第29話 鬼山

 西の草原のゴブリンは、今のところ浅層と深層の2種類がいる。

 浅層のゴブリンはホーンラビットや川魚、草、木の実や木の皮などを食べている。

 対して深層のゴブリンはグレイウルフやオーク、浅層のゴブリンなども食べているらしい。


 当然浅層のゴブリンは肉付きが悪く背が低い。深層のゴブリンはその逆だ。(それでも成長期のガキぐらいらしい)

 NPCによると北のゴブリンもいて、痩せた北部で、川の近くに畑を作り農業をしたり、非公式だが村落の人間と物々交換もしているらしい…これは蛇足か。


 しかし元は同じゴブリンなのになぜ差が出るのかというと、簡単な話で深層のゴブリンは群れるのだ。

 浅層のゴブリンは普段単体で狩りをするが、深層のゴブリンは3-5体で狩りをする。

 なぜ群れたのかといえば深層は森や丘が少なく弱い獲物がいないからだと考えられている。


 などと攻略サイトを思い出しながらゴブリンと戦う。

 装備は草を編んだ紐を手に巻きつけているだけだ。

 こいつを倒すのは簡単だが、しばらく投げ槍からの盾になってもらおう。


 そんな深層のゴブリンだが、グレイウルフキングがいなくなってから深層と浅層の間(中層と呼ばれていて、つまりは今俺がいる所)に出てきているらしい。

 深層のゴブリンが持つもう一つの特徴として、弓持ちゴブリンがいるらしい。

 それを考えて周囲を警戒していたのだが…いないようだな。

 ならばとっとと終わらせるか。


「はっ!」

 俺はゴブリンの拳を小太刀で少し強引に強引に押し返した。

 弁慶の泣き所に右の『龍爪』、からの腹に右サイドキック、からの顔面に左膝ぁ!


「ゥグ!」

 しかし俺は止まらない。

 ゴブリンが投げてきた槍を避け、『ダッシュ』を使い距離を詰める。

 もう一発避け、ハイキッカーのスキル『トリプルキック』を発動する。


 飛び蹴り。大柄なゴブリンは倒れない。

 左ミドル回し蹴り、頭に右のハイキック。

 さらに飛びかかってきた所をカウンターにスタンプ!


「グゥ!」

 比較的大柄なゴブリンもこれはこたえ、地面に崩れ落ちた。


「ゴブゥ!」

 もう1体は逃げ出した。

 このままただ追いかけてもいいが…そうだな、泳がせて奴らの行動拠点を探るか。

 群れる相手がいなくなったのなら行動拠点に戻るだろう。



 案の定、奴は拠点に帰ってきた。

 草原の南東、ファストから見て南西の森の中に作られたそれは大樹に倒木がもたれかかった場所にあり、木の皮で入り口を隠している。

 切り株が目立つ土地だ。

 周囲は常に見張りのゴブリンやその他数名のゴブリン達がウロウロしている。


(…いや、違うな)

 もっと大きい拠点があるはずだ。

そう思った俺はその拠点から出た人力車のようなもの(動力はオーク、180センチほどもある豚と人を足して2で割ったような魔物だ)の後をつけた。



 人力車はおそらく北西に向かい、大きな拠点についた。

 拠点は草原の小さな丘の上にあった。


 家はないが、木の柱に皮を掛けた物がある。

 周囲にはグレイウルフ対策か壕が3箇所の入り口を除いて掘られており、一番大きい反対側の入り口にはオークが2体、他の入り口にも1体ずつ配置されている。。

 低いながら木の柵もあり、時代が石器時代から弥生時代に進んだ感じだ。


(これは…危険だな)

 俺は後で場所を特定するため、ランドマークとなるものを探した。


(人影は見えない。櫓もだ。櫓に比べて北の山脈は遠いか…)

 そう考えていると…


グザ!

 俺が本能的に転がると、さっきまでいた場所にが突き刺さった!


「グギャギャッ!」

 そこにいたのはオークよりも背の高いゴブリンだ。つまりは俺と同じぐらい…っ!

 しかも素早いぞ!

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