第11話 作戦会議
俺は作戦会議に出るために再び<アイスクリーム>の本拠地に来ていた。
「タツ。おはよう」
サクマが話しかけてくる。
「おはようサクマ」
「早速なんだけどね、これ、新しい小太刀だよ」
「早いな。それに手に馴染む」
材質は変わらないが、握りなどの形状が俺用にアレンジされている。
それに少し厚くて短い。
「それと、はいこれグレイウルフキング討伐の資料だよ」
そう言って3枚程度の紙の束を渡してきた。
内容は図や表が使われていて、わかりやすかった。
「これは誰が作ったんだ?」
「セドナだよ。タツはまだ会ったこと無いよね」
「ああ、だけど攻略サイトで見たぜ」
セドナさんは<アイスクリーム>の作戦担当の少女だ。天才的な頭脳を持っていて、時に冷酷だが的確な指示を行うらしい。彼女がいなければ<アイスクリーム>はただの仲良しギルドで終わっていただろうとのこと。
「あー、あれはまあ正しいんだけどね。でもセドナは普通の女の子だから、そこんところ注意してね」
「わかった」
やはりそういった所は当事者でないと分からないんだな。
「それじゃ、また後で!」
サクマも忙しいのだろう。すぐにどこかへ行ってしまった。
俺は資料に目を通す。大雑把な作戦はこうだ
1,軍から精鋭を選抜し、残りは周囲の掃討と後方部隊の護衛を行う(*1)(*2)(*3)(*4)
*1 軽歩兵(剣士など)は3人一組で柔軟かつ慎重に行動し、敵の撹乱や消耗を図る
*2 重歩兵(盾士など)は3列横隊を組み、敵と衝突する。その後ろに弓士や聖職者、付与師を配置する。これを3部隊作り包囲する
*3 後方部隊は補給や櫓からの観測、指揮を行う
*4 従魔師や走者は伝令を行う
2,数十人規模の精鋭部隊はハルカが率いてグレイウルフキングを討伐する
単純な作戦だ。しかし数ではこちらが勝っているので効果的だろう。(こちらは1000人以上で、向こうは800体程度らしい)
戦場は向こうの狩り場とのこと。軽歩兵部隊で時間を稼いで重歩兵部隊で包囲するらしい。
おっと、もう時間だ。
壁の時計は9時45分を示している。会議は10時からだから、もう行かないくては。
2階の控室ではハルカさんと、サクマが先にいた。すぐにユウト君も来た。
「さあ、行こうか」
会議室は会社で見るようなものだった。床は板張りだが壁は白く塗られ真ん中に長方形の大きな机がある。
「俺はどこに座ったらいい?」
「サクマの隣に座ってください」
言われたとおりに座る。司会席にはユウト君と少女(セドナさん)が座り、机の周りには俺たちしか座っていない。
しかし、すぐに人が大勢入ってきた。
会議が始まる。
まずは挨拶だ。
「<アイスクリーム>ギルドマスターのユウキです」
………
「同じく<アイスクリーム>のタツです」
………
「<アカデミー>ギルドマスターのぬるぽです」
「<腐人部>のギルドマスターのラインです」
「<ファニー製造>のギルドマスター、ファニー」
………
………
自己紹介も終わり、注意点に入る。
「タツさんによる情報提供のもと、昨日調査したところグレイウルフキングのもとで600体程度のゴブリンがいることがわかりました」
まわりがざわつく。
当然だ。敵はこちらより少ないという前提が壊れるのだから。
結局、募集を増やして予備戦力にすることで話が決まった。
その後は作戦を確認して終わった。
会議が終わったあと
「タツさん」
「ユウト君。どうしたんだ?」
「僕と勝負しましょう」
「はい?」
なんでも、俺の実力を見たいという意見がギルド内や会議のメンバーから多いらしい。
それはそうだろう。なにせ昨日入ったばかりの俺が会議に呼ばれたのだから。
俺とユウトは野外演習場に来た。まわりには多くのギルドメンバーが集まり、会議室からは先程のメンバーが見下ろしている。
俺とユウトは距離を取って向かい合う。
俺は『ビルドアップ』と『パワーアシスト』を掛ける。
「3」
頬を思いきり叩く。俺のルーティンだ。
「2」
小太刀を取り出す。改めていい小太刀だと感じる。
「ヨーイ」
構えを取る。
バン!
ピストルの音が響く。
向こうもまずは様子を見ているようだ。
左に持った円盾を前にしてジリジリと近寄ってくる。
「はっ!」
俺が試しに円盾に『龍爪』を放つ。硬い。
「やっ!」
しかもカウンターで袈裟斬りを返してきた。ユウキは木刀に合わせてくれている。
俺は2本の小太刀で弾く。
ガッ!
弾いた木刀を落とそうと右の小太刀で狙うが、その隙に円盾の体当たりを食らう。
よろめいた所に木刀が降るが、避けてユウトの右側に回り込む。
「ふっ!」
空いた側面に左の回し蹴りを放つが、サイドステップで避けられた。
ユウキ、やはり強いな。俺は『ヒール』を掛けて仕切り直した。
俺は今度はユウキの視界が遮られる左側に回り込む。
ユウキは常に盾を向けてくる。見えないのに機敏な動きをする。耳がいいのだろうか。
「はっ!」
俺は下手投げで右の小太刀を投げる。
ユウキはすぐに反応して切り替えしてくるが、もちろん俺はいない。
「ほお!」
その隙に俺は近づき、右拳に『ヒール』を掛けながら円盾を殴る。
もちろんただ殴るだけではない。少し齧っただけだが発勁という技術を使う。
ユウトがよろめく!
俺はその隙にたたみかける!密かに用意した棒手裏剣に火のつく御札を巻いたものを投げた。
ユウトは少し大げさに避ける。
棒手裏剣が燃え上がる。
そのまましばらく睨み合っていたが…
ポツ、ポツ、
雨が降ってきてしまった。
炎が消える。
しらけた。
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