第11話 王都ダンジョン
11階に下りると、今度は牛がいるみたい。でも何か変な気がするから鑑定してみると、うさぎゅーと書いてある。
「うさぎゅー? あっ、牛の頭にうさぎの耳が付いてる!」
『確かに付いてるな』
「おかしい、ウサギの耳が付いたらなんでも可愛いと思うのに、牛だと可愛くない!?」
『そこかっ!?』
「いやいや、大事でしょう」
『大事なわけなかろうっ!』
おかしいな、うさぎ耳が付いていたらどんなのでも可愛いくなると思うのに、不思議だねぇ。
ヴァイスがうさぎゅーを倒すと、赤の魔石(小)、沢山の牛肉とうさぎ肉、毛皮、鞣した革が出て来た。
「ヴァイス、大変っ!」
『カノン、どうした!?』
「突っ込みどころがいっぱい!」
『そこなのかっ!?』
「だって、うさぎって耳部分しかなかったのにうさぎ肉が出てるし、牛の皮は鞣してあるし、おかしすぎないっ!?」
『突っ込んでも仕方なかろう?』
「確かにそういう物として捉えるしかないんだけど、突っ込みたいよ? それにヴァイスだって錬金術に突っ込むじゃない」
『あ、あれは仕方なかろう!?』
「これも一緒だよ~」
そんなどうしようもないやり取りをしながらも先に進んで行く。おかげで沢山のお肉が手に入って嬉しい!
「でも、お肉が沢山で嬉しいね!」
『こんなに食べきれないだろうがな』
「それを言ったら、ワイバーンのお肉も山ほどあるんだよ?」
『た、確かにそうだったな』
12階もうさぎゅーだったので、食べきれない程沢山手に入ったね。もう数年先までお肉を買わなくて良いくらい手に入った気がする。
毛皮とか革も手に入ったけれど、何かに使えるのかな? 錬金術にどんな素材が使えるかまだ分かっていないから、全部一度持って帰ろうかな。
13階に下りると、今度は豚だった。でも、なんだか真っ赤な豚なんだよね。鑑定してみると、とまとんって書いてある。
「わっ、今度のは分かりやすい! とまとんだって!」
『なるほどな』
「絶対にトマトと豚肉が出るよね!」
『そうであろうな』
そういうと、とまとんをさくっと倒すヴァイス。ドロップ品は、赤の魔石(小)、沢山のトマトと豚肉、瓶に入ったトマトジュースだった。
「ま、負けた……今回はドロップ品当てた! って思ったのにトマトジュースってなによー!」
『確かにトマトジュースは意外だったな』
「うん」
13、14階はとまとんだったので、きっと15階のボスもそうなんだろうな。
ヴァイスが次々にとまとんを倒してくれるので、私はドロップ品をアイテムボックスに仕舞いながらヴァイスを肩に乗せたまま歩いて行く。階段を見つけて15階に下りると、今回はボス部屋の前に冒険者パーティーはいなかった。
「よし、誰もいないからそのまま行こうか」
『そうだな』
ボス部屋の扉を開けて中に入ると、やっぱり大きなとまとんが待っていた。
「うん、赤くて大きいとちょっと恐怖感あるね」
『そうか? まあ、倒すか』
そう言うと、何かが私の横から飛び出して行った。何かな? と思っていると、目の前の大きなとまとんがドロップ品を落として消えていった。
「相変わらずヴァイスが何をしているのか、全然わからないよ」
『我だからなっ!』
そう言って、えっへん! と胸を張るヴァイスが可愛くて可愛くてっ!
ボスのとまとんのドロップ品は赤の魔石(中)、沢山のトマトと豚肉とトマトジュースだった。
「しかし、この身体のどこにこんなにトマトが?」
『身体の半分がトマトなのか?』
「いやいや、ヴァイス。それはちょっと怖いよ?」
とまとんの身体の半分にトマトがぎっしりはちょっと怖すぎるね。まぁ、美味しく頂くので許してもらおう。
15階のボスを倒したので宝玉に手を置いてから、隣にある魔法陣に乗って1階へ戻ろう。
魔法陣に乗ると、1階のダンジョンに入った所に出て来た。外に出て街へ向かって歩いて行く。
王都の北門で手続きをして貰い街に入ると、とりあえずお店に帰ろう。
「師匠、ただいまです」
『戻ったぞ』
「おや、早かったね。ダンジョンは楽しめたかい?」
「はいっ、楽しかったです!」
まずはお夕飯を作ってからにしよう。今日はお肉を沢山手に入れたから、まずは牛肉を使ってすき焼きにしよう。あっ、でも白菜もネギもないから、トマトすき焼きにしようかな。
具材は玉ねぎ、じゃがいもと、キノコは歩くキノコから出た大きなキノコがあるから、それを入れよう。
ぐつぐつと煮てから食卓へ持って行くと、ご飯をよそってみんなで食べよう。
「今日のご飯も見たことない物だねぇ」
「今日はトマトすき焼きです。お口に合うと良いのですが」
『カノン、美味しい香りがするぞ! 早く食べるぞ』
すき焼きをよそって渡してあげると、すぐに食べ始めた。師匠にも渡すとすぐに食べ始めた。
『旨いっ!!』
「これはトマトの酸味がさっぱりとして美味しいねぇ」
2人とも気に入ったみたいで、ぱくぱく食べている。私も食べると、トマトの酸味がとっても美味しくて、じゃがいもにも味が沁みてて美味しかった。
『カノン、これはどの具材も美味しい味がして美味しいぞ!』
「ふふっ、良かった。沢山食べてね」
「そういえば、何階まで行ってきたんだい?」
「今日は15階まで行って帰って来ました」
「そうなのかい」
「後で、必要な素材を見て貰っていいですか?」
「分かったよ」
師匠に必要な素材を見て貰える事になってとっても助かる。私だけだと、どの素材が必要なのか分からなかったから、ちょっとホッとした。
食べた後、全部の素材を1個ずつ出していく。魔石は全部いるから取っておくことにする。お肉も大量にあるから、少し冒険者ギルドに売って来ようかな。
「また沢山取ってきたもんだね」
「ヴァイスが頑張ってくれましたからね~。おかげで魔石が沢山で嬉しいですっ!」
『また魔石を取りに行けば良い。もっと下の階層へ行けば魔石も良い物が取れるだろう』
「そっか。またお休みの時に行こうね!」
『任せておけ!』
ヴァイスとお休みの日にまたダンジョンへ行く約束をした。今回魔石がほとんど小しか手に入らなかったので、中サイズとか大サイズが欲しいよね!
「それにしても、お前さんは本当に楽しそうに錬金術をするねぇ」
「はいっ、とっても楽しいです!」
錬金術は本当に楽しい。次から次へと作りたい物が出てくるくらいだ。でも、それはお客様が居て喜んでくれるから楽しく進められる事だ。
「私、師匠に弟子入りさせて貰えて本当に嬉しいです。師匠のお陰で喜んで貰えたり、次に作りたい物も見えて来たり本当に楽しいです。これからもよろしくお願いします!」
「ポーション類はないと困るけれど、他は好きな物を作るのが良いと思うよ。お前さんは喜んで貰いたいと思って作る事が出来る。それが一番さね」
師匠に弟子入り出来て本当に良かった。お店でお客様とお話をするのも楽しい。
これからも、もっとみんなの役に立てるものを作っていきたい。そのためには使ってくれる人達の言葉を聞くのはとても大事な事だと思う。
「ヴァイスもありがとうね。お蔭で魔石も沢山取れたし、素材もあるから色々作れるようになって嬉しいよ!」
『戦闘は任せておけ』
「うん、お願いね!」
革とか毛皮は革工房があるから、冒険者ギルドの買い取りに出したり、工房で材料を持ち込んで欲しい物を作って貰う事も出来るんだそうだ。
今の所必要な物はないから、冒険者ギルドに売っても良いし、アイテムボックスに仕舞っておいても良いしどっちでも大丈夫かな。
明日も朝から動く事になるから、そろそろ休もう。明日はまた錬金術とお店だね。
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