3 弥太郎の過去と美玖の才能と

サボってやって来た弥太郎と美穂を見る。

教師達にはコレラとか腸チフスになったと言い訳したそうな。

コレラとか腸チフスっておま、と顔を引き攣らせて考えたが.....まあ良いかと思いながらリビングで弥太郎と美穂を迎えていた。


美子さんは家事などの仕事をしている。

そして弥太郎が切り出した。

真剣そうな顔で、だ。


「美玖ちゃん.....まさかそんな事になっているとはな。そしてそんな事を隠していたとは思わなかったよ」


「想像出来なかった。.....とっても悲しい.....」


「.....これが全部アイツが隠していた計画だったとは見抜けなかった俺もそうだが.....馬鹿だったな。もう少し踏み込めば良かったんだ。美玖の全てに」


「いや。自分を責めんなよ。裕太郎。お前のせいじゃねぇ。ましてや美玖ちゃんのせいでもない。.....これは全部、病気のせいなんだからな。寧ろ責めるよりかは今は考えるべきだ。どう美玖ちゃんに接するかを、だ」


弥太郎はそう言いながらビニールに入った桃の缶詰を持って来る。

大量買いしていた。

俺は、すまんマジに。今度お礼するわ、と告げる。

すると美穂が、そんなの必要無いよ、と笑みを浮かべた。

そして.....柔和になる。


「.....美玖ちゃんに持って来たいって私達が思っただけだから。全然平気。お金なんて問題無いよ。.....私は裕太郎の仲間の家族だし」


「そういうこった。だから気にするなよ。まあ無いけど俺達が危険になったらそれなりに助けてくれ」


「.....お前らと幼馴染で良かった。.....本当に。このままでは挫けていたかもだから。本気で」


「おう。挫けんな。俺も居るし。ダチが危機なら救うぜ幾らでも」


「私もね」


真面目な感じで俺を見てくる弥太郎と美穂。

俺は.....その姿に、すまない、と言葉を発した。

そうしていると電話が掛かってくる。

その人物は.....美玖だった。

俺はスマホをスピーカーにしてみる。


「もしもし。どうした」


『美穂さん達まで来たの。何で』


「それはお見舞いをする為だよ。美玖ちゃん」


『.....私は別に必要無いですよ?.....何時も通りですから』


「まあそう言うな。.....俺の妹みたいに.....人生が暗くなるぜ」


弥太郎は言いながら自嘲気味に笑う。

そんな弥太郎を見ながら.....弥太郎の妹で自室で首を吊って.....人間関係の悩みで自殺した杉山優子(すぎやまゆうこ)さんを思い出す。

優子さんの遺体を当時、弥太郎が見つけた。


そして.....弥太郎は傷を負ってしまったのだ。

心に深い傷を、だ。

だから俺達の中で最も傷付いている人間と称しているのである。

弥太郎は傷付き過ぎたのだ。


では何故仮にも明るいのか。

それは.....簡単。

弥太郎は(怖い)と思っているのである。


それはどういう意味か。

説明すると.....弥太郎が優子さんが死んでそして。

周りがまた誰か死ぬのではないかと思っているのだ。

だから怖いとなっている。


それからもう一つ。

優子さんの分も背負って今を生きよう。

そうすれば天国から見てくれるだろう、と。

だから、はっちゃけよう、という事にしているのだ彼は。

なので弥太郎は.....こんな人間なのだ。


言い忘れていたが弥太郎の首には首飾りがある。

それは.....優子さんのお気に入りだった雪型のペンダント。

俺はその姿を見つつ会話している弥太郎を見る。


『.....弥太郎さん.....』


「人生ってのは楽しく生きないと意味無いぜ。だから楽しく生きようぜ。アッハッハ!」


「弥太郎.....」


「.....弥太郎くん.....」


つう訳で。

俺としてはこれから病を恐れずに生きていけるようにサポートするぜ。

そう言えば如月ちゃんも支えるって言ってたから。

だから安心しな、と弥太郎は笑顔を浮かべる。

俺は.....何か色々と変わらずだなコイツは、と思いながらも弥太郎に感謝の言葉を述べた。


「有難うな。弥太郎」


「当たり前だ。お前の義妹なんだから。そうなれば俺達の義妹でもある」


「そうだね」


『.....』


グスッと音がした。

だが直ぐに、別にそんなの必要無いです、と強がる。

今ので強がっても意味無いんだが。

考えつつ俺は苦笑いを浮かべながら.....居ると。

そういえばお兄ちゃん。私って動画ではやっぱりもの足りないんだけど、と言い始め.....オイ。


「オイオイオイオイ!!!!!」


「?.....物足りないってのは?」


『何でも無いですよ。アハハ』


「.....」


コイツは!

エッチなのは相変わらずだな!

いい加減にせぇよコイツ!


俺は思いながら、美玖。コイツ等が居るから勘弁してくれよ、と話す。

流石にエッチなのはバレたくない。

コイツが、だ。


「何だか良く分からないけど動画見るの?」


『はい。それは物凄いど.....』


「お前もう喋んな!!!!!」


AVだろどうせ!!!!!

言っているのはよ!

勘弁してくれ!


考えつつ俺は額に手を添える。

それから.....盛大に溜息を吐いた。

弥太郎も?を浮かべている。


「ったく。それは良いけど.....今日は元気なのか」


『それなりにはね。アハハ。鼻血とか歯ぐきからの出血が時折あるかな。.....あと疲れやすいね』


「.....そうか」


白血病の症状なのだろうな。

考えながら俺は拳を握る。

そうしていると、それはそうと皆さんに感謝したいんですが、と美玖は切り出した。

それから、いっぱい買ってきてもらったみたいですから、とも言う。


「.....美玖?」


『ふっふっふ。お兄ちゃん。聞いて驚く勿れ。私、小説の短編書いたの。それが雑誌に載ってお金が入ってきたよ』


「.....すげぇなオイ!?は!?」


「マジで!?それってかなりスゲェじゃん。俺馬鹿だから何も出来ないし.....」


「凄いねぇ!」


何時の間にそんな事をしていたんだよコイツ。

と思ったが.....そういやネットの時代だしな、今。

そう考えてしまった。

だから出来たんだな、と。


『少しだけでも生きた証を残したいから』


「.....美玖.....それは.....」


『だから.....短編は過激なものを応募して載せたよ♪』


「いや。悪い。褒めた俺が馬鹿だった。.....お前!!!!!」


何やってんだコイツは!

そんなもん俺達が読めないだろうがぁ!!!!!

俺は額に手を添えてその様に思う。


美玖は可笑しいのかケラケラ笑った。

まあ.....コイツがやりたい事があるなら良いけど。

思いつつ俺は.....少しだけ笑みを浮かべてから.....スマホを見た。

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