第2話 街へ向かう前に

 ヴァイスが一緒に居てくれるから、とっても安心できたけれど、これからどうしたら良いかな。


 まずは錬金術師にならなきゃだけど、どこに行ったらいいのかな? それと、この世界のお金ってどんなのだろう?


「ねえ、ヴァイス。錬金術師になるには、どこに行けば良いのかな?」


『だったら王都に行くのがいいだろうな。この山を下ってすぐにあるのがチェニアの街だ。チェニアの街からさらに南に向かうと、王都アプリフェルがあるぞ』


「わぁ、ヴァイス。教えてくれてありがとう。それで、私が持っているのはこのお金なんだけど、使えないよね?」


『そうだな。この世界では、大きい方から白金貨、金貨、大銀貨、銀貨、小銀貨、銅貨になるな。お金がないなら、街へ向かうまでに素材を集めて行くのはどうだ?』


 お金は銀貨だけ大と小があるんだね。10枚で桁が上がっていくのは日本と同じなので分かりやすいかもしれないね。


「素材?」


『魔物の素材、後は薬草なんかだな』


 なるほど。よくゲームや小説なんかでよくある、冒険者ギルドの依頼や買い取りして貰っている感じそのまんまだね。


 そうか、私には鑑定スキルがあるから、それで採取していけば良いってことだね。


「魔物っているんだ? あっ、でも私のスキルで倒せるのないよね!?」


『カノン、何をいっている。我がいるだろう、魔物は我に任せておくといい』


「あっ、そっか。ヴァイスが居てくれるから安心だね。魔物が来たらお願いします!」


『ああ。それに錬金術には魔物の素材も必要だと思うぞ。カノンに出来ない事は、我に任せればいいのだ。その代わり、旨い飯は任せるぞ!』


 ヴァイス、良い事を言ってるのに残念な感じになってるよ。でも、おかげでかなり安心出来た気がする。


「ふふっ、ヴァイス。ありがとう、出来る事は頑張るから魔物はお願いするね。頼りにしてるよ」


『ああ、任せておけ!』


 しかし、ここは崖の上の方だけど、どうやって降りたらいいのだろう? 岩しかなくて、何も採取出来なそうだよね。一応何かに使える物がないか、鑑定スキルを使ってみようかな。


 鑑定スキルで私の視界に矢印とか出してくれないかな? うーん、良く考えてから使ってみようか。

 鑑定スキルを発動させてみると、私の視界の色々な所に矢印が見えるようになった。


「おぉ、これは便利だ!」


 しかし、こんな岩ばかりしかないのに、矢印が出るのはなんでだろう?

 近づいて拾ってみると、なんか思っているより重い。よく見てみると、ミスリル鉱石って書いてある。でも見た目完全に石だけど?


「ねぇ、ヴァイス。これ、ミスリル鉱石って鑑定スキルさんが教えてくれるんだけど、どう見ても岩だよね?」


『ん? あぁ、貸してみろ』


 ヴァイスに手渡すと、もう片方の手の爪でつんっと突いただけで、真っ二つに割れた。


「ちょっ!? ヴァイス、凄いっ!」


『これくらい当たり前であろう、我だからな。それより、中を見てみろ』


 ヴァイスが割ってくれた岩を見てみると、中に金属があった。


「あっ、中がミスリルって事っ!?」


『そうだな。まだあるなら拾っておくと良い。お金にもなるし、錬金術にも使うだろう』


「おぉ、それは良いね! 拾って行こう~」


 そういうと、ヴァイスの近くにあったミスリル鉱石を拾ってアイテムボックスに仕舞っていく。しかし、いっぱいあるけど、なんでだろうね?


「でも、なんでこんなに沢山あるんだろうね?」


『あぁ、それなら多分、ここの場所を作る時に、我がここを掘ったからだろうな』


「なるほど。ん? ってことはここ、ミスリル鉱脈ってこと!?」


『そうかもしれんな。なくなったらまた堀りに来ればいい』


「そ、そうだね。その時はお願いします!」


 ヴァイスが原因だったらしい。ありがたくアイテムボックスに仕舞わせて貰おう。しかし、このミスリル鉱石だけで結構なお金になりそうな気がするんだけど、あんまり気にしないでいた方が良さそうな気がするよね。


 今気が付いたけれど、ヴァイスの下にも何かあるみたい? お腹に隠れているけれど、矢印が出ている。


「ねえ、ヴァイス。お腹の下に何かある?」


『ん? ちょっと待ってろ』


 そういうと、少し動いてくれた。ヴァイスが動いた場所に、とても綺麗な真っ赤な羽があった。


「羽?」


『どれ、見せてみろ。ああ、これは不死鳥の羽だな』


「ふ、不死鳥っ!? いるの!?」


『ああ、いるぞ。少し前にここに来たからその時に落としたのであろう。これも材料になるはずだから、持って行くと良い』


「わわっ、そんな貴重な物を良いの?」


『我にはただの羽なだけだ。カノンが使えるなら使えば良いと思うぞ』


「そっか、ありがとう!」


 不死鳥の羽を手に取ると、鑑定をしてみる。この不死鳥の羽を使うとエリクサーが出来るんだって!


「エリクサーの材料になるんだって。凄いね~」


『そのうち作ってみると良いぞ』


「そうだね。錬金術が出来るようになったら作ってみるね!」



 そろそろ日が暮れてくるから、お夕飯を作ろうかな。お鍋とかを出していると、大変な事に気が付いた。


「あーっ! お鍋があるのに火がない!」


『ん? なんだ、カノン。何か作るのか?』


「うん、ご飯を作ろうと思ったんだけど、無理だったよ。せっかくお鍋とか持ってたのになぁ」


 ヴァイスは少し大きくなると、お鍋を持ってくれた。持ってどうするんだろう?


『これを温めればいいのか?』


「えっ、そのまま温められるの?」


『我だからな。それくらいはすぐに出来る』


 お水はペットボトルがあるし、コンソメも買ってあったから簡単にスープを作ろう。後はハムとレタスをパンに挟んで食べよう。


 鍋に材料を入れると、ヴァイスが両手で持って温めてくれる。少しするとぐつぐつ煮えてきた。


「ねぇ、ヴァイス。それ、熱くないの? 本当に怪我しない?」


『あぁ、これくらい問題ないぞ』


「そっか、良かった。ありがとうね」


 使う前に洗いたいと思ったら、ヴァイスがクリーン魔法っていうのを使ってくれた。一瞬で綺麗になるから魔法って凄いよね!


 ヴァイスのお陰で温かいスープまで飲めるから、とてもありがたい。ヴァイスにもスープをよそってあげて、パンも置いたら一緒に食べよう。


『カノン、このスープ旨いぞ! それにこのパンも旨いのだ!』


「ふふっ、良かった! ヴァイスがスープを温めてくれたから、美味しく作れたよ、ありがとうね」


『我に任せておけ!』


 ヴァイスは偉そうに言うけれど、しっぽが揺れてますよ? 頼ってくれて嬉しい! って感じだろうか。最強のドラゴンなのに、とっても可愛いのです!


「そういえば、今日はどこで寝たら良いかな?」


『カノン、こっちへ来い。我の中なら温かいだろう』


 そういうと、大きくなって私を抱えてくれた。ヴァイスのふわふわの毛がとっても温かくて気持ちが良い。


「うわぁ、ヴァイスのふわふわの毛が気持ちいいっ! 素敵すぎる~」


 思わずもふもふすりすりしちゃうのは仕方ないよね! そして、疲れていたのか、あっという間に眠りに落ちた。



 朝目が覚めると、もふもふに埋もれてて一瞬パニックを起こしかけた。異世界転移した事をちょっと忘れてたよ。

 そして、やっぱり夢じゃなかったんだね~……。


 朝ご飯は、昨日のスープが残っているからそれと、パンで食べちゃおう。アイテムボックスに仕舞っておけば、温かいまま取り出せるのはとても素敵なのです。

 おかげで、朝からお腹ぽかぽかになりました。


「ヴァイス、今日はどこで採取したら良いかな?」


『この崖の下に下りて、採取をしながら街に向かうか?』


「あっ、それは良いね。どんなものがあるか楽しみだなぁ」


『カノン、ここは山の上で、危険な魔物も多いから1人では動くなよ』


「あっ、そういえばそうだった。魔物がいるんだよね。ヴァイスの近くにいるようにするね」


 ヴァイスの背中に乗せて貰うと、ヴァイスが静かに飛び立った。でも、全然風を受けないのはなんでだろう?


「ねぇ、ヴァイス。全然風が来ないんだけど、どうして?」


『我が風魔法でそうしているからだな』


「なるほど。ありがとうね」


 空からの景色を見ていると、山の下の方に街が見えた。あそこがチェニアの街だね、多分。

 すぐに下に下りたので、王都までは分からなかった。


『カノン、ここからは我は小さくなって肩に乗せて貰うぞ』


「えっ、そんなに小さくなれるの!?」


 そういうと、ヴァイスはどんどん小さくなっていった。最終的には昨日より小さくなって、私が抱っこ出来る大きさになった。確かにこの大きさなら、肩に乗せる事も出来るね。


「か、かわいいっ! もうだめっ! ヴァイス、もふもふさせてーっ!」


『な、何をするっ!』


「うふふ、幸せ~」


『わ、我は、世界最強だと言うのに……』


 とりあえず、満足するまでもふらせて貰いました。それから肩に乗せると、ついつい頬ずりしてしまう。やりすぎるたら、しっぽで頭を叩かれた。

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