第2話「幼馴染とお買い物です」

「おはよー、まーくんおそいよ」


「えー、集合5分前に来てるんだけど?」


「わたしも今来たんだけどね」


そんな会話をしながら、みなとに手を振る。

みなとも振り返し、お互いを認識する。


みなとは普段あまり着ないワンピースを着ていた。

ワンピースの上にカーディガンみたいなのを羽織っており。


普段は制服でシックなイメージしかなかったけど。


かなりイメージが違った。

普段よりも小さい、そんなことを感じてしまう。


いや、違うんだろうな。

みなとの家のお母さんは心配性。

学校の制服選ぶ時も。


「大きくなって合わなくなったら大変」


って言ってたのをよく覚えている。

多分大きめサイズを買ってそのまま大きくならずに。

ぶかぶかのを着ているから。


その分、今日は適正サイズを着ているし。

普段余っている分縮んで小さく見えるのかな。

そんなことを一人で考え込んでいた。


「ちょっと、聞いてる? 服はどの系でいくの? スーツ? カジュアル?」


「ごめんごめん、みなとが普段よりちっちゃいなって思ってた、服はあんまり考えてないや」


「ちっちゃいって何よ、縮んでないんだからね、服に本当に無頓着なんだから、まーくんは細いんだから、それを強調する服があうよね」


「そうかな? オーバーサイズしか普段は着ないしそんなきついのは合わないかも」


「それだよーぶかぶかの服着て、子供が大き目の服を着て、大きくなりますようにってお願いしてるみたい」


「みなとも制服がそうじゃないか」


「あれはお母さんが選んだやつだし、もし本当に急成長とかしたら大変でしょう?」


「たしかにね、でも僕は楽に着れるのがいいな」


「だめ、ビシッと決めてかなきゃ」


「わかったよ、それじゃあ行こうか」


「うそー、信じらんない、もってよー」


みなとはそう言いながら手に持ったかなりでかいお弁当箱を差し出してきた。

明らかにこれは二人分じゃないでしょ?


ってサイズのお弁当箱。

何時に起きて作ったのかは解らないけど。


かなりの気合を感じてしまう。


これは確かにみなとが一人で持つには重いだろう。

そう思って僕が持つのを変わる。


「えへへー、ありがと」


「おもっ、何食分作ってきたんだよ」


「そんな作ってないし、まーくん、学校でたくさん購買部から買い食いしてるの知ってるから、たくさん作ってきただけ」


「そんな食べないよ」


なんか、すごく恥ずかしくなった。

すごくみなとに見られているのも恥ずかしいと思ったけど。

それ以上に自分の食生活が把握されているのが。

ものすごく恥ずかしかった。


「今日はまーくんに何着せよっかな」


「たのしそうだね」


「だってまーくん絶対細めの服着たらモテるもん、もうクラス中の女子から引っ張りだこ」


「それも嫌だな」


「でも、着せたいの」


「はいはい」


生返事をしながらみなとと服屋を目指して歩く。


みなとはだんだん苦しそうな顔になっていたので。

黙ってお弁当を持ってあげると。


「いいんだよー、まーくんは、もたなくても」


と言ってくる。


「いいよ、早く買い物おわしちゃおうぜ」


「うん、まーくんね、シャツとか好き?」


「どんな感じの? シャツっていっぱいあるけど」


「えっとね、ちょっとまってね」


みなとはそう言いながらスマホでなんか検索している。

おそらく両手が自由になった分。


検索しやすくなったかなとか。

少し良かったなと思っていた。


そうやって少し待っていると。

みなとが画像検索して探し出したと思われる。

画像を見せてきた。


なんかすごい細身のお兄さんがうつっている。


「えー? こんなぴったりなの着るの?」


「まーくん、本当にこういうの、きらいだよね」


「だってボタンも多いじゃん」


「ボタン苦手とか、ちっちゃい子じゃないんだから」


「それにきついやつは苦手なんだよ」


「そこを我慢して着てこそのおしゃれでしょうが」


「えー、そこは我慢しなきゃダメ?」


「重要だと思うよ、お姉さんに清潔感をアピールしなきゃ」


そんなことを口論しているうちに。

お店の前にたどり着く。


そんなおしゃれな店ではなく。

どこにでもあるチェーン店。


みんなよく買いに来る感じのお店だ。


そこに入るなり、みなとはかなり楽しそうに。

紳士服売り場へと向かっていった。


ぼくもそれに続いて服を見に行く。


みなとは目をキラキラさせながら。

色々物色していた。

よほどぼくにそういう格好をさせたかっただろうなって思いながら。

見つめていると。


みなとは一人で悩みはじめていた。

あれでもない。

これでもない。


これはちょっと色を合わせるには違う。

これだと地味になっちゃうなど。


かなり悩んでいる様子だった。


そしていろいろ服を見て悩んでいる。

その様子を遠目に見ながら。


少しどんな服を着させられるのかおっかなびっくりでいた。


待つこと数十分。


みなとは上着からズボン、靴下、革靴まで。

全身のコーディネートをもって、戻ってきた。


「いつも服買ってるから、それからサイズ合わせたから、ぴったりのはず」


「ありがとう、普段とは全然違う感じだね」


「そりゃあね、色々ネットではやりも見てるし、それにあった、今風の男の子を意識してるから」


「僕の今着てる服って今はやりじゃないの?」


「どちらかっていうと、おば様に言われて選んでるのは、小さなときから好きな服が多いかな」


「え? そうなんだ、全然気にしたことなかったよ」


「でしょうね、おば様はそのへんきにしない人だったからね」


「よし着てみるよ」


服を預かって。

みなとのコーディネートに沿った服を着てみる。

ボタンが多くて着づらかったりもしたけど。


なんとか袖を通して、新しい服に着替えていく。

そして試着室の鏡を見ながら思ったのは


まるでコーヒーショップの店員のようだなって事。


無地のシャツを着て。

ぴったりとしたズボンをはき。


これにエプロンでもしたら。

どっかのコーヒーショップで見た格好だな。


ってすごく思ってしまった。


最近の女子に人気なのはこういう格好なんだなと。


とても勉強になった。


試着室からでて、みなとに見せてみると。


「いいじゃない、やっぱそっちの方が似合ってるわよ」


「そかな? どっかの店で見たような感じで落ち着かないよ」


「そりゃそうよ、お店の人がおしゃれじゃなかったらがっかりするでしょう」


「なるほどね、そういう意味ね、納得したよ」


「それでいい? それでよかったら、会計しちゃうから」


「でも全身は高くない?」


「だいじょうぶ、おば様にきちんと許可取ってるから」


「うん、それじゃあお願い」


みなとにお願いして着替える。

脱いだのを渡すとみなとはそのままレジに行ってしまう。

会計が終わるまで少し待って。


終わってから袋詰めを手伝って。


それから外に出た。


外に出ると、かなり悩んでいたんだと思うけど。

もうお昼の時間だった。


お弁当をもって。

どこのスペースでお昼を食べるのか聞くと。


みなとはこの街のフリースペースの名前を出している。

確かにあそこだったら、誰も来ないし二人でゆっくりご飯を食べられると思って。


そのスペースに足を運ぶ。


みなとの予想は完全にあたり。

スペースは管理人以外いなかった。


ご飯食べますと声をかけ。


二人でご飯を食べ始める。

みなとは大きなかごから昼食を取り出す。

するとそこには、ずらっとサンドウィッチが並んでいた。


ハム、ベーコン、スクランブルエッグ。

オレンジマーマレードからイチゴジャムまで。


いろんなものをはさんだサンドウィッチがずらっと並んでいた。


いただきますをしてから二人で食べ始める。

もそもそサンドウィッチを食べていると。


みなとは下の段から、おかずを取り出した。

玉ねぎとにんにくの芽を牛肉と炒めたやつ。

味付けは焼き肉のたれ。


とてもおいしそうなにおいを放っていた。


サンドウィッチを食べながらも、さらに食欲がかきたてられた。


スペースの雰囲気をあんまり壊しちゃいけない。

と思って静かに食べていると。

みなとがジーっと見つめてくる。


いつもうちでご飯を食べると。

いろいろ言ってるし。


今無言で食べてるのが、すごい不安なんだろうなとか。

色々考えてしまう。


「みなとおいしいね、この甘いのは、みなとが食べるの?」


「ううん、まーくん好きだったじゃん、だから作ったの」


「そか、でもこんな多く食べれるかな?」


「そんな多くないよ、このサンドウィッチ一個作るのに食パン半分しか使ってないし」


「じゃあ、全部で何枚になるの?」


「10枚かな」


「そか、でも一人5枚って多くない?」


「おおくないよ、まーくんは無自覚に8枚とか食べてるときあるからね」


「なるほどね、それなら食べられそうだ」


なんて会話をしながら、ひょいひょいサンドウィッチを食べていく。

よく見ればパンを4等分したもので挟んでいるから。


確かにサンドウィッチ自体小ぶりである。


肉野菜いためと一緒にサンドウィッチをつまんでいると。


20分くらいでサンドウィッチはなくなってしまって。

気が付けば肉野菜炒めを二人で食べていた。

それも終わって。


二人でスペースにある自販機からお茶を買い。

二人でだらだら、午後のプランを考える。


「それじゃあまーくんは本屋にいきたいのね?」


「うんみなとは晩御飯の材料を買いたいんだね」


そういいながら二人で答え合わせすると。

バスで行ける近くのショッピングモールが思い当たった。


そこに行って、帰ろうという話になった。


二人でバス停に向かって歩きは始めた。

食べたものを片付け。


お手拭きで手を拭いて。

みなとにありがとうというと。


いつもの表情だった。


こういう時のみなとはほんと、うちの母親よりも。

すごく身近に感じるなと思った。


週末の晩御飯で見慣れた顔。


ぼくとお姉さんがデートするかもしれないからと言って。


世話焼いて服まで買うのに付き合ってもらって。

なんか、お返ししなきゃなって思った。


それはショッピングモールに行ってからでいいやと思いつつ。

二人でバスを待つのだった。

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