第二章 美玖の最大の告白
美玖の計画
1 美玖が引き篭もりになった最大の理由
弥太郎が美穂に告白するという。
その言葉は俺にとってはいきなり風が吹くぐらいに衝撃だった。
だけど俺は応援する事にする。
でも弥太郎は、残念な結果にはなると思う、と苦笑していた。
その理由は.....簡単だった。
弥太郎曰く。
美穂が俺を好いている可能性があるという。
「まあそういうこった。だから俺は失敗する。.....その時には守ってやってほしい」
「.....分かった。.....だけどお前も協力してな」
「当然。アハハ。つーか守るってのは言い過ぎか。格好つけ過ぎっていうか」
「まあ確かにな」
そんな感じで教室に戻る。
その道半ばで.....俺の教室にやって来た美穂、如月、美玖にメッセージを送ったが返事が無いのだが。
何処で何をしてらっしゃるのだろうか。
もしかしてまだ俺を探しているのだろうか.....。
「にしても美玖ちゃんは相変わらずだねぇ。可愛いじゃん。性格も相当に変わってからまぁ」
「まあ確かにな。.....あんなに変わるとは思ってなかったけどな。お前も知っている様にな」
「.....だな」
そうして教室に帰って来ると。
俺の机の上に横に吊り下げてあった筈のカバンが置かれていた。
何だこりゃ?、と思いながら何処から帰って来ていた美穂を見掛けたので声をかけてみる。
「美穂。何がどうなっている?」
「あ〜。えっとねぇ。美玖ちゃんは連れて行かれちゃったよ?何だか置き土産してから教師の人達に」
「如月の行方は知っているか?」
「如月ちゃんも私に伝言を残して教室に帰ったよぉ?『先輩の馬鹿。心配したのに戻って来なかった』だってぇ」
それはまた結構な。
後で叱られそうだな。
全くどいつもこいつも。
考えながら俺は鞄を見つめる。
この移動している鞄。
何だか嫌な予感がするんだが.....、と思いつつ開いてみる。
そこには.....ラノベが入っていた。
「.....これ.....」
「ラノベか?」
「ああ.....でも何だろう」
弥太郎が興味深そうに俺を見てくる。
それから配慮してくれたのか去ってくれた。
新品そうなタイトルも見た事の無いラノベが入っている。
俺はそのラノベのページをめくって見る。
そこには、(お兄ちゃんへ)、と書かれた手紙が入っていた。
白い便箋で、だ。
何だこりゃ。アイツらしくもないな。
考えながら更にその白い便箋を開いて見る。
(大切なお兄ちゃんへ。実はね。性格が変わったのには重大な理由があるの。.....私ね。.....1年ぐらい前に医者行ったら白血病って言われた。だから私、こうやって変態になったりしたんだよね。健康な身体だったんだけど何だか違和感があって検査したの。それが丁度.....1年前だったかな。口頭で告げたかったけどそれは何だか違和感があったからこうして手紙を贈ります)
何か思考回路が一瞬にして停止した。
いやいや。待て待て。
いきなりだな。
白血病って何だよ。
意味が分からないんだが、と思うが。
世界が音を立てて崩れる気がした。
ちょっと待って。
理解出来ないんだが.....、と思って俺は鞄を持った。
そしてそのまま駆け出す。
弥太郎と美穂が、どうしたの!?、と言ってくる。
それに対して、体調悪くなったから帰る!、と言った。
「オイオイ!?今からかよ!?」
「今からでも後悔したくねぇし!」
そうして俺は駆け出して行く。
嘘だろお前.....。
いや.....冗談だよな?美玖。
お前が根本から引き篭ったのってそれなのか.....?
何で早く言わないんだよ!
「ハァハァ!」
上靴を脱ぎ捨てた。
靴箱に入れんのも面倒臭い。
そして自宅まで駆け足で帰る。
それから駆け上がって行ってからドアを開け放つ。
そこには.....またエッチな事をしていた美玖が.....ってそんな事はどうでも良い。
今はそんな事ではない。
俺は鞄を叩きつけてから美玖を見つめる。
「お、お兄ちゃん?何?」
「.....どういう事だ。お前.....何で黙ってたんだよ」
「.....ああ。あの手紙読んだんだね。.....この事はお母さんしか知らないし」
「ふっざけんなよお前!!!!!コラァ!!!!!」
威圧する俺。
ぶん殴りたくなった。
それは美玖では無い.....。
俺自身を、だ。
気が付かなかった俺自身を、だ。
「.....何でこんな.....」
「1年と半年ぐらい前に鼻血が凄かったんだよね。それって興奮しているせいかな、って思ったんだけど。.....でも違ったみたい。アハハ。だから準備期間として引き篭ったってのもあるの」
「.....学校に行ってないのは.....まさか」
「抗がん剤治療をお兄ちゃんとかに隠す為だね。主に」
「髪の毛が抜けてないのは.....」
「慢性の末期の白血病だって。.....治療は難しいそうだよ。だからあまり使ってないの。抗がん剤」
こんな馬鹿な事ってあるのか。
それでコイツはやたらに俺に接触し。
エッチになって。
そして引き篭っていたってか。
信じられないんだが。
どう反応したら良いのだ俺は.....?
考えながら目の前の服装を整える美玖を見る。
「.....美子さんが自由にしたら良いって言っているのは.....」
「そうだね。これが理由かな」
「.....有り得ない.....夢じゃないのか」
「違うよ。夢じゃないよ。.....骨髄移植って提案もあるんだけどね」
まあでももう無理かなって思うんだ。
結構.....放置していた部分もあったしね。
学校行っていた時からたまにおかしかったから。
とヘラヘラしながら告白する美玖。
コイツ.....。
「.....何でだよ」
「?」
「何でお前はそんなにヘラヘラしていられるんだ!!!!!俺は.....!」
「.....今告白したのには理由があるの」
「.....は?」
お兄ちゃん。
実はね、私は余命があと.....そんなにないみたい。
大人になる前に死んじゃうかもね。
と真剣な顔をする。
だから徹底的に楽しみたいなって思って告白したの。
と笑顔を見せる。
膝が崩れた。
気が付けば俺は靴のままこの場所に居たみたいだ。
「だからまあエッチな事は続けるよ♪宜しく」
「.....」
「そんなに落ち込む必要は無いよ。お兄ちゃん。だって私は今、楽しいから」
「.....」
ニコニコする美玖。
何も言えなくなった。
ただエッチな義妹だと思っていたのに。
こんな事ってあるのかよ神様。
アンタって居るのか?本当に.....。
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