第9話 <アイスクリーム>

 話してみるとユウト君は少し大人びているけど普通の少年だった。


「じゃあギルド加入申請を送るぜ」

「はい、ありがとうございます」

 ユウト君が承諾したので俺は<アイスクリーム>の一員になった。


「そうだ、このギルドのトップはユウト君だけど、ナンバーツーは誰なんだ?」

「あなたを案内した彼女です」

 俺は後ろを振り向く。


「ハルカだ。よろしく」

「おう、よろしく」

 彼女はハルカというらしい。

 強いと思っていたがサクマ以上だったとは。


「それで、ナンバースリーがサクマです」

「生産者なのに?」

「むしろ生産者だから手札が豊富なんです。彼は昔から器用なので」

 なるほど。

 ユウト君とサクマはだいぶ親しそうだ


「そうでした。タツさん。グレイウルフキングと戦った感想をお聴きしたいのでした。なかなか姿を表さなくて、まだまともなデータがないんですよ」

 俺を呼んだのはそのためか。


「すぐにやられたから、そこまで詳しくはないがいいか?」

「ええ、お願いします」


「まずは俺が感じた限りだと、アレは足が早くて、デカくて、パワーがあるけど、結局はただのグレイウルフだ。それに突進には溜めが必要だったし走り出しはそこまで速くはない。足を止めて精鋭で囲めば倒せるだろう」

 悲しいけどこれが現実だ。

 ある地域で最強の人も、その地域のそこそこ強い人達で囲めば簡単に倒せる。


「なるほど、β版の時と同じですね」

 そうか、ユウト君は一度グレイウルフキングを狩ったことがあるんだ。

 その映像は俺も見た。


「だが映像と見比べるとβ版の時よりも速かったと思う。実際に体験したから速く見えただけかもしれないが」

「なるほど、注意が必要ですね」


「それからアレ本体とは関係ないが、やたら強いゴブリンと戦ってたいらアレが出てきた。アレに従うゴブリンが数匹だけだといいが、集落単位でいると厄介だ」

「それは…かなり危ないですね。戦力としてだけでなく、工兵として罠を仕掛けられたり、軽歩兵として掻き乱されたりすると厄介です」


 それからは特別な事は何も無かった。


「今日中に調査をして、場合によっては明日の作戦会議で上げなければなりません。その時に参考人としてタツさんに来ていただきたいのですが」

「分かった」

「ありがとうございます。お礼は…作業棟の受付にこの紙を出してください。好きな装備を2つ作ってくれます」

「いいのか?」

「ええ、貴重な情報をありがとうございました」

 ではありがたく頂くことにする

 助かった!結局小太刀を回収できなかったからな。



 俺は地図の案内に従って1階の給品部に来た。死んだときに落とした棒手裏剣を買うためだ。

 給品部の横には冒険者ギルドの出張買取所があり、<アイスクリーム>のデカさを感じた。


 作業棟は名前の通り、別の建物だ。

 <アイスクリーム>の本拠地は『コ』の形になっていて、北が室内訓練場で南が作業棟、東は今いる本棟で、西は空いている。真ん中が屋外訓練場だ。

 建物は3つとも渡り廊下で繋がっている。


 作業棟の受付にもらった紙を見せると、中くらいの個室に案内された。


「やっほー、タツ!」

「サクマか。何しに来たんだ?」

「やっばりさ、タツの担当はボクの方が良いかなって」

「そうか、ありがとう」

「いやー照れるなー」


「で、装備なに作る?」

「まずは小太刀だな。あとは…何がある?」

「色々あるけど、まずは小太刀だね。タツ、握手しよう」

「握手?」

 言われるままに握手する。言動は子供っぽくても手はゴツゴツとした男の手だ。


「んじゃ次にグウパアして」


「はい力を抜いてー」


「指、結構太いね…」


 こんな感じで手の具合を確認された。


「よし、完了!ターナ、カムオンヒアー!」

「もう、全部仕事取るなよ」

 そう言って入ってきたのは大柄な女性だ。


「指の感じは…握り具合は…」

「うわ、さすがサクマ。細かい。」

「それじゃ、よろしくね」

「はーいよっと」

 なんか、俺を他所に話が進んでいった。


「それでね、もう一個なんだけどさ、オススメの物があるんだ!」

 そう言って、サクマは長いつつみから何かを取り出した。

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