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第47話 一攻

カカッ

　黒いオーラを纏うゴブリン…ビーンのパンチを、ゴブリンリーダーのエウロスは小太刀で受ける。小太刀の扱い方は、桐谷が教えたものだ。

『どうシた。アリソンのやろーガ泣いてるゼ！』

　エウロスが己の甥が兄よりも遥かに弱く、ビーンは悲しみ4割嗜虐心6割で言う。

　片手には転がっていた(死んでいたと言っていない)ゴブリンの肉を持って、たまに齧っている。

　この生物を魔力に変える魔法は、食った個体をまた摂取しなければ1分と持たないからだ。

『おじさん！なんでそんなになったんだ！』

『は！俺にはナ、無能な兄貴には無イ才能があルんだ！それヲ活かすのは当然だロう！』

カン！

　エウロスの小太刀が弾かれる音。

『あ！』

『もらったア！』

　その隙に致命の一撃が迫るが…

ガッ！

「ぬうう！」

　それを阻む人あり。

「お主が何をほざいているのか分からぬが…」

　彼はたった一本の木刀で、ステータス的には遥かに格上の力を受け流す。

「たまたま他より少し優れているだけで、他人を見下す者の匂いがするぞ。醜悪な匂いがな」

『ああ？ほザけぇ！！』

　その男…桐谷の言葉は通じないが、イントネーションで禁句を言われた分かったのだろう。ビーンは激昂した。

「わしはな、醜悪な天才は大嫌いで、努力する凡才が大好きなんじゃ。わしがそうだったからの」

「かかってこい。その醜い性根を叩き直してくれる！」

ダダダ！

　勢いよく飛び出した俺は、ビーンのいるゴブリン軍左翼へと駆け出した。

　場所が分かるのは黒いオーラが立ち上っているからだ。

　『スピードアシスト』『ムーブアシスト』を掛ける。

「おら！」

　『跳躍』を使い地面を跳ね、適当なゴブリンの顔を踏む。

　ゴブリンの服は一瞬だけ的に困惑を与える。そして治った時には既に走り去っている。

　かって日本のゲームの頂点に数えられたあるゲームの主人公のように、不幸なゴブリンの顔を踏みながら進む。火のつく御札も撒いておく。

「っとお！」

　矢を数発受けながらもあと少しで黒いオーラという時に、ゴブリンの海からたけのこのように槍が生えてきた。

　適当なゴブリンを踏んでブレーキをかけ、足を曲げて地面に着地する。

　そして地面に手を付き後ろを向く。

　そこには周りより頭一つ大きいゴブリンがいた。

　こいつの槍術は、グレイウルフキングの所にいた老ゴブリンと同じ流派だな。

　そしてここで仕留めないと不味い気がする。

「邪魔だ！」

　俺は『ダッシュ』『アクセルキック』『スパイキーキック』を使い右で『龍爪』を放つ。

「ゴォ！」

　ゴブリンは上手いこと槍を合わせてきたが…

「はあ！」

　俺は右足をわざと空振らせて地面につけ、

ガコッ！

　身体の中心を軸に回転して、ゴブリンの槍を避けながら上からの蹴り降ろしを加えた。(これは本来は大型のモンスターに対して上を取るための技だ)

「グォ…」

　仕留めていないがこれで良い。

　俺はすぐに黒いオーラへ向かった。舜単位で遅れて槍が押し寄せる。あそこにいるとハリネズミになってたぜ。

　黒いオーラの根本、すなわちビーンというゴブリンのいる所は、本隊と少し離れた場所で、ゴブリンリーダーと桐の爺さんを相手に戦っていた。

　あの二人が防戦一方とはたまげた。

　俺は『パワーアシスト』『ビルドアップ』を掛けながらそう思った。