第34話 剣の舞1

 俺はゴブリンについての事をできる限り詳しく話した。


「…やはりですか。深層のゴブリンの拠点がある可能性はあったのですが、これで確定しました」

 ユウトの答えだ。


「しかし…場所がわからないぞ、どうする」

「セドナ」

「はい。まずタツ様の話から推測すると拠点は櫓以南にあります。また櫓が見えないのであればグレイウルフ達の駆け下りてきた丘もしくは西方の丘陵地帯の奥にあるでしょう。しかし櫓の近くの丘はすでに登られていて、その先は草原と森が続きます。ファストから丘陵地帯は7キロほどです」

「7キロ…遠いけど一晩で行けそうな距離だね」

 サクマが入り込んでくる。


 つまりは奇襲をかけられる可能性があるということだ。

 こんな時地図でもあれば良いのだが…


「セドナ、少し見に行こう」

「はい、マスター」

 どうやら山肌から確認しに行くようだ。


「それでは氷龍さんさようなら」

「そうだユウトよ」

「なんですか?」

「我は異世界の者達に、直接力を貸してはいけない事になっておる。運営からの指示だ」

 そうか、氷龍さんが力を貸したら面白く無くなるからな。


「そうですか…分かりました」

「分かればよろしい」



 ユウトとセドナは帰り、ハルカとサクマは残った。


「タツさん、基礎はもういいです。後は自分で鍛錬できるでしょう」

「本当か!アイアス」

「ええ、お疲れさまでした」

「おう、ありがとな!」

 アイアスから基礎の合格点を貰った。やったぜ。

 サクマはあと少しのようだ。


「タツ、お前とはまだ戦ったことがなかったな」

 そう言ってきたのはハルカだ。


「いよし、やるか!」

「おう!」

「タツ!がんばって!」


 互いに距離を取り、準備を整える。

 俺は小太刀を取り出して構え、懐に火のつく御札と棒手裏剣を潜ませる。メイスはいらないな、隅においておこう。『マジックアシスト』『パワーアシスト』『スピードアシスト』『ムーブアシスト』を掛けると準備万端だ。

 ハルカは木刀の【無白】を少し斜に構える。それだけだが、刀に全てを込めるという気迫が伝わってくる。これは剣術・・の感覚だ。


 アイアスの開始の声と共に少しにじみよる。

 ハルカは一撃タイプなのだろうか、あまり身体を動かさないで対応する。


「ふっ!」

 俺は左の小太刀でジョブを打つ。いなされる


「はあ!」

 反撃の突き!危ねえなあ!

 俺は右の小太刀でいなす。

 そして右の『龍爪』


「てあ!」

…っ!

 ハルカは半歩動いて蹴りを外し、斜めに斬ってきた!

 これは受けきれないと感じた俺は、左足を軸に右足を後ろに引く。


ブオン!

 少し反らした俺の前を、【無白】が音を立てて通り過ぎた。木刀ってレベルじゃねえぞ!

 俺は空いた脇腹に左の小太刀を打つ。

 しかし避けられる。


「はあ!」

「ぅら!」

 素早い切り返しを右の小太刀で受ける。


カン!

 小太刀越しに手にも衝撃が走る。

 俺は左の小太刀を捨て、鍔迫り合いに持ち込んだ。


「案外やるじゃねえか」

「貴様も…な!」

 鍔迫り合いを弾かれた。

 こういう混ぜものなしの戦いは久しぶりたぜ!

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