第12話 急戦

 俺とユウトは会議室に戻ってきた。


「タツ君、ユウト君、おかえり」

 話しかけてきたのはぬるぽ氏だった。


「どうです、タツさんが強いとわかったでしよう?」

「ああ、疑って悪かったね。すまない」

 どうやら事の始まりはぬるぽ氏らしい。


「別にいい。ぱっと出の新人は注目されて当然だ」

「そうかい、ありがとう」

 まあ、俺の実力を示せたしいいか。


 こうして、作戦会議が終わった。


 今のレベルを確認すると、

メインクラス 聖職者 レベル16

サブクラス1 ウォーリアー レベル12

サブクラス2 エンチャンター レベル10

サブクラス3 ランナー レベル7

合計 レベル44

だった。

 やはりランナーはレベルが低いのでよく上がるな。


 習得した魔法やスキルが多い。

 魔法は『ブレス』と『スピードアシスト』

 『ブレス』は『ホーリークローズ』の効果を少し弱くして持続時間を長くしたようなものらしい。

 『スピードアシスト』は体感時間がゆっくりになるとのこと。強いな。


 スキルは『バランスアップ』と『ダッシュ』

 『バランスアップ』は体幹が強化される。システム的にはそれだけだが技の威力が大きく上がることだろう。

 『ダッシュ』は8秒間走る速度が上がる。そういえば人間が全力で走れるのは、それぐらいだと聞いたことがある。再使用には発動してから30秒の時間が必要らしい。



「タツ」

「なんだ、サクマ」

「タツって将棋指せる?」

「少しだけだが、指すか?」

 どうせ室内練習場は満員だろう。


 それにしても将棋か。ここ数年やっていないな。

 対局よろしくお願いします。


「サクマは急戦型か」

「そういうタツは持久戦型だね」

「いいかサクマ。まず強くなるには生き残らなくちゃならない。

 んで生き残るためには慎重でないとだめなんだ」

 俺の経験則だがな。


「…タツってユウトと同じこと言うんだね」

「そうか?そういえばユウトとはやらないのか」

「ユウトは忙しいし、セドナには何やっても勝てないから」

 そうなのか。


「あぁーまーけーたー」

「ふう。勝った」

 サクマは強く途中主導権を握られたが、なんとか主導権を握り返して勝てた。


「もっかい指そう!」

「よし、どこからでもかかってこい」


 こんな感じで一日が終了した。



 翌日。色とりどりのプレイヤーたちが行軍する。

 上空から見ればさぞ某チョコレート菓子みたいに見えるだろう。


 昨日の雨で地面は少しぬかるんでいて速さ重視のグレイウルフ達には不利だろう。


 予定では、グレイウルフの現在の狩り場手前で拠点を作る予定だ。

 しかし…


「おい!あの丘を見ろ!」


 そこには1000を軽く越すグレイウルフとゴブリンが丘から駆け下りてきていた。

 丘の上には一際大きなグレイウルフキングが見下ろしている。


「軽歩兵は重歩兵が隊列を整える時間を稼げ!」

 ユウトが指示を出す。


 了解!



 勢いよく飛び出す。

 ぬかるんでいて走りにくいが、それは向こうも同じ!

 走りながら『ビルドアップ』と『パワーアシスト』、『スピードアシスト』を掛ける。


 ホークアローを長弓に変形させ1頭のグレイウルフに矢を放つ。

 矢はグレイウルフの右前脚に突き刺さり勢いよく転倒して後続に押しつぶされた。


 別のグレイウルフが突っ込んでくる。


「…ふっ!」

 弓をしまった俺は、背負い投げの要領で地面に叩きつけ小太刀でとどめを刺す。


 首尾良く2頭を倒したが、俺の仕事は回復だ。

 俺は『ダッシュ』を使い最前線に駆けた…



「マスター。現在の敵はグレイウルフが550。槍持ちゴブリンが310。グレイウルフに乗ったゴブリンが50の計50 の計790です。

 対してこちらは重歩兵が270。軽歩兵が210。後衛が200。補給部隊が130。予備戦力が180の計990です」

「ありがとう。セドナ」

 僕が今いるのは櫓の上です。

 予定では5階建てでしたけれど地面がぬかるんでいるのと時間がなかったので3階建てになりました。


 戦況が落ち着いてきたのでセドナに改めて被害を確認してもらいました。

 元々400人弱いた軽歩兵は、半分の210人になってしまいましたが補給部隊と後衛に損害がなくてよかったです。

 重歩兵に損害が出たのは転んで立ち上がれなかったから。予備戦力に損害が出たのは足がすくんで逃げ遅れたからでしょう。


 それから精鋭部隊は戦場を迂回してグレイウルフキングに迫っています。


 セドナは観察と同時に強い個体を弓で狙撃しています。


「マスター。タツさんの報告にあったゴブリンが見当たりません」

 妙です。


「ラインさん!後方に伏兵がいないか確認してください。」

「…!伏兵!騎兵50に歩兵150!件のゴブリンが率いています!」

「…僕が出ます。予備戦力も総動員させろ!補給部隊は退避!後衛も少し下がれ!」

 下のみんなに聞こえるように大声を出します。

 北側は草が多いので天候の利を活かし辛く、数では負けているので少し不利です!


 階段を降りる時間すらも惜しいので2階から飛び降ります。泥がはねますが気にしません。

 僕の戦いの始まりです!

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