第8話 復帰

 目を開けると大きな神殿だった。

 噴水広場を少し離れた所に神殿があり、宿屋などのリスポーン地点がない場合は最後に立ち寄った街の神殿でリスポーンする。と攻略サイトに書かれていた。(『最後に立ち寄った』の判定は、運営の設置した噴水広場のエリアに入った時に更新される)


 この国は多神教であり、この神殿に祀っているのは龍をかたどった戦の神様だ。

 俺の名前は龍斗なので縁起が良い。拝んでおこう。


 どうすれば良いのか分からないので、とりあえず石像の前で手を合わせる。


(次こそはあのグレイウルフを倒せますように)

 そう祈ったら


(うむ、励み給え)

 と、頭に響いた気がした。力強く、それでいて老熟した男の声だ。

 びっくりして周囲を見渡すが、誰もいない。

 もしかして、俺のメインクラスである聖職者の影響だろうか。

 まさかな。


 聖堂を出た俺はクラスのレベルを確認する。

メインクラス 聖職者 レベル14

サブクラス1 ウォーリアー レベル9

サブクラス2 エンチャンター レベル8

サブクラス3 未就職 レベル0

合計 レベル31


合計レベルが30を越えたのでサブクラスが1枠解禁された。何にしようか。



「あ!タツじゃん、昨日ぶり!」


 歩いていたら露店を出していたサクマと再開した。

 そういえば、サクマは<アイスクリーム>所属だったな。


「おうサクマ、昨日ぶり!ところで、ちょっと聞きたいんだけど」

「なに?」

「俺も西の草原のボスの討伐メンバーにエントリーしたいんだけど、どうすればいい?」

 アレは俺一人じゃどう足掻いても勝てない。

 なので大人しく群れることにする。一人は気楽だが、群れるのが嫌なわけじゃない。


「わお!実はそれ、ボクが頼みたかったんだよね」

「マジか!」


 それは渡りに船だ。


「そうだ、タツは西の草原のボスがどんな奴か知ってる?」

「ああ、というかさっき戦ってきた」

「マジ!?さすがにタツでも無謀でしょ」

「そうだよ。秒殺された。だけど一撃は入れたぞ!」

「さっすがー!」

 負けたことを褒められても素直に喜べないが、サクマだけはそうでは無い。

 サクマの纏う子供っぽい空気のせいだろうか。


「それとね、タツは<アイスクリーム>に入る気ない?ボス討伐だって志願制だし、ソロの旅を続けたままでも入れるよ」

 なるほど、悪い話ではない。


「でもさ、金払うんだろ?」

「うん。冒険者ギルドで手に入ったお金の5%をね。でもその分アイテムとかを1割引で買えるよ」

 上納金はは必要だが、それで生産した物を安く買えるという訳か。

 よく出来ているな。


「じゃあ入ろっかな」

「やったー!」


 俺はサクマに紹介状と本拠地への簡単な地図をかいてもらった。


 <アイスクリーム>の本拠地へ行く前に、噴水広場でサブクラスに就く。

 新しく就くサブクラスはランナーだ。


 戦闘系のクラスではないが、レベル1から『スタミナ』という、名前の通り常時スタミナを増やすスキルが手に入るので3枠目以降に人気のあるクラスらしい。

 更に、足が強くなるので俺のスタイルに合っている。


 さっそく<アイスクリーム>の本拠地まで走る。

 おお!ほんとに疲れにくい!



 <アイスクリーム>の本拠地は街の外れながらも広い空間を取っていた。王都まで行けるようになったら移転するが、それでもこの王国(ルーキン王国と言うらしい)北東部の活動拠点とするかららしい。

 木造で3階建ての立派な建物に入って、受付でサクマの招待状を渡す。


「おかけになってお待ち下さい」

 俺は言われたとおり丸椅子に座った。クッションもちゃんとしている。


「タツさん。応接室に案内します」

 さっきとは違う女性にそう言われてついていく。

 長身で短い黒髪にきつい目。雰囲気にもどこか刀のようなものがある。

 俺は2階の応接室に来た。


コンコン

「タツさんをお連れしました」

「はいどうぞ」

 聞こえてきたのは思ったよりも若い声だった。


 部屋に入った。

 椅子に座っていたのはサクマと同じく男子高校生のようだ。

 髪と瞳は燃えるような赤色をしている。


「はじめまして、タツさん。サクマから話は聞いてます。ギルドマスターのユウトです」

「はじめまして。タツと申します」 

 いきなりのギルドマスターか。

 サクマの地位はどれほど高いんだろう。


「タツさん。あなたの方が歳上なんですから。タメ口で話してください」

「それは…わかった。よろしく、ユート君」

「ええ、よろしくお願いします」

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