08【記録】
【録画:90年代心霊番組】
「いやいや、でも教授。手から刃物出すとか言っても、包丁とかカッター持って出たほうが早いじゃないですか。そんなの普通の刃物と見分けつかないことないですか?」
「それは勿論、そういう考え方もありますが、そういった本物の刃物は身体の中には収納できないでしょう?」
「インドのほうでナイフ飲むオジサンとか居ますよね」
「あれとは違います。そういう、手品ではないんです。彼らは見た目は普通の人間ですが、身体から刃物を出せるんです。武器人間というわけです。凶器が見付からない事件には、彼らが関わっている可能性が非常に高いと私は考えます」
「なんで捕まらないんですか? 刃物が出せる云々以前に、それで殺傷事件起こしてるなら犯罪ですよね」
「私が独自で行った調査では、被害届が出されていないものが幾つかありました。彼らは事件の痕跡を残さない場合が多いので、あまり大きなニュースにならないんです。目撃証言も二十年前の七十年代に比べるとすっかり減りましたし、彼らは人間に擬態して社会に溶け込むことを得意とするので、ずっと昔から表舞台に出てくることなくのうのうと暮らしているんです」
「ずっと昔って、そんなに前から居るんですか? いつぐらいから?」
「少なくとも江戸時代、戦国時代には今の倍以上存在したと思います。
「これは話が大きくなってきましたねえ!」
「教授はなんでもかんでも結び付け過ぎなんですよ。刃物がくっついてたら、なんですか、その、武器人間? 全部それじゃ暴論もいいとこですよ」
「あなただって光って飛んでればなんでもUFOって言うじゃないですか。そっちのほうがよほど無分別だ」
「未確認飛行物体を未確認飛行物体と言って何が悪い。あと訂正しておきますが、光ってないUFOもあるし、着陸してるUFOは飛んでない! UFOは全部光りながら飛んでるとかいう固定概念、どうにかしたほうがいいですよ!」
「あなた方が出してくる写真や映像が悉く光って飛んでるからでしょうが!」
「それは教授が見た映像がたまたまそうだっただけで、飛んでないのや光ってないのもたくさんありますからね!?」
「飛んでない未確認飛行物体ですか」
「いや、別に今はUFOの話はしてないんですよ。私が言っているのは、刃物を自在に出せる人間が居て、彼らは時にその刃で以って我々に危害を加えてくる、ということです」
「ええ!? 危ないじゃないですかそんなの」
「そう。危ない。危険なんです。だから
「でもその、知人や友人が武器人間? だったからって、どうしようもなくないです? 居たとして。仮に、そんな人間が存在したとして。事件起こしてなきゃ普通の人間なわけでしょ? だったら別に、ねえ?」
「まあちょっと変わった芸のある人間って感じですかね」
「そんな簡単な話じゃないんです。そういう人間が居るなら、メカニズムを知りたいと思いませんか。解明したくないですか? 病気なら治せるかもしれないし、何か特殊な、そういう人種なんだとしたら、調べることによって新たな発見ができるかもしれない。身体から出る刃物だって、もしかしたら骨とか、爪や歯みたいな、何か説明できるもので構成されてるかもしれないじゃないですか。だから私は調べてるんですけどね」
「で、教授が撮影したという武器人間の写真が、こちらー…?」
「いやいやいやいやいや、教授、いやいやいや! はっきり写り過ぎでしょ、完全にピースしちゃってるじゃないですか! しかもこれ、東京タワーで撮ってるじゃないですか!」
「旅行写真か!」
「これならまだ先生のUFO写真のほうが信憑性高いなァ」
「ちょっと待ってくださいよ、あんなのと一緒にしないでください。これは正真正銘本物の、」
「失敬だなキミィ! 私のUFOはちゃんと本物だ! そんな心霊写真にもなってないただ刃物持ってる写真で何を証明しようって言うんですか!」
「しょうがないじゃないかよく見えるように撮ったらこうなったんだ!」
「えー、この話はここまでにして頂いて……ではここでいったんCMに。CM明けたら、次の検証は、日本列島を震撼させたあの伝説の怪談、口裂け女について!」
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