もふもふドラゴンと素敵な省略錬金術~材料省略して水からポーション作ります!~
猫野 伽羅
第1話 異世界転移
今年から社会人一年生の内田 花音(20歳)、初めての1人暮らしが楽しみすぎる!
今日は近くのショッピングモールで、1人暮らしに必要な物を山ほど買い込むから、ジーンズにロングパーカーにスニーカーという動きやすさを重視した格好で来ている。
お買い物はお鍋に食器類、食材もお米から調味料まで沢山だ。カートに山積みだけど、車で来ているから安心。さすがに大量のお買い物で疲れた……。
おやつにドーナツを3個とアイスティーを買ったから、帰ってからちょっと休憩しよう。買い忘れはないかな?
ドーナツとアイスティーを持ったまま車に向かう。沢山買って、ちょっと楽しかったな~。でも、これからは節約もしなきゃね。
そう思いながらカートを押してショッピングモールを出たら、くらっと立ち眩みを起こした。思わずぎゅっと目を瞑って、立ち眩みが収まるのを待つ。
(なんとか倒れなかったみたいで良かった)
ふぅと息を吐いて目を開けると……切り立った崖が周りに見える。山の上の方にいるみたいだ。
「はっ? ここ、どこ? えっ!? な、なんで山の上なのー!?」
なぜか山の中に立っていて、持っていたカートもどこかへ消えていた。
「あれっ、荷物は? こんな所で何も持ってないのー!?」
ちょ、ちょっと落ち着こうか、私。頬っぺたをつねってみても痛いし、夢から覚める気配もない。そして、頬に当たるちょっとひんやりした風が、夢ではないと言っている。
「ど、どうしたら良いの?」
思わず茫然として座り込んでしまった。これからどうしたら良いんだろう……と思っていたら、突然暗く影がさした。そして、上から声が聞こえてさらにびっくりした。
『どうしたのだ?』
「えっ、誰?」
振り向いて見上げると、巨大なトカゲ? ドラゴン? がいる。
「えっ、食べられる!?」
『我は人は食わんぞ』
「ってしゃべったー!?」
(えっ、これなに? どういう事!?)
『ふむ、そうか。そなたは異世界から落ちて来たのだな』
「えっ? 異世界? 落ちて来た?」
ドラゴンさんが言うには、たまに異世界からこの世界に落とされる人がいるんだそう。
(理解が追い付かないよ、ちょっと待って~!!)
「えっと、ドラゴンさん。ちょっと聞いても良いですか?」
『うむ、良いぞ』
聞くのが怖いけれど、聞かなきゃだよね。異世界から落とされる人がいるって知っているドラゴンさんだったら、きっとどうなるかも知っているはず。
「異世界から落とされた人って、その……帰れる……んですか?」
『帰ったと聞いたことはないな。大体そのままこの地で最後を迎えているな』
「そう……ですか。教えてくれてありがとうございます」
まさか帰れないだなんて……これからどうしたら良いんだろう。途方に暮れていると、ドラゴンさんに声を掛けられた。
『なんと呼べば良い?』
「あっ、私は内田 花音です。カノンって呼んで下さい」
『ふむ、カノンだな』
「貴方は?」
『我に名はない。ふむ、カノンが付けてくれるか?』
「えぇぇ!? そ、そんな恐れ多いですよ! ドラゴンさん……? 所でドラゴンさんなんですか?」
『む? もちろんだ。我はこの世界で最強のドラゴンだ』
うーん……ドラゴンってこう、お話とかだと鱗が綺麗なんだよね? でも、このドラゴンさんは真っ白な毛がふさふさしていて、とてももふもふが気持ちよさそうなドラゴンさんなんだよね。
もふもふなドラゴンさんなんているんだね、知らなかった。
「凄いです! この世界で最強なのですね! あの、少し気持ちが落ち着くまで一緒にいてもいいですか?」
『うむ、良いぞ。カノンはこれからどうするのだ?』
おぉ、なんて安心感! ちょっと頭の整理をする間、一緒にいさせて貰おう。
「うっ……それをどうしようか考えないとなんですよね……どうしたらいいんだろう」
『む? カノンは錬金術師ではないのか?』
「えっ、錬金術師!? どうしてですか?」
『カノンのスキルが錬金術だぞ。鑑定してみると良い』
「えっ、スキル? 鑑定? 私、鑑定なんて出来ませんよ?」
『カノンのスキルに鑑定があるから出来るはずだ。やってみると良い』
えっ、私鑑定なんて出来るの!? そもそもスキルって何だろう?
と、とりあえず、やってみようかな。自分の手の平をじーっと見つめて呟いてみる。
「鑑定」
目の前に半透明のウィンドウが出て来た。ゲームとかで良く見るやつだね。
「わわっ、本当に出来たー!」
名 前:カノン
年 齢:20歳
スキル:鑑定、アイテムボックス(容量無制限、時間停止)、錬金術(省略)LV1
「わぁ、鑑定とアイテムボックスと錬金術だって。楽しそう! でも、この省略って何だろう?」
『それも調べられると思うぞ』
「そうなんだ。やってみよう」
錬金術(省略)の省略を良く見てみると、新しいウィンドウが出て来た。レベルが5上がるごとに、材料か工程を1つ省略する事が出来るんだって。
(ふむ、レベルが上がると良いって事だね!)
次は、アイテムボックスを試してみよう。アイテムボックスを使いたい! と念じてみると、アイテムボックスの中身が頭に浮かんだ。あっ、荷物がアイテムボックスに全部入っている。それに、ドーナツとアイスティーがある。
「あーっ!! お買い物した物が全部入ってるー!!」
『アイテムボックスか』
「はい、こちらに落ちる直前に持っていたものが、全部アイテムボックスに収納されてました。あの、少しお茶にしませんか?」
『うむ、良いだろう』
アイテムボックスから、ドーナツとアイスティーを取り出した。取り出すのも、頭の中で何を出したいかを考えたら取り出せた。
「おぉ、ちょっと楽しい! ドラゴンさんにはちょっとお菓子が小さいですけど、どうぞ」
そういうと、ドラゴンさんは一瞬何かを考えた後、みるみる小さくなっていった。大きなぬいぐるみくらいの、抱きついたら気持ちよさそうなもふもふドラゴンになった。
(か、かわいいっ! 抱っこして、もふもふすりすりしたーいっ!)
『これなら、美味しく食べられそうだ』
「ふふっ、もふもふで可愛いです!」
ドラゴンさんにもドーナツを1つ渡して一緒に食べる。頭がパンクしそうだから、甘いドーナツがいつもより美味しく感じられるね。
『な、なんだ、これは!? 旨いぞっ!!』
「ふふっ、気に入って貰えて良かったです。もう1個食べますか?」
『良いのかっ!?』
しっぽをゆらゆらと揺らしながら、白いもふもふドラゴンさんがドーナツを食べている。
(か、可愛すぎる~!!)
『カノン、これは旨いぞ!』
「これはドーナツって言うんです。でも残念ながら買ったのは3個だったので、それで最後なのですよね」
『そうなのか』
ドラゴンさんのしっぽのゆらゆらがなくなって、しょんぼりした感じになってしまった。あまりにもしょんぼりしている姿に、慌ててつい口から出てしまった。
「えっと、材料があれば作れますよっ」
『なにっ!? カノンはこれを作れるのか!?』
「買ったのと同じには難しいですけど、近い物は作れますよ~」
ドラゴンさんは嬉しそうにしっぽをゆらゆらさせると、爆弾発言をした。
『よし、我もカノンと一緒に行くぞ』
「えぇぇぇ!? い、いいんですかっ!?」
『我がカノンと行くと決めたのだから問題ない。カノン、名前をくれるか?』
「私が付けていいのですか?」
『ああ、そうすればカノンと契約が出来るからな。カノンが生きている間、我がカノンを守ろう』
「えっ、そんな重大な事なんですね!?」
『名前を付けるとはそう言う事だ。だが、契約があれば一緒に居られるからな。それに人の寿命など我からすれば大した事ではないからな』
確かに、ドラゴンって長命って言われるもんね。私の寿命なんてあっという間なんだろうね。でも、世界最強のドラゴンさんに一緒に居て貰えたら、安心感は半端ないよね。
「えっと、ありがとうござます。お言葉に甘えちゃいますね」
ドラゴンさんが良いって言ってくれているのだから、お言葉に甘えてしまおう。
しかし、世界最強のドラゴンさんに名前を付けるなんて、ドキドキするね。白くて素敵なドラゴンさんなので、何がいいかな。
「あっ! ヴァイスってどうかな?」
『我が名はヴァイス。カノンが生きている間、ずっと傍に居て守ると誓おう!』
「えへへ、ヴァイスが居てくれたら安心だよ。ありがとう」
異世界に落とされて不安だったけど、ヴァイスが一緒に居てくれるなら凄く安心だね。だって、世界最強なんだよ! これ以上ない安心感だよ。
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