5 宣告
美玖と如月は何かを誓い合ったようだ。
俺はその姿に苦笑しながら.....如月を見送ってから。
親父と美玖と俺と美子さん。
その4人で向かい合っていた。
真剣な顔で、だ。
親父は、そうか、と真剣な顔をする。
俺達は告げた。
美玖は重度の白血病だと親父に、だ。
親父は.....唇を噛む。
そして美玖を見る。
「美玖。それは本当か」
「.....うん。お義父さん。本当です」
「.....美子。お前を責める訳では無いけど.....少なくとも俺には話してほしかった。幾ら美玖の望みでも、だ。そんなに信頼出来ないか?俺は」
「.....あなた。.....本当に御免なさい.....」
やっぱり話すべきだったわ.....。
美子さんは涙を流しながら号泣し始めた。
俺はその姿に背中を美玖と共に摩ってあげながら。
親父を見つめる。
余りの悔しさに何も言えない様だった。
そりゃそうだろうな.....俺だってショックだしな。
俺は.....その様子を見ながら.....親父に声を掛けてみる。
「父さん。.....多分.....心配を掛けさせたくなかったんだ。だから.....だよ」
「.....そうだな。.....お前の言う通りだ。.....でもな.....俺は信頼されてないのか、とショックを受けてしまう部分もある。.....だから話してくれた方がよかったかもしれない。.....だが」
美玖を、美子さんを見つめる親父。
それから少しだけ笑みを見せる。
よく話してくれた二人とも、と、だ。
美子さんは.....号泣が止まらない。
そして美玖も涙を浮かべた。
「.....こんな状態になるとは思わなかった。だけど.....今は家族で何が出来るのか。考えていこう。明日は必ず来るしな。まだ時間は有ると思うから」
「そうだね。父さん」
「うん」
先は見えない。
だけど、と思っていると。
美玖がゲホッと咳き込んだ。
相変わらずの咳の様だ.....、と思った俺が馬鹿だった。
美玖は手に思いっきり吐血する。
「.....え.....」
「.....あれ.....?」
「美玖!!!!!」
血液の量はそうでも無い。
しかし.....!
美玖は愕然として前を見る。
何だ一体!?、と思う。
そして俺達は慌てて焦る。
「救急車.....」
「.....何で.....」
いやいや!嘘だろオイ!、と俺は愕然とする。
そして俺は直ぐに椅子をぶっ倒しながら119番した。
そしてそのまま美玖は救急車で運ばれる。
それから医者の診察を受けたが.....。
☆
「.....正直に言います。.....お身体の状態が本当に宜しく無いです。.....それもかなり、です」
「.....!」
「.....抗がん剤は止めてからかなり経ちますよね。.....お身体に過負荷が掛かるかもしれませんがそれでも抗がん剤治療をやった方が良いかも知れません。血中の中の白血球の濃度が高いです。.....かなりキツイと思いますが.....何も言わないのは凄いと思います」
いや、ちょっと待て勘弁してくれ。
何でこんないきなり。
時間はまだある筈だろ。
何でこんな.....そんな馬鹿な。
考えながら俺は愕然としつつ前を見る。
床を、だ。
目の前が.....歪む。
そう考えているとこんな事を.....美子さんは言った。
意を決している様だ。
号泣していたが、だ。
「.....美玖はあとどれくらい生きていけますか」
「.....おい.....美子!」
「.....あなた。.....聞かないと。せめてもの.....覚悟を決めたいわ」
すると医者は美玖の診断結果の表を見ながら。
顔を俺達に向けてくる。
それなりの覚悟は宜しいですか、と、だ。
俺は.....唇を噛む。
そして医者は顎に手を添えて俺達を再度見た。
「.....正直、お命は半年持つか分かりません」
「.....え.....」
「.....美玖さんの身体はボロボロです。.....正直に言って.....宜しく無いです」
目の前が急速に暗くなっていく。
ちょっと待って.....くれ。
え?半年で死ぬの?嘘だろお前。
考えながら俺は.....天井を見るが。
暗くなっていた。
あまりにも暗すぎる。
親父は口を開けて唖然としていた。
そして美子さんも.....涙を流して嗚咽を漏らす。
「半年って.....いや。ちょ、ちょっと待って下さい。.....嘘ですよね」
「患者様のご家族にこの様な宣告の仕打ちをするのは.....毎回心が痛みます。.....しかしながら嘘は絶対に吐いてないです。私はそんな事は致しません」
正直に言って私も本当に心が痛みます。
と医者は.....俯く。
俺はその姿に.....絶句した。
マジに何も言えなくなる。
美玖が居なくなる。
「俺が死ねば良かったんだな。.....俺が」
「.....裕太郎。それは言っては駄目だ」
「.....父さん?」
「.....美玖が悲しむ。.....お前が死ぬと言ったら」
「.....」
そうは言ってもな.....俺が死ねば良いのに、と思う。
あんな天才がこんな仕打ちって。
考えているとスマホにメッセージが入る。
丁度吐血して混乱していて弥太郎とかにもメッセージを送ったのだが。
何というか着信が鳴りやまない。
俺はヨロヨロと立ち上がってからその場を無言で後にする。
医者とかに背を向けて去る。
すると親父が一言、声を掛けてきた。
「裕太郎」
「.....何だ。父さん」
「.....今は何も考えれないかもしれないけど。これだけは言える.....美玖ちゃんはお前にも笑ってほしいって思っている筈だ。悲しむだけなのは絶対に止めろ」
「.....」
少しの言葉を少しだけ立ち止まって聞いてから診察室のドアを閉めてそのままその場を後にした。
そして俺は1メートルぐらい歩いてから緑色の床の。
反射して光っている廊下で汚いとかそんな事も考えれないまま。
その場で膝を崩して蹲って丸まって涙を流して嗚咽を漏らす。
床を引っ掻く。
こんな馬鹿な事って.....あるのかよ.....。
折角仲が良くなったのに。
家族として仲が良くなったのに。
「神様。これ程アンタを憎んだ事は無い.....。何で美玖なんだよ。俺達が何かしたのか?何かしたの.....か。.....それなら俺が悪かったって.....美玖にこんな仕打ちするなよ」
正直.....な話。
嘘告白でイジメられていた頃も神様を呪ったが。
今は呪うどころか消し飛ばしたいぐらいだ。
この世の全てから一遍も無く。
本気で何で美玖なんだ。
意味が分からないし.....余命3か月。
馬鹿野郎かオイ。
意味が分からなさすぎる。
「.....」
通行人の患者の視線を感じる。
恥ずかしい事だとは重々承知だ。
だけどゴメン疲れた。
顔上げれないや、と視線にも応える事が出来ず。
俺は顔を冗談抜きで上げれなかった。
目の前に雫で水溜まりが出来るが。
そんな事も気にする事が.....出来ない。
床が汚いとかそんな事も考えれない。
俺はどうしたら良いのだ本気で。
どう生きたら良いのだ。
「裕太郎さん?」
「.....?.....お前.....理保?」
「.....どうしたんですか?.....その.....」
理保が目を丸くしながら目の前に立っている。
どうやら.....病院に用事があった様だが。
俺は.....目を袖で拭いながら.....見る。
情けない姿を見せてしまった。
「.....理保。どうしたんだ。病院に何故.....」
「私ですか?私.....そうですね。突き指したので.....でもどうされたんですか?それは良いですけど.....」
「.....理保。知り合いだしお前だけに一応知らせておく。.....口外するなよ」
「.....え?」
俺は理保の差し出してきた手を掴んで立ち上がる。
それから.....理保に向いた。
そして全てを打ち明ける。
美玖が白血病であと半年しか生きられない、と。
すると、え.....、と理保は愕然とした。
そして混乱し始める。
「.....嘘ですよね?えっと.....ちょっと待って下さい。頭が混乱する.....」
「嘘を言うか?この場で。.....マジだ。.....ゴメンな。ジョークなんか言えない」
「.....え.....え」
理保は口元に手を添えて涙を浮かべた。
嘘、と呟きながら、だ。
俺は唇を噛みながら、お前に知らせれば良かったけど.....間に合わなかった、と吐き出す様に言葉を発した。
「.....吐血して運ばれたんだ。美玖は」
「.....そんな事って有り得ます?そんな事って.....」
「.....俺も嘘だと信じたい。.....だけど現実だと。.....アイツは精一杯今を生きようとしているから」
「.....美玖ちゃんは何処に居るんですか?会いたいです」
「病室で寝てるよ.....俺達もまだ会ってない.....」
信じられないです、と涙を拭うが大粒の涙を流す理保。
俺はその姿に、そうだな、と頭を撫でた。
理保は、そんな事って、と嗚咽を漏らし始める。
「.....有り得ない.....嘘.....有り得ない.....」
「.....今忙しく無いならお前も会ってくれ。.....多分アイツは嫌うだろうけど.....」
「.....はい.....」
理保は涙が止まらない様だ。
歩く途中でもずっと泣いている。
優しい子だな、って思う。
そして俺と理保は病室へ向かった。
俺の大切な義妹の部屋に。
それから.....目の前の病室のベッドで横になっている美玖を見る。
今は寝ていた。
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