第4話 チェニアの街
鑑定スキルさんを使って、視界に出る矢印を頼りに採取をしながら進んで行く。魔物が出たら、ヴァイスが倒してくれるはずだ。
『あっ、カノン。その先にシルクスパイダーがいるぞ』
「えっ、見ちゃった。あれは無理、あれはいやーっ!!」
思わずちらっと、ちらっと見ちゃったよ!! 何、あの大きいクモ! 人より大きいとかむりむりむりっ!!!
思わず目をぎゅっと瞑ると、ヴァイスが何か動いた気がする。
『カノン、もう大丈夫だぞ』
「ううぅ、本当? もういない?」
『あぁ、大丈夫だ』
涙目になりながら、シルクスパイダーのドロップ品の白の魔石(中)と絹糸を、アイテムボックスに仕舞った。
『カノンはあれはダメなのか?』
「うん、無理。絶対無理! 絶対いやっ!! というか虫はダメなのーっ!」
『そ、そこまでか……』
ヴァイスがかなり引いていたけれど、嫌な物はいやーっ!
『分かった。次からは視界に入る前に仕留めておく』
「さすがヴァイス、イケメンドラゴンですね。素敵です!」
『なんだ、そのイケメンドラゴンっていうのは』
「だって、言う事がとっても恰好良いし、守ってくれるのが素敵なんだよ?」
『そ、そうか』
褒められていると分かって、しっぽがゆらゆらご機嫌に揺れるヴァイス。恰好良いのに可愛いとか、私をどうしたいの!?
その後はシルクスパイダーが見える前に、ヴァイス倒してくれているみたいだ。ヴァイスが手を振るたびに、どこかからアイテムがドロップして降ってくる。本当に助かります!
少し進むと、ヴァイスに止められた。
『カノン、グリーンドラゴンがくる。あいつらは下位のドラゴンで、食欲しかないから倒すぞ』
「う、うん、分かったよ。ヴァイス、お願いね」
グリーンドラゴンが出てくると、意外と大きくてびっくりした。家くらいある羽のないドラゴンだった。
「でかっ!?」
そういう間にもヴァイスは、私の肩の上から手を振って次々と倒していく。手を振ってなんの技が出ているのか、私には全然わからないんだけどね。
「っていうか、多くないっ!?」
『あいつらは群れるんだ。そして食欲しかない!』
「そ、そんなになのね」
『うむ』
その間も次々に襲ってくるグリーンドラゴンを、ヴァイスは小さい身体のまま倒していく。
群れを倒し終わったら、辺り一面魔石とお肉だらけになった。
グリーンドラゴンのドロップ品を、鑑定してから仕舞う。ドロップ品は黄の魔石(中)と、大量のお肉と皮、爪、牙、マンドラゴンの種だった。
グリーンドラゴンのお肉も鑑定スキルさんが言うには美味しいらしいです! 今度食べてみなくては!
「ねぇ、ヴァイス。この種、マンドラゴンの種って書いてあるんだけど、何かな?」
『マンドラゴンか、あれは引き抜くと大変な事になるんだ。だが、確か何かの材料になったはずだ』
「そうなんだ、でも大変な事がちょっと怖いね? マンドラゴラとは違うの?」
『マンドラゴラの比じゃないな』
「えぇぇぇ!? そ、そんなにっ?」
『ああ、あれは危険だ』
(うわぁ、ヴァイスがここまで言うって何かあったんだね、げんなりしてるよ)
「と、とりあえず、アイテムボックスに仕舞っておいて考えようか」
『そうだな』
しかし、何かの材料になるっていうのがまた困るよね。そのうち誰かに聞いてみよう。勝手に植えたりすると絶対に危ないもんね。
気を取り直して、先に進もう。採取したり、ヴァイスが魔物を倒してくれたりして進んで行くと、魔物に会わなくなってきた気がする。
「なんか、魔物が減った?」
『いや、我がいるから逃げているのだろうな』
「なるほど。ここら辺にいるのは、ちゃんと相手を見極められるんだね」
『そうみたいだな』
そのまま歩き進めていると、石造りの壁が見えて来た。もう少し近づくと、大きな木の扉も見えて来た。
「こんにちは。あの、入っても大丈夫ですか?」
「こんにちは。ギルドのカードとか証明書はあるか?」
「すみません、何も持っていなくて……」
「そうか。だったらこの宝石に触ってくれるか?」
そう言われたので、恐る恐る宝石に触ってみると、一瞬白く光った。
「うん、犯罪歴はなしだな。証明書がないと銀貨1枚かかるんだが、大丈夫か?」
「えっと、お金も持ってなくて……」
「それは困ったな。何か換金出来そうな物はないか?」
『カノン、グリーンドラゴンの魔石を出せばいいぞ』
「あっ、魔石でも良いですか?」
「あぁ、魔石で大丈夫だぞ。ってこの魔石は、もしかしてグリーンドラゴンか!?」
「はい、そうです。足りますか?」
「十分すぎる! ちょっと待っててくれ」
そのまま門で待っていると、さっきの門番さんが走って帰ってきてくれた。
「お待たせしました!」
そういうと、銀貨1枚を引いた残りのお金を渡してくれた。わざわざ換金してきてくれるとは思わなかったけれど、とても助かった。
「お手数をお掛けしてすみません。ありがとうございます」
なんとか手続きが終わったので、街の中に入ろう。ついでにお勧めの宿屋も聞いておいた。大体の街に宿屋アプルっていう所があるから、そこなら安心だそうだ。
街に入ると、レンガ造りの家が並んでいて、とても可愛らしい街だった。なんだか街を見て歩くだけでも楽しいかもしれない。
街を歩いて行くと、街の中央にレンガ造りの大きな建物があった。大きな道が交差する中央に冒険者ギルドと商業ギルドがあって分かりやすくて良いね。
とりあえず、冒険者ギルドで錬金術師になるにはどうしたら良いのか聞いてみようかな。
冒険者ギルドに入って、受付のお姉さんに話しかけてみよう。
「こんにちは。少し聞きたい事があるのですが、今大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ。どうしたのかしら?」
「錬金術師になりたいのですが、どこに行けば良いでしょうか?」
「あら、残念だけどチェニアの街には錬金術師ギルドがなくて、王都に行かないとなのよ」
「そうなのですね」
地図も冒険者ギルドで売っていたので、地図を買っておいた。後は、冒険者ギルドのカードがあれば街への出入りが簡単になるんだそう。
冒険者ギルドカードがそのまま錬金術師ギルドのカードにも使えるから、作っておいて損はないと教えてくれたので、ギルドカードを作って貰う事にした。
ギルドカードを作るにも、街の入り口で触ったような宝石を触るとギルドカードを作ってくれた。
カードを貰ってちょっと嬉しくなってしまった。なんだか楽しいね。
「ありがとうございます。まずは王都に向かってみたいと思います」
「えぇ、街の南門の近くから馬車も出てるから、朝に行ってみるといいわよ」
「教えてくれてありがとうございます」
色々と情報を聞けたので、冒険者ギルドを出て宿屋へ向かおう。冒険者ギルドから5件隣に宿屋アプルを見つけた。
宿に入り、手続きをして貰い鍵を貰った。まずはお夕飯を食べちゃおう。
ヴァイスと半分こしてもお腹がいっぱいになるくらい、ボリュームたっぷりのご飯だった。2人前お願いしなくて良かった。
お夕飯を食べたら部屋に向かおう。部屋に入ると、ヴァイスがクリーン魔法を掛けてくれたので、ベッドの上で地図を広げてみよう。
「ここがチェリアの街だよね。この北の山がヴァイスがいた所だね」
『そうだな。ここの南にあるのが王都アプリフェルだな』
「あっ、本当だ。王都って書いてあるね。明日は王都に行ってみようか!」
『そうするか。カノン、馬車はどうするんだ?』
「馬車か~、ちょっと乗ってみたい!」
やっぱり馬車って一度は乗ってみたいじゃない? 揺れるのを覚悟して乗ってみよう!
「楽しそうだし、馬車で行ってみようかな」
『良いぞ』
ヴァイスの許可も貰ったから、明日は馬車に乗ってみよう。わくわくするね!
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