第2話 始まらない物語

 🪽前回までのあらすじ🪽


 あ、ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺は幼女を助けて死んだと思ったら、いつのまにか幼女の前に立っていた。

 な……何を言っているのかわからねぇと思うが、俺も何が起きたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……現実逃避だとか夢オチだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。


「この物語(変態)はフィクションです。作中に出てくる人物(変態)は存在しません」


「おい、卑弥呼様よ。いきなり俺の存在を全否定してんじゃねぇよ。ただでさえ死んでるのに追い討ちをかけるな」


「いやー暇だったもんでつい」


 指先のささくれを気にしながら適当に語る。俺という存在はささくれ以下のようだ。


「前回の最後に何気に重要そうな頼み事をしてたじゃねぇか。それなのに暇とはなんだ暇とは。そんなに暇ならロリごっこするか? あ、オニごっこするか?」


 両手を触手のように動かしていると道端の吐瀉物を見るような視線が突き刺さり気持ちよかった。


「そんな噛み方をされるのは、世界広し、いやさ天界広しと言えども貴方くらいでしょうに」


「ところで、鬼ごっこってとても卑猥な遊びだと思うんだが、その事についてディスカッションしないか?」


「議論はやぶさかではないのですが、変に横文字を使わないでください。いかんせんテーマが糞過ぎますよ」


「まあまあ。いいか――鬼が逃げ惑う子供達、幼女達を追い立て、人気のない所に追い込み、逃げ場をなくした上で捕まえ辱しめるとは、なんたる鬼畜の所業。ワタクシ、興奮ヲ禁ジ得マセン」


「マジで腐った頭をなされてますね。そんな貴方に私は恐怖を禁じ得ませんよ。完全に事案発生してるじゃないですか。天国でなく地獄に落ちてください。そして獄卒にでも追い立てられて未来永劫辱められてください。それに何故幼女である必要があるのですか? ロリである必要があるのですか? そこはショタゲフンゲフン……男児ショタでいいではないですか」


「いや、隠しきれてないから。卑弥呼様の性癖は今この瞬間に白日のもとに曝されてるからな。散々俺の事を罵ったわりには派手に自殺点決めてるし。〝卑弥呼様はショタが好き☆〟とか薄い本にもなりゃしねぇよ。教本にも載りゃしないだろよ」


「そうですか? 教科書くらいには載せて頂きたいものですけどねぇ」


「PTAと全面戦争する覚悟があるのならな」


「いえいえ辞退しておきましょう。近頃のクレーマー達にはほとほと手を焼いているもので、これ以上モンスターと名のつくものには近寄らないようにしてるんですよ。君子危うきに近寄らずですね」


「こんなけったいな場所にもそんな輩が来るのか?」


「当然ですよ。やはりモンスターと名がつくだけの理由は有りますからね。こちらの体力と睡眠時間がガリガリ削られていくのです」


「そ、そこまで重労働なんだな。お前の事少し見誤っていたよ。悪かったな」


「いえいえ。わかっていただければいいのです。それもこれもアフターケア事業部部長としての責務ですからね」


 なんだかんだ言っても、こいつはそれなりに頑張っているのかと、その小さな体を舐め回すように見ていると、粗大ゴミを見るような視線を返された。


「さすが卑弥呼様だ。人民の上に立っておられた方はやはり格が違うな!」


「そんなに誉めないで下さいよー。当然の事ですから」


「謙虚さも兼ね備えてるとか、とんだ人格者でないか」


「いやー楽しいですよ。モンハン」


「おいコラ。俺の尊敬の念を返せ。天国でモンスターハンターしてんじゃねぇよ。一狩り行ってんじゃねぇよ。神が一狩りしてたらもはや死神じゃねぇか。てかどんだけ暇なんだよ」


「暇とは人聞きの悪い。プレイしてるうちに睡眠時間が二時間まで削られるほど忙しいのですよ。それにちゃんとレビューもマメにつけるタイプですよ」


「アフターケアとはカプコンに対してのものなのか。お前は廃人なのか? 神で廃人とか、こいつ堕天してるのでは」


「はい。真面目な話をしましょうか」


「そんな気分にはなれない」


「いやいや聞いてくださいよ。前回『異世界転生を手伝っていただけませんか』ってカッコつけて言いましたけど、ここは異世界に転生される方が立ち寄られる場所なんですよ」


「へえーそうなのか。よくラノベとかで神様と会話してる所か?」


「ええ、そうですよ。実際はもっと事務的な部分もありますけど、そう違いはないと思ってもらっていいのです」


「なるほどね。それで手伝って貰いたいという内容は?」


「簡単なことですよ。私は訪れた方と面談をし、を見極めた上で転生先を決めます」


「ふんふん。なるほど」


「貴方は私の横で話を聞いていればいいのです」


 「は?それになんの意味があるんだ。そんなの必要ねえだろ」


「いやいや必要なんですよ。主に私の威厳とか。実はアフターケア事業部と言っても、今現在人手が足りず、私一人で執り行っているのですよ。なのでか弱い少女一人だとナメられる事もあるので、その為の人員と言いますか……もし男性に襲われそうな時の身代わりといいますか」


「俺に尊厳はないのでしょうか。なんで死んでから男に襲われなきゃならねぇんだよ。横で話聞くだけなら他にも使えるやついるだろ」


「死人に口なしと言いますしね。実はBLも大好きなんで、それはそれで有りです。眼福です」


「この世に神はいないのか」


「いますよ? ここに」


「やはりいないようだ」


「ぶっちゃけると、横で何もせずに話聞いてるだけのらくーな仕事を優秀な方々に任せるなんてもっての他で、こんなのニートで十分だろって話ですよ」


「よし、殺し合いをしようじゃないか。


「殺し愛って書くと一気に厨ニ感が増しますよね!」


「ええい、五月蠅い五月蠅い。それで話を聞くだけでいいんだな」


「はい。それ以上は求めませんし私の領分ですしね」


「ふと思ったんだけどよ、どうして俺はここに来たんだ? そもそも物語の確信だと思うんだが、俺もその転生とやらが出来るのか?出来るなら巨乳な若妻に年子のお姉ちゃんがいる家庭が良いのだが」


(黙れニート)


「あっ! テメェ今ニートって言ったな」


「言ってませんよ? さて貴方の状況を説明しないといけませんね。実は貴方はあまりにもくだらない魂をお持ちでしたので、特にリサイクルするつもりも有りませんでした。焼却処分ですね。リサイクルしたとこでエコでも何でもないですし、地球に優しく有りません。そこで私が優しく手を差し延べたんですよ。貴方が最後に少女を助けたのでね」


 焼却処分とか、エコでないとか、さんざんな扱き下ろされ方だが、最後の人助けが自分の運命を変えたと思うと、あのゴムは決して無駄にはならなかったのだとしみじみ思う。


「あまり聞きたくなかった話だが……それで代わりに手伝えって魂胆だな」


「その通りです。嫌というなら地獄にでも落ちてもらって焼却処分としますし、手伝って貰えるなら別途報酬も用意するつもりですよ」


「ギャルのパンティもとい幼女のパンティとか?」


「本当に貴方は揺るがないですね。あなたを助けた私の意思は揺らぎっぱなしですよ。ドラゴンボール集めたら神龍シェンロンに願いそうで怖いです」


「バカ言え。願うならパンティなどのような布切れでなく幼女そのも――


「卑弥呼パンチっ!!」

 

「ぐほぁっ!何しやがんだ!」


「それはこっちの台詞ですよ! いったい死後どのくらい罪を重ねるつもりですか!    

 本当に無限地獄に落としてやろうか」


「ごめんなさい」


 これ以上はアクセルを踏んではいけない気がした。危機管理は大事なのだ。


「さぁ、バカなやり取りは一先ずここまでにして、記念すべき一人目のお客様がいらっしゃいましたよ」


「え? ど、どうすればいいんだ?」


『いらっしゃいませ☆』

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