第9話 お米の収穫

 お夕飯を食べている時に師匠に栽培について聞いてみる。お米が蒔けたなら他の物でも育てられるのか聞いてみたかったんだよね。


「師匠、栽培って液体はダメですよね?」


「ん? 液体だったら何か小さい入れ物に入れてから植えると良いさね」


「えっ、出来るんですかっ!?」


「あぁ、問題ないよ。ただ、栽培キットは一度使うと使えなくなるのが難点だね」


「なるほど。でも、そうしたら調味料も栽培出来るんですね~。魔石はあるから今度やってみようかな」


 まさか液体も種として蒔けるとか、錬金術凄いね!


「うちにある材料もそこまで多くはないからねぇ」


「一応、白と黄の魔石の中サイズはあるんですけど、他があんまりないんですよね~」


『カノン、だったら我とダンジョンにでも行くか?』


「えっ、ダンジョンなんてあるの!?」


「あぁ、この王都の北西にあるダンジョンは北門から30分ほど歩くとあるらしいねぇ」


『我と行けば倒し放題で素材取り放題だぞ!』


「わわっ、ヴァイス様。ぜひお願いしますっ!」


『クッキーを持って行くのを忘れないようにな!』


「はいっ!」


 どうしよう、ヴァイス。安い、安すぎるよ!? まさかクッキーで動いてくれるなんて可愛すぎるっ。


「ふふっ、ヴァイス。ありがとうね」


「カノン、明後日がお店の定休日だから行ってきたらどうだい?」


「あれ、明後日お休みだったのですね~」


 ここの世界でも1週間は7日なんだそうだ。ここフォルトゥーナでは週休1日なんだって。


「ヴァイス、明後日ダンジョンに行こう~!」


『我に任せておけ!』


 イケメンドラゴンのヴァイスにお任せしてダンジョンを楽しんで来よう~。素材がたっぷりだと嬉しいな。


 お夕飯の後は、錬金釜でまたクッキーを作ろう。ヴァイスもまた錬金釜に張り付いてみている。


『カノン、それは明後日のダンジョン用か?』


「ふふっ、それと明日のお店用だね。ダンジョンってどんな所か楽しみだなぁ」


『我がいるから安心して楽しむと良い』


「ふふっ、ありがとう。頼りにしてるよ!」


 クッキーが出来たらお部屋に帰って錬金術の本を読んだり、ヴァイスとお話をしてから休む。



 次の日も朝ご飯を食べてから午前中は錬金術のお勉強をしよう。錬金部屋に行くと、昨日お米を撒いたプランターに片手に乗るくらいのお米の粒が沢山ある。


「し、師匠っ!? あれ、なんですかー!?」


「ん? ああ、実ったね」


「えっ、実ったってお米大きくなっただけですよね!?」


「何を言ってるんだい。この大きなお米の中に小さいお米が沢山あるんじゃないかい」


「えぇぇぇ?!」


『そ、そうなのかっ!?』


 ヴァイスもびっくりしてるから、やっぱりびっくり錬金術なんだよ、師匠!?


 試しに1個お米を収穫(?)して割ってみると、中からお米がざらざらーっと出て来た。


「し、師匠。もしかして、撒いた1粒からこんなに増えるって事ですか?」


「ああ、そうだね」


「あっ、もしかして容器に入れた液体もこう大きくなるって事ですか!?」


「ああ、もちろんさね」


 お醤油とお味噌とみりん増やしたいです! 日本で調味料を買っていた私、グッジョブです!

 これで安心して日本食が食べられるよー、錬金術さんありがとう。お米を収穫してアイテムボックスに仕舞ったら、プランターの土がなくなった。

 1回しか使えないってこういう事なんだね。プランターに貼り付けていた魔石もなくなっていた。プランターはまたそのまま使えるみたいだから、魔石があれば作れるね。



 今日はまずポーション20本作っちゃおう。私が作ったポーションもお店において貰っているので、自分の作った物が役に立つのがなんだか嬉しい。


 ポーションを作った後は、明日持って行くポーションも作っちゃおうかな。ポーションを作るのに癒し草を刻んでいると、クッキーに入れたらどうかと思い付いた。


「師匠、癒し草入りのクッキーって効果ありますかね~?」


「さあ、どうだろうねえ。分からないから、やってみたらどうだい?」


「そうですね。やってみます!」


『カノン、それは旨いのか?』


「えっ、分からない?」


 そういうと、絶望的な表情になるヴァイス。でも、お砂糖も入っているから多分美味しいよ? 紅茶クッキーとかあるしね。


 癒し草を刻んでから、ボウルに材料を全部入れて錬金棒でまぜまぜしてクッキー生地を作ったら、錬金釜に入れて蓋を閉める。


 またヴァイスは蓋の上に乗って中を見ている。魔石に手を置いて魔力を流すと、錬金釜の中がぐるぐる回り出す。


 チーン!


『やっぱりいつ形が変わるのか全然分からんっ』


「あはは、それを見ていたんだね」


『一瞬で変わるとか気になるだろう!?』


「細かい事を気にしちゃうと、せっかくのもふもふふわふわがなくなりますよ~?」


『な、なんだとっ!?』


 錬金釜の蓋を開けて、ボウルごとクッキーを取り出して味見する。


「あっ、美味しい」


 ヴァイスのお口にも1枚入れてあげると、師匠にも食べて貰う。


「おや、これは美味しいね。しかも回復もするんだね」


「えっ、本当ですか!?」


「錬金したら鑑定する癖を付けなきゃダメさね」


「そうですね、勉強になります」


 確かに、作って食べる前に鑑定しなきゃダメだったね。


 癒し草入りクッキー:ポーション(低級)の効果がある


「低級なんですね~」


「そりゃそうさね。1枚しか食べてないんだからそんなもんさね」


「そういえばそうですよね。ポーション1本分の癒し草でしたしね」


『カノン、これも旨いぞ!』


 癒し草入りクッキーと普通のクッキーを今日のお店に出す事になった。美味しく食べて貰えると良いね。


 お昼ごはんを食べた後は、お店番をする。今はお客様がいない時間なので、ヴァイスとお話をしている。


「ねぇ、ヴァイス。ダンジョンに行くのに装備とか要らないのかな?」


『我がいるから問題なかろう』


「そっか。じゃあ、このままの服で行っちゃうね~」


『鑑定は発動したまま行った方が良いとは思うぞ』


「そうなの?」


『罠がある場合もあるからな』


「な、なるほど」


 ヴァイスと話しをしていたら、お客様がやってきた。


「こんにちはー」


「いらっしゃいませ」


「あれ? 新しい店員さん?」


「はい、師匠に弟子入りしたカノンと言います。よろしくお願いしますね」


「あたしは回復術師をしているエルナっていうの、よろしくね!」


 エルナは回復術師として冒険者パーティに参加しているんだって。ここではいつも魔力回復ポーションを買っていくんだって。


「おや、エルナじゃないかい」


「あっ、おばぁちゃんいたんだね。カノンがいたからどうしたのかと思ったよ~」


「店番は弟子の仕事さね。カノンが作ったクッキー食べるかい?」


「えっ、クッキーって何?」


 エルナにもクッキーを渡してあげると、もぐもぐと食べ始めた。


「これ美味しいっ!! カノンこれも一緒に入れて~」


「カノン、今度魔力が回復するクッキーも作ってみたらどうだい?」


「それは確かに良さそうですね」


「えっ、魔力が回復するクッキーって何!?」


 今日、回復ポーションみたいに回復するクッキーを作った事を話すと、やっぱり魔力が回復するクッキーが欲しいって言われた。


「カノン、凄いね! 美味しいクッキーを食べて、魔力が回復するなんて嬉しすぎるよ~! ぜひ、お願いね」


「うんっ!」


 エルナは魔力回復ポーションと回復クッキーとクッキーを買って帰って行った。

 なんだか、こうやって色々な人と交流が増えて、喜んでくれる事が増えてくると、とても嬉しいし幸せだ。


「ふふっ、なんだか毎日が楽しくて幸せだよ」


『カノン、良かったな』


「うんっ!」


 お店を閉めた後は、お夕飯にしよう。今日はお米が収穫出来たから、収穫したお米を炊いてみよう。

 今日はご飯の上にキャベツの千切り、炒めたワイバーンのお肉を乗せて焼き肉丼にしてみた。


『ん、旨いぞ!』


「今日の丼も美味しいねぇ」


「収穫したお米も美味しいですね。これでお米がなくなる心配がなくなって嬉しいっ」


『うむ。この丼が食べられなくなったら大変な事なのだぞ』


「カノンの料理はどれも美味しくて嬉しいねぇ」


 明日は朝早くからダンジョンに行くから、早めに休む事にした。明日もとっても楽しみだね。

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