第3話 採取をしながら街へ向かおう

 ヴァイスに崖の下に降ろして貰うと、小さくなったヴァイスを肩に乗せて山を下って行こう。

 採取出来るものがあったら、私の視界に矢印を出してくれるように鑑定スキルを発動させて出発だ。


 崖の下に降ろして貰ったものの、まだ岩場が続いている。それほど高い山だったって事かな?


『カノン、ちょっと止まれ』


「うん、どうしたの?」


『そこにある岩、あれはロックゴーレムだ』


「えっ、どれ? 同じような岩ばっかりだけど?」


 見渡す限り、岩ばかりなんだけど……どれがロックゴーレムなんだろう?

 ヴァイスが手をふりふりっと動かすと、目の前の岩がぽふんぽふん! と消えてアイテムが落ちていく。


「えっ、どういうこと?」


『その目の前のは、ロックゴーレムだったって言う事だ』


「そ、それはなんとか分かった。でも、なんでアイテムが落ちたの?」


『魔物を倒したら、ドロップ品を落とすのは当たり前だろう』


 えっ、どこのゲームの世界なの!? 倒したら、アイテムをドロップして魔物は消えるってことっ!?


「そ、それは……便利だね」


『ふっ、便利か。カノンは面白い事を言うな』


「いやいや、だって倒したらドロップ品に変わるなんてびっくりだよ?」


『そうなのか?』


 ま、まぁでも。魔物の死体とか持ち運ばなくて良いのはとてもとてもありがたい!

 さらに解体しなくてもお肉もドロップするんだって。なんて素敵ファンタジーな世界なの!?


 ロックゴーレムのドロップ品を鑑定してみると、黄の魔石(中)、鉄鉱石だった。

 黄の魔石は錬金素材にもなって、土属性の付与が出来る魔石なんだって。これは売らずに取っておかないとだね!


 ヴァイスが次から次へとロックゴーレムを倒してくれるので、私はどんどんアイテムボックスに仕舞っていく。一撃で倒していくのは、なんだかとても気持ちが良い感じだね。


『カノン、来るぞ!』


「えっ、何が!?」


 そう思った次の瞬間には目の前に大きなドラゴン? が羽ばたいている。でも、このドラゴンは、ヴァイスみたいにもふもふしてない。


(えぇぇぇ!? あ、あれ何ーっ!?)


『カノン、大丈夫だ。任せておけ』


「はいっ!」


(イケメンドラゴンだな。恰好良すぎかと思いますよ! 残念ながら、今は小さい可愛いドラゴンだけどね)


 ヴァイスが飛び上がり、口からなんか出した!? あれはなにー!?


 今ので倒したみたいで、ドラゴンはぽふん! とアイテムをドロップして消えた。


「ヴァイス、今のなにっ!? 口からなんか出たよ!」


『今のはただのブレスだぞ』


「ブレスなんだ。なるほど~」


 ドラゴンブレスなのだね、だけど身体が小さくても強いんだね。本当に最強のドラゴンなんだね、全然危なげなかったもんね。


「所で今のはドラゴン?」


『いや、あれはワイバーンだな』


「そっか。そういえばヴァイスはドラゴンだけど、他のドラゴンが襲ってきたりするの?」


『上位のドラゴンは襲ってはこないが、下位のドラゴンは本能だけだから、襲ってくる』


「それは、倒して良いの?」


『あぁ、問題ないぞ』


「そっか」


 なんだか同族を倒させちゃうのに抵抗があったけれど、問題ないならいいの……かな?


 ワイバーンのドロップ品を鑑定してみると、緑の魔石(大)、沢山のお肉、爪、牙、皮だった。ワイバーンは素材がいっぱいなんだね。


「なんだかワイバーンは素材が沢山出たね」


『捨てる所がないくらい使えるらしいからな』


「そ、そうなんだ」


『ちなみにドラゴンも捨てる所がないほど使えるぞ』


「いやいやいや。ヴァイスがいるのになんかそれは嫌だよ」


『ははっ、カノンらしいな』


 笑いごとじゃないからね!? ヴァイスがいるのに、ドラゴンの素材が~なんて言いたくないからね!


 魔石は、やっぱり強い方が魔石も大きくなるんだろうな。さっきのロックゴーレムは中で、今のワイバーンは大だもんね。

 魔石は錬金素材なので、売らずに取っておくぞ~。何が作れるか凄く楽しみだね!


 その後も、ヴァイスがロックゴーレムを倒したり、襲ってきたワイバーンを倒したりして、魔石も素材も沢山集まった。

 ロックゴーレムなんて、今振り返ると岩が全然ないんだよ!? 岩が沢山あると思ったのは、ほぼほぼ全部ロックゴーレムでした。おかげで、今は岩のほとんどない広場です。どんだけいたのよ!?


『カノン、そろそろお昼が食べたいぞ!』


「ふふっ、作りましょうか!」


 アイテムボックスの中身を考えて、ワイバーンのお肉を炒めてパンと一緒に食べようかな。

 さっきワイバーンのお肉を鑑定した時に、とっても美味しいって書かれてたんだよね!


 やっぱり最初はシンプルに塩胡椒だよね! ワイバーンのお肉を薄切りにして、塩胡椒で味付けをする。


「ヴァイス、お願いがあるんだけど……その……フライパン温めてくれる?」


『任せておけ!』


 フライパンを持って温めてくれるヴァイス。でも、ドラゴンにこんなことさせて良いんだろうかとちょっと不安になるわ。

 ヴァイスはご機嫌でフライパンを温めてくれてるけどね。


 フライパンが温まったら、ワイバーンのお肉を焼いていく。じゅわ~と良い音がして、良い香りもして来た。


『カノン、これはお腹が空くぞ!』


「そうだね、これ物凄く良い香りがするね!」


 お肉が焼けたら、お皿にパンと一緒に乗せて完成。ヴァイスと一緒に食べよう!


「ん~~、美味しいっ!!」


『なんだこれは! ワイバーンは食べた事があったがカノンが作ったのは、今までのより遥かに旨いぞっ!! カノン、お代わりだ!』


「ふふっ、ワイバーンのお肉取っておこうね!」


『そうだな、もう少し狩ってもいいくらいだ!』


「あはは、襲われたら考えましょう! でもすでに沢山のお肉が私のアイテムボックスに入ってるよ?」


 ヴァイスがやる気になっちゃったけれど、ワイバーンはすでに結構な数狩ってるので、お肉も大量にあるんだからね?


「鑑定で美味しいって書いてあったから気になっていたんだけど、今まで食べたどのお肉よりも美味しかったよ~!!」


『我も旨かったぞ!』


 ヴァイスにワイバーンのお肉をパンに挟んで出してあげると、これもまた大喜びだった。でもこれは本当に、いくらでも食べられちゃいそうなくらい美味しかったなぁ。


 お片付けは、ヴァイスにクリーン魔法を使って貰えば、フライパンも一瞬で綺麗になる。なんて素敵!


 ご飯の後は、やっと岩場を抜けて森の中に入る。まさか岩場を通るだけで午前中使うとは思わなかった。どんだけ広いんだろう、この山。


 森の中に入ると、鑑定スキルさんも教えてくれるけれど、ヴァイスも教えてくれる。


『カノン、そこに魔力回復草があるぞ。そっちには治癒草だ』


「わわっ、ちょっと待っててねっ!」


 ヴァイスも鑑定さんも教えてくれてるので、根っこから採取をしよう。これは根っこも使うと良いのだって。どうやって掘ろうかと思っていたら、ヴァイスが土魔法で薬草を掘り起こしてくれた。


「ヴァイス、ありがとう! おかげで傷を付けずに採取出来るよ!」


 根っこから採取しているから、取り過ぎないように気を付けつつ採取をする。


「山の上の方だからなのかな、薬草が沢山あるね」


『それはそうだろうな。ここの山は強い魔物が多いからな』


「えっ!? そ、そうなんだ。ここら辺の森に入ると何が出るの?」


『ここら辺だったら、グリーンドラゴン、シルクスパイダーが多いだろうな』


「そ、それはまたなんだか怖そうなのが出るんだね……」


『まぁ、そんなには襲われないだろう』


 それは襲われることもあるって事なんだね、ヴァイス頼りにしてるよ!

 ヴァイスが倒してくれるはず! ということで、私は鑑定をしながら進もう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る