第46話 転勢

タッタッタ…ザザッ

 ふう、やっと着いた。

 距離にして10キロメートルほどか、草原に足を取られてずいぶんと時間をロスしたな。都会では草原を走ることもないし、社会人になってからなまってる。

 それと体力も大きく消耗した。戦闘を見ながら木陰で体力を回復しよう。

 櫓の戦闘は、練度や装備、そしてプレイヤーの死ぬ事はないという恐怖心の無さで防衛軍が有利か。

 櫓の3階ではユウトが指示を出している。


 俺は酸素を回すため、思考を刺激のない青空へと向けた。



「サクマ、囮部隊の編成はどうだ」

「うん、もう編成は完了したからあと3分もあれば出撃できるよ」

 こうしてタメで話せるのはサクマだけです。


 戦場を見ると、中央はハルカが指揮を取って有利に展開し、自軍左翼は斜面を活かして遅滞に努め、右翼では桐谷さんやゴブリンリーダーのエウロスさんとその部下達が敵のゴブリンキング(ビーンというらしいです)と互角に戦っています。右翼は木々でセドナの射線に入らないんですよね


「…サクマ、僕が囮部隊の指揮を取りよ」

「うん…ええ!?」

「囮部隊はリスクが大きいので幹部が行かなくては士気が下るからね。それにエウロスさんも出てるんだし」

「え…わかったよ。気をつけてね」

「指示を頼むよ」

 僕は2階から飛び降ります。グレイウルフキング討伐戦を思い出しますね。



 ふう、疲れも取れた。

 丘の方で囮が動いているから、それに合わせて打って出よう

 どつすっかな〜


「ゲキャ!?」

 しまった!?見つかったか。

 敵は一体だが位置がばれてしまう…


「シィーシー!」

 なんだ?


「もしかして…逃げてきたのか?」

 俺は身振り手振りを交えてなんとか伝える。


「ゴブ!」

 正解のようだ。


「そうだ、お前の服をくれ。代わりに…俺の服をやろう」

 多少なりとも偽装になるだろう。


「ゴブゥ…ギャ!」

 うし、交渉成立!


 うへえ、くせ!

 まあ贅沢は言ってられない。囮も本格的に動き出したようなので、俺も『ダッシュ』を使い木の陰から走り出した。

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