第13話 美玖の感謝

何で俺は美玖と風呂に入ってんだか。

考えながら俺は赤面しつつ美玖の頭を洗う姿を見る。

完全に女性だ、身体は。


昔のクソガキでは無いのだ。

俺は.....また目を背けながら念仏を唱える。

すると美玖が風呂に入ってきた。


「落ち着いたみたいだね。下半身」


「.....そ、そうですね。はい.....」


「.....別に兄妹で風呂に入るの珍しく無いよね?何でそんな顔するの?」


「いや。お前。ちょっと勘違いしていませんか?俺達はもうかなり歳なんですけど」


「.....年齢は関係無いよ?だって兄妹だし」


説明になってない。

俺は.....額に手を添えながら美玖を見る。

すると美玖は俺に寄りかかって来た。

背を向ける感じで、だ。

何してんだ!


「お兄ちゃん。だいぶ私も大人になったでしょ?」


「.....そうですね。はい」


「.....同じセリフじゃない。.....何か別の事を言ってよ」


「.....お前な。この状況で何を言えと。無理だぞお前。俺は男なんだぞ。思春期の」


「私だって思春期なんだけど」


いや。だったら風呂に入るもクソも無いだろ。

何考えてんだよ。

考えながら俺は額に手をまた添える。

そして美玖を見る。

でもなぁ.....こういうの初めてだよな。


「.....兄妹でここまで仲が良いの良いよな。でも」


「.....そうでしょ?だったら大丈夫だよ」


「.....一緒に風呂に入るのは如何なものかと思うが」


「問題無いよ。私達は愛し合っているんだから」


「いや。俺は恋はしないって」


相思相愛とは言わない、と俺は話す。

すると、まあそれならそれでも良いけど、と前を向く。

それにしても本当に綺麗な身体だな。

スタイルも良いし肌が艶々。

何というか.....これがニートの身体か?ってぐらいだ。


「.....お兄ちゃん。私ね。実はきっかけが無いって言ったけど嘘なの。あれ」


「.....変わったきっかけか」


「そうだね。.....私は.....人生を考え直したの。考えたけどやっぱりこのままじゃ駄目だよね、って」


「お前が人生を語るとはな。早すぎやしないか」


「早くないよ。私の人生って勉強で汚染されたからね。人生ってこうあるべきとか考えられなかったから」


成程な。

美玖の親父さんのせいか。

確かにな.....。


美玖は出会った時、死んでたしな顔が。

真面目に、だ。

まるでその.....コイツ何?、みたいな感じだったし。


「.....だから私ははっちゃけようと思ったの。お兄ちゃんの為に」


「.....そうか。.....まあ俺も当初は美玖が嫌いだったからな。.....うん」


「まあ赤の他人が入って来るんだからね。それは嫌いになるよ普通。大体先ずこんなに仲が良い兄妹って珍しいよね」


「ああ。かなり珍しいと思う。本当に」


「有難うお兄ちゃん。私を見捨てないでいてくれて」


俺に笑みを浮かべる美玖。

当初から見捨てるつもりは無かったが。

でも挫けそうになった事はあった。


それは.....簡単に言えば美玖がいつまで経っても馴染んでくれないから、だ。

思いつつ目の前を見ていると。

ぶるぶると美玖が震えた。

シバリングの様な、だ。

ん?


「それはそうと。.....私.....何だかおしっこ行きたい」


「.....は!?」


「.....このまま風呂場でおしっこしちゃっても良いかな」


「良くない!!!!!これ以上の恥ずかしさは勘弁してくれぇ!!!!!」


そして美玖を風呂場から追い出してから。

俺は1人になって考える。

そうだよな。

美玖は.....変わってくれたよな。

そう考えながら、だ。



俺の過去の話は本当に壮絶だ。

併しながら美玖も壮絶だ。

互いに似た者同士だと思う。

俺は考えながら.....風呂から上がってから。

服を着て頭をタオルで拭いていると如月が覗いてきた。


「.....先輩の変態」


「.....如月.....」


「い、幾ら何でも年頃の女の子とお風呂なんて.....最低です」


「.....俺にどう止めろと。無理があったぞ.....」


「ふーん。ふーん」


如月は鬼の様な顔をしていた。

俺はその姿に.....額に手を添える。

マジにどうしろってんだよ。

誘拐されたんだぞ俺は。

無理矢理に、だ。


「.....わ、私だってその気になれば」


「ならんで良い!その気に!!!!!アイツの羞恥心の無さは異常だから!!!!!真似すんな!!!!!」


「そうですけど。でもその。.....何だかおし.....いや。惜しくないですが」


「.....お前。今とんでもない事を考えたな?」


「.....至って平然です」


先輩がエッチすぎるだけです。

と俺を叱責してくる。

何でだよ。


俺のせいか、オイ。

勘弁してくれよ。

考えていると変態が来た。


「お兄ちゃん。如月さん。何やってるの」


「何でもない。美玖」


「そうです。何も無いです」


「.....ふーん。内緒話は良く無いからね」


そして美玖は俺を見てくる。

四角い伊達眼鏡で、だ。

俺はその姿に苦笑しながら拭いたタオルを下に置いた。

それから美玖を見る。

というかコイツ部屋から外に出ても大丈夫なのか?


「大丈夫か?美玖。部屋から出ているが」


「.....別に大丈夫だよ。お兄ちゃん。如月さんはもう存在感無いし」


「失礼ですね!?」


「存在感0ってか。お前失礼すぎ.....」


「?.....だってそうでしょ?私は.....如月さんとは協定を結んだんだから。私は知り合いじゃ無い人はマズイけど如月さんは知り合いだし」


俺達は顔を見合わせて目を丸くする。

そして如月が、そうなんだね、と笑みを浮かべた。

少しだけ美玖は恥じらってからそっぽを向く。

それから.....さっさと行ってしまった。

俺はその姿を見ながら.....苦笑して如月を見る。


「.....良かったな。如月。まあ.....一応」


「.....ですね。有難いです」


「.....取り敢えずは解決かな。これで」


「はい」


睡眠薬とか盛らなければ大丈夫です。

と笑みを浮かべる如月。

俺は.....その様子に苦笑いを浮かべる。

それは確かにな。

考えながら俺は如月の言葉に頷く。


「.....あ。そうそう。先輩って.....本当に美玖さんと仲が良いですよね。.....どうやったら仲が良くなったんですか?」


「.....どういう意味だ?」


「.....私の家庭ですね。.....女の子を預かっているんです。小学生の、です。.....でも全然、私に懐かないんです。どうやったら懐くのかなって」


「.....そうなのか?.....どうしたらと言っても.....」


役に立たない。

そもそもアイツがエロ過ぎて参考にならない。

俺は.....顔を引き攣らせて思い出してそれを隠しながら如月に向く。

如月。俺達も仲が良くなったのは最近だ、と答えた。


「だから参考にならないと思う。.....本当に御免な。俺が仲良くしようと言い出した訳じゃ無いんだ」


「そうなんですか?.....うーん。それだったら仕方が無いですね。.....どうしたら良いんだろう」


「.....でも一つだけ言える事がある。.....それは諦めない事だな。見捨てない事だ」


「.....先輩.....」


風呂の中でアイツはそう言った。

見捨てないでくれて有難う。

その様に、だ。

だから俺は諦めるのが一番悪い事だと。

その様に錯覚したのだ。


「お前の助けになるかどうか知らないけど。今度会ってみよう」


「はい。ですね。助かります」


「.....それじゃリビングに戻るか」


「.....ですね。はい」


それから俺達はリビングに戻った。

そして.....美玖や美子さん、親父を見る。

何というか.....良い感じだな。

そう思いながら、だ。

この先、どうなるか分からんけど。

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