第六章 のちにつれむお

「まみくん……、まーみくん」

 天国のソファーで居眠りをしていた僕の肩を、小さな手がやさしく揺する。

 頭にかぶさるように載っていたハードカバーをどかすと、そこにはいつも通りの、何も変わらない歩波の顔がじっと、僕を見つめていた。

「ふわぁーあ」と、一つあくびをしたのは歩波の方だ。それ、おかしくないか?

「まみくんのがうつっちゃったんだよ」

 僕はあくびなんてしていないのだから、そんなはずないのだけれど、まぁそれでもいいような気がした。あくびがうつるということ自体も、言ってしまえば都市伝説のようなものだし、ことの真相はきっと、僕を起こす直前まで歩波も夢を見ていたということなのだろう。

 或いはこうしている今も、僕らは夢の中にいるのかもしれない。

 僕が体を起こすと、ソファーに空いたスペースに歩波が座る。

 いつもは向かいのソファーに座るから、隣合うのは珍しい。

「私たちってさ、お互いにすっごくたくさんの本を読むけど……同じ本を読むことってほとんどないよね」そういう歩波の視線は、先まで僕の頭に載っていた厚手の単行本に向けられていた。

 僕は歩波のようにメジャーな本をあまり好んで読むことはないから、それはきっと歩波の知らない物語なのだろう。僕だって実際にページを開くまで、これがどんな物語なのか想像もできなかった。

「なんでかな?」小首を傾げて、歩波がきく。

 なんでって、それは当たり前じゃないか。僕と歩波では、読む本のジャンルがまるで違うのだから。

 歩波はミステリーを、僕はファンタジーを好む、ただそれだけのこと。

「それだけ、じゃないよね。私はもちろんミステリーが好きだけどそれしか読まないっていうことはないし、まみくんだってジャンルも分からない本を適当に選んで読み始めたりするじゃない。だから、その中にはたまたま同じ本があったっていいのに」

 不思議じゃない? ともう一度聞く。

 そう言われてみれば、そうなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。

 たまたま同じ本があったっていいのなら、たまたま同じ本がなくたっていいと思うのだ。

 だけど、あえて理由を探してみるとすれば、やっぱりどこかで僕は歩波と同じものを読むことを避けているのかも知れなかった。歩波に同じものを読んでもらうことを避けているのかも知れなかった。

 どうして、だろうか。そう自分に問いかけるのは間違いで、その実僕は答えを知っている。知識としてではなく意識として、確かに僕の中に存在していた。

 それは自覚がなくとも歩波の中にもあるのかもしれないし、世界中の誰にも少しはあるのかもしれない。

 世界中なんていったところで、大した意味はないのだけれど。

 結局、人間はたった一人で完結しているのだから、世界は常に関係ない。

「どうして?」歩波がようやく、僕にそう聞いた。僕と歩波は時々頭の回転のリズムがずれる。

 僕は……怖いんだよ。

 僕が読んで面白かったものが歩波にとってそうでなかったら。

 歩波に勧められた本が僕には無味乾燥に思えたら。

 それは同じものを見ていながら、違うものが見えているということだ。

 想像を絶するほどの、恐怖。僕には耐えられない。

 一つ違えば、全てが違うのかもしれないのだから。

「ふーん」と歩波はなんてことのないように相槌を打った。「私はそういうこと、むしろ面白いと思うけど」

 歩波がそういうのを、僕は知っていた。だから、これまでそんな話をしなかったのかもしれない。

「違ったっていいじゃない。全部が同じっていう方が、おかしな話だと思うよ。物語なんかはわかりやすいけど、ほらこの世界には目に見えないものとかもいっぱいあるじゃない? 友情とか、信頼とか」愛とか、「そういうものって人によって認識が違うから、時には食い違ったり、すれ違ったり……、でもそこから物語って起こるんだよね」

 私たちにとってはそれっていいことじゃない、と。

 肯定も否定もできないでいると、僕の右肩に歩波の頭がのっかった。

 軽い。「それは失礼なんじゃないかな?」

 歩波がむくれて、それから笑って、揺れて、伝わる。僕もつられて笑った。

 窓の向こうから燃えるように赤い夕陽が、沈む前の最後の光をこちらに向けて放っている。

 眩しい、とかざした歩波の左手の付け根がキラキラと輝いていて……。

 いいのかもな。と、心と連動して口が動いた。

 たった一つでも共有できるものがあるのなら、それでいいのかもしれない。


「そういうのを、奇跡って呼ぶんだろうね」




 午後七時ジャスト。

 白くて広く、また緩やかで長い階段を僕はゆっくりと一段一段、踏みしめるように上る。

 考えてみれば、この研究所は何もかもがあべこべだった。全てが歪で、おぞましいほどに粗雑で、統一感がなく、機能性も後付だ。

 手当たり次第にかき集められただけの、意思のない群体のように。

 頭がライオンで鷹の羽と蛇の尾をもつ、ギリシャ神話の幻獣キマイラのように。

 僕はこの建物の廊下を死体に似ていると感じたけれど、むしろ建物全体の印象は生きた人間の脳に近いと思う。

 脳。

 ひどく生物的で、どんなに価値があろうが、或いはその中にどれだけの知識を有していようが、その外観は受け入れがたいほどにグロテスクで、有体に言ってしまえば気持ち悪い。

 気持ち、悪いんだ。

 そのことに僕らはもっと自覚的であってもよかったはずなのに、見ないふりを決め込んで、大切なモノを失った。

 かけがえないものを失った。

 取り戻せはしないけれど、生き返りはしないけれど、僕らは何らかの決着をつけなくてはいけない。

 物語には必ず終わりがあるのだから。

 それがどんなにグロテスクで、気持ちの悪い結末であったとしてもだ。

「お待たせしました」

 階段全体の四分の三をのぼりきったところで、僕はそこにいる全員に向けてそう声をかけた。全員と言っても、僕を除いてたったの四人しかいないけれど。

 一番手前には頭にタオルをかぶり壁にもたれかかる銀色。その奥では段差に女性らしく足をたたんだ佳乃さんが座っていて、そばで龍磨さんが銀色とは逆の壁に体重を預けていた。頂上の踊り場には扉を背にする格好で、仁王立ちの王教授が腕を組みながら僕を睨み付けるように見下ろしている。

 扉の向こうは子供たちのいる孤児院だ。

「佳乃くんから聞いたよ、二人を殺した犯人がわかったんだってな」龍磨さんの口調は軽くて、それでも顔は真剣だ。僕は無言で頷く。「誰なんだい?」

「一つずつ、お話ししましょう。そうでなければ、納得していただけないはずですから」

「なぜ、こんなところを集合場所に?」

「それもきっと、理解していただけると思います」

「面白いね」と至極面白くなさそうに、龍磨さんは言った。きっと、子供たちのことを心配しているのだろう。わざわざこんなところで話す必要性が、僕以外には見つからないのだから。

 それでも必要なことだった。察しているのか、それとも対して関心がないのか、他の誰も口を開かない。

 僕は銀色を一瞥したけれど、タオルに隠れてその表情は見えなかった。笑っているのかもしれないし、泣いてるのかもしれない。どちらもそんなに変わらないけど。

 さぁ、始めよう。終わらせるために。結末は、まだ僕にも見えてはいない。

「まず、可能性からつぶしていきましょう。誰がこの一連の事件を起こすことができて、誰にはできなかったのか。これは前提の話になりますが、歩波が殺された第一の事件と玉緒が殺された第二の事件とは同じ犯人によるものです。根拠は玉緒の胸にできた刺し傷。この傷は貫通していて、佳乃さんによると胸の傷と向かいにあたる背中の傷は同じ大きさだったそうです。容易に想像いただけると思いますが、包丁や、王教授の持っていた小さなナイフではこのような傷になりません。つまり、あれは第一の事件の時に持ち出されていた脇差によるものであり、初めの事件と第二の事件が同じ犯人による犯行であると断定することができます」

 ひゅー、と横から口笛が聞こえた。銀色だ。僕はそれを意識から外す。

「第一の事件について、考えてみましょう。事件当時、龍磨さんは孤児院の中で子供たちを寝かしつけていたそうですね?」

「ああ、あの日は俺が当番だったからな。子供たちの就寝時間は九時なんだが、そうは言ってもみんながみんなすぐに寝付いてくれるわけでもない。十時過ぎまで数人の子供の相手をしていたよ。彼らに聞いてくれればすぐにでも証明できる」

 信用します、と言って僕は龍磨さんとの話を打ち切った。どのみち龍磨さんに犯行は無理だ。

「銀色は夕食後から死体発見直前まで王教授の部屋で打ち合わせをしていました。これは教授が証明できますね。同様に教授もこの時間は部屋にいたことになる。二人にも犯行は不可能です。そして佳乃さんは、解散後の大広間で食事をとっていて僕がそれに付き添いました。僕たちが別れたのも十時過ぎ、やはり犯行はできません。つまり、」

 たっぷりと間をとって、宣言するように言い放った。

「犯人はこの中にいない」

 それはどことなく滑稽で、だけど誰一人笑い声をあげることなく僕を見つめている。

「続けます。あの時、和室では小さな女子会のようなものが行われていました。薫子さんが大量のお酒を持ち込み、歩波、玉緒と談笑に励んでいた。記録では八時四九分に玉緒はシャワーを浴びるために外に出ています。この時点で歩波はまだ生きていました。刀を持つことができない玉緒が歩波を殺すことができなかったというのもありますが、実はこの直前に……」

 僕はポケットから携帯電話を取り出して、用意していた画面を全員が確認できるようにみせた。

「これはあの日、佳乃さんとの会話中に受信した画像です」歩波からの最後のメールだ。「時刻は八時四十五分。ここにはまだ笑いあう三人の様子が写っています」

 その三人がそろってこの場にいないということは、何のジョークにもなりはしない。

「状況から見ても、玉緒が犯人である可能性はないのです。そして、同時に犯行時刻が断定できます。玉緒が部屋を出てから、僕が歩波を見つけるまでの八時四九分から十時二八分まで約一時間半の間に、犯人は歩波を切って、殺して、焼いた。それができたのは薫子さんだけです」

「そんなはずはない!」

 今まで沈黙を守ってきた王教授が、唸るような声をあげた。

「異論があるのですね?」

「ある。薫子は絶対にそんなことはしない!」

「では、薫子さんは今どこにいるのでしょうか?」

「…………」

 教授が黙る。いや、他の誰も何も言うことができなかった。もちろんそうなる事は予想していたけれど。

 それこそが、この事件の一番の謎だからだ。表向きには。

「もったいぶるなよ」おもむろにタオルを外して、銀色がいう。「それがわかったから、俺たちを集めたんだろ?」

 演出も嫌いじゃないけど、とニヒルに笑う。まぁな、と僕は返した。

「その答えの前に、第二の事件について考察しましょう。この時、銀色、佳乃さん、龍磨さんの三人は研究所の外で美角を探しに出ていて、ちょうど戻ってくる最中でした。僕は玉緒の横にいて少しだけ、その場を離れた。そして玉緒はその少しの間に殺されました」

「つまり、お前にはあのメガネを殺すことができたということだなぁ」教授の顔が邪悪に歪む。

「それはあなたもです、王教授。けれど実際にはどちらにも犯行は不可能だった。一つ目の理由は先ほども言いましたが、犯行に使われたのが第一の事件で持ち出された脇差だったこと。そしてもう一つの理由は、犯人が建物の外から入ってきたということです」

「ちょっと待ってくれ」龍磨さんだ。「君がそれをあの足跡を根拠に言っているのなら早計にすぎるんじゃないか? あんなもの小細工すれば屋内だっていくらでも……」

「そうじゃないんです。実は皆さんにここに集まってもらう間に、佳乃さんに調べものをしていただきました」僕は佳乃さんに視線をおくる。

「外部のセキュリティー会社に、今日一日のカードの履歴を確認してみたんです。あの時、玉緒ちゃんを襲った犯人が使ったカードは……」とても言いにくそうに、「STAFF2」

「それは、」龍磨さんが言葉を詰まらせる。

 ここにいる誰もがそのカードの意味を知っていた。

 STAFF2は佳乃さんのカードだ。あの時美角に奪われて、外に持ち出され、紛失したカード。

「犯人は佳乃さんのカードを外で拾い、エントランスから堂々と研究所の中に戻ってきたということです。玉緒が殺された洋室にもこのカードの履歴が残っていました。だけどそれで終わりです。洋室を出てから、カードは使用されていません」

 また、犯人は消えた。

「問題は、第一の事件の犯人はどうやって外に出ることができたのか? 僕の思考はここでとまっていました。だってこの犯行は誰にもできないのですから。姿の見えない薫子さんにすら、不可能で、不可解です。まさに不可解。噂の殺人鬼、金田一の仕業なのではないかと本気で考えてもみたのです」それは、殺人鬼というより亡霊の仕業と言ってしまうようなものだ。

 教授の顔色がかすかに曇る。金田一という言葉に反応したのだろうけれど、さすがに触れてはこなかった。ボロが出ては大変だからな。

「で、君は長々口舌を垂れておきながら、犯人はどこから来たともしれん殺人鬼だと言いたいのかね? ばかばかしい」

「いえ、」僕は否定をした。拒絶にも近い。「僕達はこういった流れで事件を見てきていたのです。或いはそう見せられていた」魅せられていた。「だから、犯行は不可能で、不可解だった」

 僕らはずっと間違っていたんだ。

「初めから間違っていたんです。大きな落とし穴が潜んでいて、見事に全員がつまずいた。ヒントは瀕死の状態で玉緒が残してくれた一枚の画像です」

 銀色の目は天井をじっと見つめている。

「そこには、かつて精神疾患児童ケアセンターと呼ばれた施設の収容児童名簿が載っていました。この施設で、王教授も一時期顧問をなさっていたことがありますね。五年前に施設は解体されましたが、それ以前は多くの子供たちがここにいました。十年前には銀色と玉緒の名前があり、そして……」

 そう、そして、

「十二年前には、歩波の名前がありました」

「なんだって!」反応したのは銀色だった。記録によると歩波が施設にいたのは一年半だけ、つまり銀色や玉緒がいた時期とは重ならない。


 稲田 歩波――心因性無痛症。


「知らなかったんです。歩波は、痛みを感じないんですよ」中学校から一緒にいたのに少しも気が付かなかった。「もちろん、今思えば思い当たる節がないわけではありません。だけどその程度です。気付かされるまで、気付けなかった」

 それは異常だ。普通の人にあるものがないことなんかより、ないものをあると思わせ続けてこれたことが異常で、異様で、異端だった。

 異常な日常だったんだ。

「このことから、別の可能性が見えてきます。僕の推理をお話ししましょう」

 話したくなんなかなくても、認めたくなんかなくても、それが結論だ。

「事件の過程はこうです。あの日、玉緒がお風呂に入るため部屋を出たのを見計らい、犯人は被害者に切りかかりました。けれどそれは、薫子さんが歩波に……ではなく、歩波が薫子さんにです。剣道をやっていた彼女に、日本刀は扱いやすい凶器だったのでしょう。もちろん竹刀と実際の刀では大きな違いがありますが、それでも触ったことがない人間よりはうまく使えます。歩波は部屋に飾られていたそれを振るい、薫子さんの身体を跡形もないほどにバラバラにしていった。五体を散らばし、胸をえぐり、」歩波には胸がないからな。「顔を潰した。その遺体が誰のものなのかわからなくなってしまうほどに」

「まま、まて、」教授が声を震わせる。「それでは、薫子は……」

「二日前に亡くなっています。薫子さんはどこにも消えてなんかいなかった。ゲストルームの和室で無残に惨殺された第一の事件の被害者こそが薫子さんだったのです」

「そんな、まさか……、」教授が数歩後ずさって、膝から崩れ落ちた。放心状態とはこういうことを言うのだろう。力のはいらなくなった腕がだらりと垂れさがる。

「そして歩波は、殺されたのが自分であると僕たちに錯覚させるための工作を行った。まず薫子さんの遺体に、薫子さん自身が持ち込んでいたウォッカをかけて薫子さん自身のジッポーで火をつけた。服と、遺体の皮膚を焼くためです」

「遺体を損壊させればさせるほど、それが誰なのか特定は難しくなる、か」銀色が呟く。「確かにあれは他の誰だとしてもおかしくなかった。俺たちがあの遺体を歩波ちゃんだと思ったのは、いくつもの条件がそろっていたからだけど、それは全部ミスリードだったってことか」

 僕は頷く。今回の殺人は、大昔から仕組まれていたものではありえない。なぜならそれにしては雑だし、粗が多いんだ。だから、全てのトリックは即興で、そしてありものを組み合わせることに関して、歩波は天才的だったと言わざるを得なかった。

 クラブ棟の小さな部屋の扉にブービートラップをつくるのと同じ要領で、歩波は殺人トリックを創りだしたわけだ。

「歩波は薫子さんが生きていると僕らに誤解させるために彼女のカードを使い扉を開けた。しかし、部屋の外には出なかったんです。うちの大学には、『タッチアンドゴー』という文化があるんですよ。学生証を教室のセンサーに通して、出席をしていると機械に認識させて部屋を出る。すると、いるはずのない学生が席に座っていることになるんです。歩波はここで、逆のことをした。つまり外に出たと思わせて、部屋の中から出なかった。これが薫子さんを僕ら全員が見失った理由です。カードの履歴を追って、薫子さんがこの研究所のどこかに隠れたと考えるのが普通ですから、それをうまく逆手に取られた形です」

 そして、

「そして、歩波は自分の左腕を切り取った。関節と骨を外して、肉と筋だけになれば脇差だけでも十分だったのでしょう。痛みを感じることのない歩波には、それは単なる作業だったかもしれない。現場に残された『歩波の腕』は僕らに、」誰よりも僕に、「遺体が歩波であると誤認させることに役立っています。決定的と言ってもいい。左腕には特徴的なマニキュアと、僕とのペアリングがつけられていましたから」

 歩波は腕だけじゃなく、僕との思い出も切り取って、燃やして、血の海の中に潜り込ませたんだ。

「そんなことって」信じられない、と佳乃さんは言う。

 当たり前だ。僕だってにわかには信じることができなかった。

 信じたくなんてなかった。

 だけど、

 普通じゃないというのなら、初めからそうだったんだ。

 事件が起きた瞬間から……、

 いや、この研究所に一歩踏み入れたその時から、普通では決してありえなかった。

「薫子さんの遺体をバラバラにしたのは、単に損壊させること以外にもいくつかの目的がありました。一つはこの切り取った腕が入れ替わっていることに気付きにくくするため。もう一つは身長をごまかすためです」

「身長を?」

「そうです、龍磨さん。一七〇センチはある薫子さんの身体を、一五十センチに満たない歩波の遺体に見せるために、各部位二十センチ以上は切り取って持ち出しているはずです。余分な左腕と一緒に、完全防水のスポーツバッグでね。そうして全てを仕掛け終えた歩波は外に出た」

「でも、」佳乃さんが不思議そうに聞く。「扉は一度開いて、閉じているんですよね。それからは遺体が見つかるまで一度も開いていない。それじゃあ、出られないじゃないですか。あの部屋の窓は人が通るには位置も高いし、いくら体の小さな歩波ちゃんでも通り抜けられないくらい小さな造りになっていて……、あ」言葉はそこで切られた。

 今、気づいたんだ。僕よりずっと頭のいい佳乃さんなら、もっと早くに理解していてもおかしくなかったのだけれど。

 それくらいに、この事件は狂いすぎている。

「あの窓は確かに、歩波ですら肩がつっかえてしまうほどに小さかった。だけど、この時に限っては通ることができたんです。なぜなら、肩がなかったから。踏み台にしたのはそれまで凶器として使われていた長い日本刀です。バラバラにされた体の部位が、部屋のあちこちに散らばっていたのは巧妙なカモフラージュだったんですよ」

 右足が何の故意もなく部屋の左端にあったように、

 頭が一つの意図もなく部屋の右奥にあったように、

 左腕がなんら思惑なく部屋の中央にあったように、

 日本刀を突き立てられた中身のない胴体だけが必然をともなって窓際に配置されていた。

「吐き気がするね」銀色が言う。「意味を知らなければあの場所は無作為の、単なる猟奇殺人現場だった。それが計算されつくされた、所謂答えとしての光景だというのなら鳥肌ものだよ」

 理解できないし、したいとも思わない、と。

 同感だよ、銀色。

 僕らには理解できないし、理解したいとも思えない。それは当然だ。

 歩波の心は、歩波だけのものなのだから。

「これが、僕らをずっと迷宮に陥れてきた第一の事件の真相です」

 ゆっくりと、一拍置いた。


「何か反論はあるか、歩波?」


 扉が開く。

 その奥から人影が飛び出して、逆手に持った脇差を思い切り振り上げた。

「龍磨さん!」

「こんの!」龍磨さんが咄嗟に体を当てにいき、振り下ろされた刃がすんでのところで教授を逸れて床に突き刺さった。二度目の攻撃に転じた人影がそれを引き抜くのを見計らって、龍磨さんがその手を蹴りぬく。刃物はカラカラと転がって、廊下の隅でとまった。

 一瞬の出来事。

 人影は龍磨さんによって床に倒され押さえつけられると、無理を悟ったのかすぐに抵抗をやめた。

 顔は泥だらけだった。

 髪もぐちゃぐちゃで、服はもう、ずたずたの布切れのように垂れ下がっている。血色の悪い皮膚は透き通るように白い。左の肩から先は空っぽで、断面は真っ黒になっていた。きっと止血をするために自分の手で焼いたのだろう。

 それを予測していた僕でさえひるむほどの壮絶な姿で、歩波は僕を見つめている。

 僕も歩波を見つめた。いつも通りに。これまで通りに。

「本当に、歩波ちゃんが……」目の前の光景がいまだに信じられずにいる佳乃さんに、歩波は「ごめんなさい」と思ってもいないだろうことを言った。

 研究所の中に戻ってきた歩波がいるとしたら、カードキーを使わない場所だという確信があった。施設を管理している人間なら履歴を確認できてしまうからだ。そして、この孤児院に繋がる扉だけは、歩波が開ける術をもっている。

 僕が全員をここに集めたのは歩波がこの場所にいることを確信していたからだった。

「もう少しだったのに、」と歩波は言う。「やらせてよ、まみくん。私にこの人を殺させて」

「駄目だよ」僕は答える。「わかるだろ、歩波の負けだ。もう誰も殺せないし、それに歩波は探偵のはずだろ? 僕はいつか見たいと思ってたんだぞ、歩波が、かっこよく謎を解くところ」

「ん、今のまみくんかっこいーよ。惚れ直した。ひゅーひゅー」話をすり替えるなよな。

「うまくやれたと思ったのに。授業に出てないまみくんなのに、こんなに頭が回るなんてね」

「頭が回るから授業に出てないんだよ。僕にあんなものは必要ない」これは、まあ嘘だけど。

 半分くらいは、嘘だけど。

 僕らは場違いに笑いあう。

 他愛もない話を続けていると、視界の端で教授がおもむろに立ち上がった。

「お前が……、お前が薫子を……」手にはあの小さなナイフが握られていて、けれどその手はすぐに銀色に捻りあげられて教授は身動きが取れなくなる。「うあぁ、あがぁぅぅ」

「うるさいよ。お前」言葉が凍るように冷たい。「歩波ちゃん、教えてほしい。どうしてこんなことを?」

「玉緒ちゃんのことは、本当にごめんなさい。謝ってもどうにもならないけれど、他にできること、ないよね。本当は話すことに残っている体力を使いたくはないけど、私にできることはもう終わっちゃったからな。いいよ、おしゃべりしようか」

 どこから話したらいいかな。そう言って遠い記憶を辿るように目を瞑る。

「私ね、小さいとき。本当に小さい時だよ、二歳とか三歳とか、まだ赤ちゃんだったと言ってもいいのかもしれない。そんな頃に虐待を受けてたの。おかあさん、だったらしいよ。あんまり覚えてないけどね。それってすごいこと。心が壊れちゃうような出来事でも時間が経てば忘れちゃうんだから。だから、これはずーっと後になってお姉ちゃんから聞いた話、それから私の身体だけが覚えている感覚の話」

 それは僕も初めて耳にする、歩波の過去。

「待ち針ってあるでしょ。細い針に小さくてかわいい飾りのついた……、あれでね、刺すの。ちく、ちく、って毛穴の一つ一つを数えるように、毎日毎日赤ちゃんの肌にね。浅く刺したり、たまには深く刺してみたり、そんなのは全部お母さんの気分だった。下手をしたら、私は玉緒ちゃんと同じ先端恐怖症になっていたかもしれない。けれど、そうはならなかった。怖かったのは針そのものじゃなくて、『痛み』だったんだね。小さな小さな私は、その痛みを見ない振りするようになった。感じないふりをするようになった。だって、しょうがなかったんだよ。痛いと思えば泣いちゃうでしょ? 泣けば、体に開く穴が増える。それに、泣かない私をお母さんは抱きしめてくれたの。虐待の記憶はないのに、そんなことだけちゃんと覚えているんだから、人の記憶って面白いよね」

 都合がいいっていうか、適当なだけかもしれないけど、と。

「それで次第にね、痛いっていうことがわからなくなっていったの。何かが刺さる、その感覚はあるよ。異物が体に入ってくる感覚。研ぎ澄ませれば、金属が細胞を押しのけていくことさえも感じられたのに、痛みっていう感覚だけが思い出せなくなっていた。ほら、よく言うでしょ、痛みは体の危険を知らせる信号だって。先天性の無痛症だと力の加減がわからなくて、歩くだけで怪我をしちゃったり、舌をかみ切っちゃったりって珍しいことじゃないんだけど、私の場合はそういうものではなかった。わかるんだもの。痛みが痛みでないだけで、だからいくらでも耐えられた」

 麻痺してたんだよ。感覚だけじゃなくて、きっと心が。あのころからね。

 歩波の表情は、僕らが部室で本を読んでいる時と変わらない。僕らが会話をしている時と何も変わらなかった。

「そう、私にはお姉ちゃんがいたの。いつも私を助けてくれた大好きなお姉ちゃん。お母さんが刑務所に入っても、お父さんが突然帰ってこなくなっても、わたしのそばにいてくれた。名前は金田一美南。KMSをつくったのはお姉ちゃんだったんだよ。私とは十一歳離れていて、私が九歳でケアセンターに入った時にはもう結婚していた。それが、私を養うためだってことに気が付いたのは最近になってからだけど、とにかくそれで苗字が変わっていて、稲田っていう名前が大嫌いだった小さな私は、『私もお名前変えるー』って駄々をこねたのに、それは歩波が素敵な人に出会ったらねって聞いてくれなかった」

 ぶぅ、と唇を尖らせる。

「お姉ちゃんも私と同じときにケアセンターに入ったの。お姉ちゃんはその時二十歳だった。旦那さんは施設の偉い人で、五十歳を超えていたんじゃないかな。私はよくおじいちゃんって呼んでお姉ちゃんに怒られた。きっと望んで結ばれたんじゃなかったと思う。だけど二人は本当に幸せそうだった。最初は偽物だったのかもしれないけど、いつからかちゃんと本物になれたんだね。茶化して私が、どうしてお姉ちゃんは児童じゃないのにここにいるのって聞くと、私は研究のお手伝いなのって金田一さんと見つめあって笑った。大好きだったんだよ。だーい好きだった」

 それなのに、

 それなのに、

「消えちゃったの、お姉ちゃん。私も、それから金田一さんも残して。痛かったよ。痛みを感じない私が、あの時は本当に痛かった。身体ではやっぱりわからなかったけどね。心が痛くてたまらなかった。お姉ちゃんがいなくなって、私はすぐにケアセンターを出ることにした。あそこにいてもお姉ちゃんは探せないと思ったから。すごく頑張ったんだよ。たくさんたくさん苦労して、結局私の頑張りなんて何にもならなくて、四年前に死亡届とお骨が届いた。遺物として渡されたのは、私には何が書いてあるのかさっぱりわからない紙切れ一枚だけ」

 龍磨さんに押さえつけられたままの姿勢で、歩波は器用に右腕を動かして一枚の紙を地面に落とした。

 そっと拾う。

 はじめはきっと白かったはずの紙が、時を経てすみずみまで茶色くなっていた。

 それでも、大切にされていたことがわかる。紙自体の傷みは少なく、黒鉛筆で描かれたその文字を読むことはできた。

 理解することはできなかったけれど。


  『

     あ ま い き せ ら そ


     て な ね つ え む わ


     り め に み せ を へ


     か な し や た さ れ


     と ほ ひ つ え よ る


     の ち に つ れ む お


     あ ま い き せ ら そ

                     』


「骨壺を開けて直感したよ。あぁ、お姉ちゃんが足りないって。殺されたんだってすぐにわかった。だけどそれだけ、どんなに恨んでもどんなに怒ってもどんなに嘆き悲しんでも私には結局何にもできない、やんなっちゃうよ。無力だった。惨めだった」

 でもそれが、

「でもそれが、ここにきて一気にかわった。まみくんから金田一っていう名前が出てぴんときたんだ。私なりに調べて、薫子さんに話を聞いたらほとんど何も言ってくれなかったけど、私には全部わかった。わかっちゃったんだよ」

 痛いほどに、なんておどけて見せる。


「ねぇ、教授。どうしてお姉ちゃんを食べたの?」


 込み上げる嘔吐感を僕は必死に飲み込んだ。口の中が酸っぱい。めまいすら微かに覚える。一昨日の大広間での会話がひどく現実味を帯びて、いや現実のものとして歩波から語られて、それをそのものとして受け入れようとする心を体が拒絶しているみたいだった。

「食べたいから食べたのかな、嗜好の行為? カニバリズム? でもそれはあなたの言う人受けのいい看板だよね。目的があったんでしょ。だからあなたはこんな人気のない山奥に孤児院をつくった。孤児院なんて、それでもまだ耳障りのいい言葉だよ」

 だってここは―畜を育てるための養―場なんだから。

 歩波の言葉が、よく聞こえない。

「食べるために育ててるんでしょ?」

「いや! やめて!」

「そうして、瑪瑙ちゃんも……」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 つんざくような佳乃さんの絶叫が空間全てを振るわせた。その悲鳴が、僕の意識を必死で支えている。耳に届くのがもう少しでも遅ければ、叫んでいたのは僕の方だったかもしれない。

「ねぇ、どうして?」狂った空気を割って、歩波はもう一度問いかける。「どうしてかな?」

 至極つまらなそうに銀色が、王教授の腕をさらにねじりあげた。

「うぅ、があ……、わかった! 話す!」

 忌々しそうに、歩波を睨み付けながら。

「……私が食べるのは、能力をもった人間だけだ。才能だよ。そもそもからして、私が研究をしているのは何に生かすためでもない。私が、私には見えない世界を見るためだ。私のクオリアは固まっている。全ての人間がそうであるように、自分が見えるようにしか私は世界を見ることができない。嘆かわしいことだ。私に見えない世界を見るものがいて、そのことを私は知っていて、それなのに私にはそれを見られないとは皮肉もいいところだよ。私は別の世界が見たかった」

 だから食べた。

「食という文化は本当に深淵だ。その意味は様々に誇張されているが、食べる者に食べるモノが多くの影響を与えているのはまごうことなき真実である。強者を弱者が食べるという例は世界でも数多いし、食せばその者の力を得ることができるというのも、カニバリズムの一つの源流に確かに存在しているのだからな。私は、別の世界が見たかった、ただそれだけだ」

「ね、殺したくなるでしょ?」

 きゃはは、と笑い声が続く。

「私は探偵になるためにミステリーを読んでいたんじゃなかった。もしかしたら天性の人殺しだったのかもね。準備から始められたら、もっとうまくやれたのに。私がもし、もう少しだけ巧妙に隠し通せていたら、玉緒ちゃんを殺す必要なんてなかった。あの時点で捕まるわけにはいかなかったんだよ。私は教授を殺さなきゃいけない」

 失敗しちゃったけど。

「刃物を向けた時、玉緒ちゃんものすごく震えてた。それはもう尋常じゃなくて、すぐにあぁ、先端恐怖症なんだなってわかったよ。そういう人をたくさん見てきたんだもん。けどね、すごいの。刃先が見えなくなった途端、つまり玉緒ちゃんの胸に刃が突き刺さった瞬間、震えが止まったの。突き飛ばされて、反撃されると思ったけどそうじゃなくて、勢いよくパソコンをいじりだした。だからパソコンを壊してから逃げたのに、まさかバックアップを取られているとは思わなかったな」

 だからごめんなさい、と歩波はもう一度言う。

「玉緒ちゃんを殺してしまったことは、私の力不足だった。心から謝りたいと思ってたんだ」

 銀色は何も言わない。ただただ歩波を見つめ返している。

「ねぇ、まみくん、どうしても私に殺させてくれないの?」

「ああ、言ったろ? 歩波の負けだよ。終わりにしよう」もうこんな狂った物語はたくさんだ。

「そう、じゃあ仕方がないね」歩波は諦めたようにそう言った。けれど続く言葉は僕の想定していたものとは全く違っていて、

「もう、私一人の願いじゃないんだもん」

 そして、もう一度、



 扉が開く。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 出てきた人影はくぐもった獣のような雄叫びをあげながら銀色につかまって動けない教授に近づき、首筋に何かを打ち込んだ。

 注射器?

「美角! お前、何をしたんだ」

 美角はそれまで自分の口を塞いでいたものを龍磨さんに投げつけて、ベぇーと舌を出す。

 ぼとっ、と重い音を立てて床に落ちるそれは『腕』だった。肘から先だけの細い『腕』。そうだ、僕はもっと早く気づけていたはずだったのに。

 この孤児院の扉を開くには指紋認証が必要で、薫子さんの腕を持ち去っていた歩波はそれをもっていたから、この扉を開けることができた。それなのに、扉から出てくるときにその腕をもっていなかったのは不自然だったんだ。

 歩波の余裕の態度も、全てはこの瞬間のためだった。確実に王教授に手を出せるこの時をねらっていたんだ。

「ぐぁ、あ、げほ、がは……ぐっ」

 苦しそうに教授が咳き込む。いや、咳き込むということすら不完全で、呼吸ができていないみたいだ。胸元を押さえる指先が痙攣していて、立っていることすらもままならない。

「そんな、この研究所に強い毒性の薬品なんて置いていないのに」

 佳乃さんが龍磨さんの方をみて、龍磨さんは首を振る。なにを打たれたのかが分からなければ、対処もできない。

 やがて、

 動きが止まったその体を、銀色は静かに床に降ろした。

 また一人、死んだ。僕らの目の前で。

 純白に覆われた教授の身体は廊下の白に溶け込むようで、死体に似た廊下と廊下に似た死体はただのモノに成り果てた。

 あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、と声変わりのしていない高い声で美角が嗤った。

 佳乃さんがその手から注射器を取り上げて中身を確認する。

 だけど、「なにも入っていません。入っていた痕跡も、ない」

「どういうことだよ……、どういうことだ!」

「空気だよ」歩波が答えた。「美角くんに教えてあげたの、何も入っていない注射器で人が殺せてしまうことを。空気は血液を固めて血管を詰まらせる。脳に血がいかなければ、人は簡単に死んじゃうから。よくできたね。褒めてあげるよ」

「この!」

「やめてください!」

 僕の言葉で、龍磨さんは歩波に向けて振り上げた腕を止める。僕が間違っていることはわかっている。それでも許せなかったんだ。

 これ以上、歩波が傷つくこと。歩波が傷つけること。

「まみくんは、やさしいね。やさしすぎるよ。でもそれはだめ。悪いのは全部私なんだから。それにね、私はもうまみくんの彼女さんじゃないんだよ、人を殺そうって思った時に決めてたの。例え誰にも気づかれなくても、腕がちゃんとあったとしても、人殺しになったら、まみくんと一緒にいられないって。だからね、指輪、外そうとしたんだ。だけど一緒にいた時間が長すぎて、外れなくなってた。楽しかったことも、時々苦しかったことも、思い出も、想いも、全部全部簡単にとったりできなくて、仕方がないから切り取った。少しも痛くなんかないのに、涙が出たよ。止まらなかった。それでも切ったの」

「歩波……」

「来ないで、お願い。まみくんのことを好きで、まみくんに愛されていた私はあっちにおいてきちゃった。私はもう私じゃないから、そうしてまでやりたかったことはもうできたから。もう、眠らせて」

 ほんとは体、もうぼろぼろなんだ、と。

 でも水族館はやっぱりいきたかったなー、と。

「まみくん、おやすみなさい」

 言いたいことはたくさんあって、伝えたいことは数えきれなくて、でもそれはみんな場違いなのだろう。

 僕にできることは歩波の最後の言葉にただ、答えることだけ。

「ああ、おやすみ」


 歩波の瞼は静かにゆっくりと、事件の幕と同時に閉じられた。

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