BLTサンドを作って3人で食べ始めたら、ヴァイスも師匠も凄く気に入ってくれた。
「カノンのご飯は本当に凄いね。どれを食べても美味しくて嬉しいねぇ」
『カノンっ! 我はこのBLTサンド、いくつでも食べられそうなくらい好きだぞ!』
「ふふっ、2人に喜んで貰えて嬉しい!」
午後も少しお店が忙しかったけれど、クッキーもポーションも沢山売れた。また夜にクッキーの追加を作っておかないとヴァイスが食べる分がなくなりそうだったので、多めに作っておいた。
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