第8話 お米の栽培方法は?

 次の日の午前中、師匠に栽培するための錬金術を教えて貰う事になった。師匠もヴァイスもお米が気に入っているから、なくなる前にすぐにやって欲しいみたいです。


 材料はプランター、黄と白の魔石だそうだ。


「師匠、プランターがありません!」


「プランターはそこにあるだろ。魔石はこれを使うと良いさね」


 そういうと、部屋の中にあるアイテムボックスの中からプランターと黄と白の魔石の中サイズを出してくれた。

 ここの部屋にアイテムボックスがあったんだね、全然気が付かなかったよ。


「師匠、もしかしてアイテムボックスも作れるんですか?」


「ん? ああ、作れるよ。そのうち教えてやるよ」


「わぁ、楽しみにしてます! がんばりますっ!」


 まずはお米を栽培するためのプランターを作ります!

 プランターの内側に黄の魔石と白の魔石を魔力で留める作業から始める。丁寧に指をボールペンのようにして魔力を流しながら魔石を留めていく。40~50分掛けてなんとかうまく留めることが出来た。


 錬金釜にプランターを入れると蓋を閉めて魔石に手を置き魔力を流す。


 チーン!


 蓋を開けると、プランターに土が入った状態で出て来た。土は黄の魔石から出たって事なのかな?


「これにお米を撒いてごらん」


「お米だけど、本当に良いんですか?」


「あぁ、構わないよ」


 お米をパラパラっと撒いてみる。お水も日に当てる事もなく育つらしいので、ちょっと部屋の端っこに置いておこう。


「そういえば、師匠。前にマンドラゴンの種を手に入れたんですが、マンドラゴンってどんな物なんですか?」


「そりゃまた恐ろしい物を手に入れたね」


「そ、そんなに恐ろしいんですか!?」


「マンドラゴラの非じゃないらしいからね。大型の魔物ですら倒すか気を失うらしいね」


『あれはダメだ。我でも少し気を失ったぞ』


「えっ!? そ、そこまでなのっ!?」


 お、恐ろしい。世界最強のヴァイスが気を失うってどんだけ恐ろしいのっ!?


「ただ、マンドラゴンの採り方があって、お湯に入れながらゆっくり土を流していけば採取が出来るんだよ」


「そ、そうなんですね。でもちょっと怖いですね」


「きちんとした知識がないと死ぬから気を付けるんだよ」


「はいっ!」


「だけど、マンドラゴンの根っこも耐熱と耐寒ポーションを作るのに必要になるんだよ」


「そうなんですね。そのうち育ててみたいけれど、ちょっと怖いですね」


「その時は私に言ってからにするんだよ」


「はい!」


 カタリーナさんの錬金部屋には錬金術に関する本が沢山ある。これらも自由に読んで良いと許可を貰った。部屋に持って帰っても良いと言って貰ったので、お言葉に甘えて1冊部屋に持って帰らせて貰おう。


 午後のお店番の時もお店の商品を鑑定をしていると、材料とどんな付与が付いているかが分かるから、とっても勉強になるんだよね。

 そして、何を作るか考えるのが凄く楽しくなるんだよね。



 その後は、ポーションを20本作って今日のノルマを達成したら、今日はクッキーを作らせてもらう事にした。


「師匠、錬金釜で食べる物作って良いですか?」


「ああ、ポーションも作れるようになったから構わないけど、一体何を作るんだい?」


「クッキーです。ヴァイスに作ってあげたかったんです」


「そうかい。食べ物を作る時は、まず、この錬金棒で材料を混ぜて、それから錬金釜に入れたら良いよ」


「わぁ、そうなんですね! 楽しみです!」


『カノン、我を呼んだか?』


「ふふっ、まだ出来てないよ? 今からクッキーを作るからちょっと待っててね」


『うむ。我も見ていて良いか?』


 そういうと、錬金釜の近くに飛んで行って、しっぽをゆらゆらさせて待っている。


(か、かわいい~)



 錬金釜にクリーン魔法を掛けて綺麗にしてから、作業を始める。まずは材料をボウルに入れて錬金棒で混ぜてクッキーの生地を作ろう。


『カノンのクリーン魔法が上手くなったな』


「わっ、本当? 嬉しいな~。でも失敗はしなくなったかもしれない」


 ボウルに材料を入れて錬金棒で混ぜると、すぐに全部綺麗に混ざった。まさか順番に入れなくても混ぜられるとは思わなかったけれど、錬金棒って凄いね!

 この錬金棒も錬金道具で師匠が作ったんだそう。


 生地が出来たらボウルを錬金釜に入れて蓋を閉める。

 蓋をパタンと閉めると、ヴァイスが蓋の上に乗って中を覗いている。


(ふふっ、楽しみで仕方ないって感じだね)


 蓋に付いている魔石に手を置き魔力を込める。


『カノン、中が回ってるんだがっ!?』


「そうなんだよね~。くるくる回るの不思議だよね」


 本当にレンジみたいにくるくる回るんだよね。どこでクッキーに変わるのかワクワクして見ながら魔力を流しているんだけど、なかなか変わらない。


 チーン!


 出来上がりを知らせる音と一緒に、錬金釜の中の材料が型抜きされたクッキーに変わった。やっぱり不思議錬金釜なんだよね。


『カノンっ!? なんで今変わったんだっ!?』


「なんでだろうね~。錬金釜って凄いよね!」


『それだけなのかっ!?』


「えっ? 魔法って凄いね?」


 なぜかヴァイスが脱力してる。でもね、蓋の上からどいてくれないとクッキーが取り出せないのよ?


「ヴァイス、クッキーの味見する?」


『するぞっ!』


 ヴァイスに蓋の上からどいてもらうと、錬金釜からクッキーを取り出す。さっきのボウルが綺麗になって、その中に型抜きされたクッキーが沢山入っていた。


『カノン、なんでこうなった!?』


「うーん、錬金釜さんがきっと親切なんだね!」


『違うと思うぞ!』


「だって、便利だし良いと思うんだよ? 錬金釜さん、ありがとう!」


『適応しすぎだっ!』


「もう、ヴァイスったら細かい事を気にし過ぎちゃだめだよ~?」


『我の問題かっ!?』


 はいはいと言いつつ、クッキーを1枚ヴァイスの口に入れてあげたら大人しくなった。


「どれ、出来たのかい?」


「はい、師匠も味見してください」


『カノン、我はこれが好きだ!』


「おや、これは美味しいねぇ」


「わぁ、良かったです!」


 今度容器を買ってきて、色々な所に置いておこうかな。ヴァイスがいつでも食べられるようにしておいてあげよう。


「師匠、錬金釜って便利ですよね~」


「錬金釜を便利道具呼ばわりしたのは、カノンが初めてだと思うがね」


「そうですか? だって、生地を入れたら型抜きも焼くのもやってくれて、完成させてくれるんですよ?」


「そういう物だからね」


「十分すぎる程便利ですよ~。次は何を作るかわくわくしちゃいますね~」


「ははっ、カノンは本当に錬金術の適正が高いからそう思うのかもしれないねぇ。普通は魔力が持たないから、そんなに色々は作れないんだよ」


「そうなんですかっ!?」


『カノンの魔力が多いのもあるし、我の魔力もある程度使えるからな』


「えっ、そうなのっ!?」


 いつの間にかヴァイスの魔力も使えるようになっていたらしい、知らなかったよ。


 それはそうと、クッキーもサクサクっとしてバターの香りがして、とっても美味しいクッキーが出来たんだよ?

 次は何を作るか悩んじゃう! 楽しすぎるっ!


 次は何を作るかわくわく考えていたら、お昼の時間になってしまったので今日はおしまいだ。


 お昼をみんなで美味しく食べたら、午後はお店番だ。


「こんにちは~」


「いらっしゃいませ!」


「おや、とうとう店員さんを雇ったのかい?」


「師匠に弟子入りしたカノンと言います。よろしくお願いします」


「おや、とうとう弟子を取ったのかい、珍しい事もあるもんだね。あたしは宿屋の女将のアルマって言うんだ。よろしくね」


「おや、アルマ。今日は良いのがあるよ」


 師匠がそういうと、私がさっき作ったクッキーを差し出した。


「あら、これはなんだい?」


「カノンが作ったクッキーという物さね」


 アルマさんが口に運ぶと、サクッと良い音が聞こえた。少しすると、アルマさんは美味しいと言ってくれたので、ホッとした。


「カノン、これは美味しいよっ! 少しおくれ」


「はいっ、ありがとうございます!」


 アルマさんはたまに師匠とお話をしに来るらしい。なので、今は師匠とお茶を飲みながらお店の中にあるテーブルセットに座って話し込んでいる。


『カノン、我も食べたいぞ!』


「ふふっ、はいどうぞ」


 私が錬金術で作ったクッキーが喜ばれてかなり嬉しい! 今日の夜にもまたクッキーを作っておこうかな。


 ヴァイスがしっぽをご機嫌でゆらゆらさせながら、クッキーをもぐもぐしているのを見て私もほっこりしてしまう。

 思わずヴァイスのもふもふの背中をなでなでしちゃう。


『そういえば、カノンの錬金術のレベルが上がってるな』


「えっ!? そういえば、レベル気にしてなかったな」


 鑑定してみると、錬金術(省略)LV3になっている。LV5になると省略が使えるようになるんだよね、楽しみだなぁ。

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