第5話 王都アプリフェル

 朝、ヴァイスのもふもふで目覚めるとか、本当に毎日幸せ気分です。

 ささっと準備をして食堂へ向かい、朝ごはんを食べる。やっぱりヴァイスと半分こしてもお腹いっぱいになるくらい量が多かった。

 食べ終わったら、宿を出て南門へ向かう。


 南門に近くなると、沢山馬車が止まっている。近くの人に聞いてみると、王都までの乗合馬車が出るらしいので、それに乗る手続きをして貰い馬車に乗りこむ。


 ヴァイスを膝の上に乗せて出発を待つ。馬車の屋根は付いているけれど、横は空いているので、景色を眺めながら王都まで行けそうだ。


「楽しみだなぁ」


『錬金術師になれると良いな』


「そうだね~。それが一番の目的だもんね」


 少し待っていると、出発の時間になったみたいだ。馬車がゆっくり走り出すと、思ったよりも全然揺れない。外の景色も見られて、とても快適な旅の始まりだった。


 外の景色を見ていると、冒険者達が歩いている所が見えたり、戦っている所が見えたりしてなんだか楽しい。


 途中で休憩を挟みながら馬車に揺られていると、お昼過ぎに王都に着いた。

 王都に入ると、チェニアの街と同じくレンガ造りの街で素敵だったけれど、チェニアの街よりもさらに大きかった。


 街の奥の方にはお城も見えた。あれが王城って事だよね、多分。お城は石造りのお城で恰好良い。


「やっぱり王都だからか大きな街だね。そしてお城が恰好良いよ!」


『そうだな』


 近くの人に聞いてみると、やっぱりこの大通りが交差する所に冒険者ギルド、商業ギルドがあって、近くに色々なギルドが集まっているんだそう。


「まずは錬金術師ギルドに行こう!」


『やっとだな』


「うんっ、とっても楽しみっ!」


 歩いて行くと、レンガ造りの建物にポーションと宝石の絵が描いてある看板が見えた。あれがきっと錬金術師ギルドかな。


 そぉっとギルドのドアを開けると、中は以外と広くて受付のカウンターが並んでいる。ドアの右側の奥の壁には依頼ボードみたいなのが見えた。


 まずは受付カウンターで登録をしよう。


「こんにちは。錬金術師の登録をしたいのですが、お願い出来ますか?」


「こんにちは、錬金術師の登録ですね。こちらの用紙に記入をお願いします」


 名前とか色々書いてお姉さんに渡すと、街に入る時に触ったような宝石を差し出された。手を乗せてみると、キラキラと金色の光が舞ってとても綺麗だった。


「えっ!? す、凄い錬金術に適正があるんですね! これはこの先が楽しみですね」


「そうなんですか?」


「えぇ、資格がある者には金色に光るだけなんですよ。光が舞うのはとても適正が高いという事です」


「わぁ、そうなんですね! 嬉しいですっ!」


 この世界の不思議アイテムは凄いよね。触るだけで分かるなんて本当に不思議。今の金色の光が舞うのは綺麗だったなぁ。


 無事に錬金術師ギルドに登録が出来て、冒険者ギルドのギルドカードに錬金術師のギルドカードも一緒に使えるようになった。


「あの、錬金術の事を勉強するにはどうしたら良いですか?」


「そうですね。なかなか弟子を取って下さらないのですが……カノンさん程適正が高いとなると、フォルトゥーナというお店をやっているカタリーナさんの所で教わると良いと思います」


「ありがとうございます。試しに行ってみます!」


「はい、カタリーナさんはとても腕の良い錬金術師さんなので、頑張ってください! あっ、私はマリーと言います。これからよろしくお願いしますね」


「マリーさん、これからよろしくお願いします!」


 マリーさんにカタリーナさんのお店、フォルトゥーナの場所を聞いてから、錬金術師ギルドを出る。さっそくカタリーナさんのお店に向かおう。


 教えて貰った場所に行くと、フォルトゥーナを見つけた。そぉっと中に入ってみると、中には色々な物が置いてある。

 お店を見回すと、ポーション、装飾品、道具など色々な種類のものがあって驚いた。


(錬金術師ってこんなに色々な物が作れるの!?)


「おや、いらっしゃい。初めてだね」


「あっ、初めまして。カノンと言います、こっちはヴァイスです。よろしくお願いします」


「私はカタリーナだよ」


「あのっ、錬金術師ギルドでこちらを紹介して頂いたのですが、弟子にしてくださいっ!」


「お断りだよ」


(はやっ!?)


「私はのんびりやっていたいのさ。悪いけど他を当たっとくれ」


「えっと、私の適正が高いらしいので、ぜひカタリーナさんにお願いしたいんです! お願いしますっ!」


そういうと、カタリーナさんは少し考え込んでから、口を開いた。


「ふむ、どれくらいなんだい?」


 私の適正で金色の光が踊っていた話をすると、とても驚いた顔をしている。そして、カタリーナさんはさっき使った適性を見る宝石を取り出した。


「見せてごらん」


「はいっ!」


 宝石に手を乗せると、また私の周りに沢山金色の光が踊っているみたいにキラキラ光だした。


「これは、確かにギルドから言われるのが分かるね。よし、弟子入りを認めようじゃないか。ここの2階に空き部屋があるから住むかい?」


「わぁ、まだ泊まる所がなかったので助かりますっ! カタリーナさんお願いしますっ」


「師匠とお呼び」


「はい、師匠!」


 無事にカタリーナさんに弟子入りが出来た。これで錬金術を学ぶ事が出来る、とっても楽しみだ!


「とりあえず、どこまで出来るか見てみようかね」


「はいっ、師匠。よろしくお願いします!」


 錬金部屋に移動して、説明をして貰う。


「まずは機材にクリーン魔法を掛けて綺麗にする」


「えっと、クリーン魔法ってどうやって使うんですか?」


「はっ!? そこからかいっ!?」


 魔法は基本的にイメージで使えるらしい。生活魔法はほぼすべての人が覚えられるらしいので、やってみよう。


 ん~、綺麗にすればいいんだよね。綺麗に洗って除菌すれば良いかな。うん、大体イメージがつかめたかな。


「クリーン!」


 ぱぁっと辺り一面が光って、部屋全体が綺麗になった。


「あれ? なんで??」


「何やってるんだいっ! 部屋を綺麗にしろだなんて言ってないよ。機材にクリーンを掛けな! ついでに魔力を使いすぎだ」


 おかしいな、気合入れすぎちゃったかな?


『カノン、どこを綺麗にするかイメージしたか?』


「あっ、してないや」


 なるほど。そういえば、機材を綺麗にしなきゃなのに、どこを綺麗にするか考えなかったや。

 今度こそ、機材を綺麗に洗って除菌するイメージを固める。


「クリーン!」


 今度はきちんと機材だけを綺麗にすることが出来た。


「ちょっと無駄が多そうだけど、出来たね。後は魔力操作が出来ない事には錬金釜が使えないからね」


 魔力操作は、どれくらい魔力を流すのか、ゆっくり流すのか一気に多く流すのか自分で操作をしないといけないらしい。

 これが意外と難しい。ゆっくり流すのが凄く難しいんだけど、どうしたら良いかなぁ。


 とりあえず、今日はもう夕方になるのでここまで。

 お夕飯を作ろう。今日はグリーンドラゴンのお肉を使って炒め物にして、コンソメは日本にいる時に買ってあったからスープを作ろう。パンは師匠が買っていたのがあるので、それで良いかな。


「おや、どれも美味しいねぇ」


『やっぱりカノンの料理は旨いぞ!』


「ふふっ、良かったです」


 お肉だったけれど、師匠も沢山食べてくれて嬉しい。ヴァイスも沢山食べてくれて嬉しいな。


 この師匠のお店兼家には、お風呂もちゃんと付いていた。師匠が入った後、ヴァイスと一緒にお風呂に入る。


「う~、やっぱりお風呂は気持ちいいね~!」


『我もお風呂気に入ったぞ! とっても気持ちが良いのだ!』


 ヴァイスは洗ってから湯舟にそっと入れてあげると、ぷかぷか浮いてすいすいーっと泳いでいる。

 翼があって飛べるヴァイスだけど、泳げるんだね。ただ、もふもふドラゴンのヴァイスは、ぺったんこになってるけどね。


 これはこれで、可愛いっ。お風呂からあがったら乾かしてあげないとだね。

 ヴァイスを抱っこして2階の部屋に入ると、今日はそのまま休もう。


「ヴァイス、おやすみ」


『カノン、おやすみ』

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