第10話 私もクッキー食べたいです.....。

如月四葉。

俺と如月は昔、如月の母親の妊婦さんを救った(救われた)理由で知り合った。

その為に如月に懐かれている。


それから今に至っている。

その如月だが.....嫉妬心を燃やして俺の家に泊まるとか言い出した。

そして.....泊まる為の準備をし始める。


俺はその事に愕然としていたが結局、冗談とかじゃなくて本気で泊まりに来た。

信じられないんだが。

その、明日学校なのに、だ。


俺は顔を引き攣らせながら一旦家に帰ってから荷物を持って来た如月を見る。

如月は俺に見せびらかす様に荷物を見せてくる。

そしてニヤニヤする。


「この通り。.....泊まりますので」


「お前.....今のこの状況でこの家に泊まるとどっかの誰かに殺されるぞマジに」


「それは何の話ですか。.....えっとですね、泊まると言ったら泊まります。有言実行の女なんです私は」


「.....」


困ったというか参った.....。

俺は額に手を添えてから背後を見る。

そこには美玖の母親がニコニコして立っていた。

俺の義母であり美玖の母親の美子さん。


顔立ちは本当に美人の顔立ちをしており、美玖に似ている。

そして身長も高く、おっとりしている。

足がスラッとしている様な、だ。

そしてトドメに50代なのに白毛が全く無い若々しさ。


それからもう分かるかもしれないが.....美玖の名前は美子さんの名前を、美玖の父親の名前を一文字取っている。

あまり触れてはならない禁忌であるが。


何故といえば美玖はその事に触れられるとかなり怒るので、だ。

今はどうかは分からない.....が。

なので気を付けなければいけない。

俺はその事を思い出しながら.....複雑な顔をする。


するとそんな感じで居ると美子さんが、それにしても嬉しいわ。ゆうくんにこんなに積極的にアタックしてくる女の子が居て、と嬉しそうな顔をする。

因みにゆうくんというのは俺だ。

俺と仲良くする為にそう言い始めたのである。


俺は苦笑いを浮かべながら如月を見る。

如月はニコニコしながら律儀に立っていた。

それもまるで.....何処ぞの位の高い令嬢の様な礼儀正しく、だ。

つまり.....美玖より劣ってない事をアピールしているものと思われる。

俺はその姿にまた顔を引き攣らせた。


「今回は宜しくお願いします。.....お義母様」


「まあまあ!そんなに律儀にならないで下さいな!良い子じゃない。ゆうくん」


「.....えっと.....はい。そうですね.....」


俺は赤面しながら頬を掻く。

すると天井から思いっ切り、ドォン!!!!!、と音がした。

俺達は揺れた天井と電気を見る。


あらあら!あの子も喜んでいるわ!、と満面の笑顔の美子さん.....え。

いや.....それ違うと思いますが.....?

考えながら居るといきなり如月が俺の腕に絡みついてきた。

まっ!、と美子さんが言う。

オイオイ!?


「い、いや!お前!アイツが見ているかもしれないぞ!?」


「今はそれは無いと思います。.....見ているにせよ私は先輩が好きですから全然構いませんよ?アハハ。.....本当に好きですから」


ドォンドォンドォンと花火でも鳴っているかの様な音が鳴り響く。

完璧に怒りに怒っている。

俺は青ざめながら、あらあら喜んでいるわね、と笑顔になる美子さんを見つつ取り敢えずと溜息を盛大に吐いた。

落ち着かせる意味も持って、だ。


そしてリビングに向かう。

すると大体の予想通り電話があった。

俺は苦笑いを浮かべながら顔を引き攣らせつつ電話に出る。

そして力無く応答した。


「....もしもし」


『お兄ちゃん。本格的に殺して良い?その女。鬱陶しい』


「.....良くないってばよ」


『何なのそのビッチ。本当に鬱陶しいし.....盗人め。私のお兄ちゃんを.....絶対に許さない』


いや、もう頼むから仲良くしてくれよ。

ホンマに、だ。

勘弁して下さいませ.....。


考えながら居ると美玖は、感情がモヤモヤしてお兄ちゃんの写真でクリ◯リスを撫でる◯ナニーがまともに出来ないし。

そして、イけない、と言う。

やっぱり変態だな。

コイツ何処までも.....。


「あのな。とにかく落ち着けお前。.....本当に仕方が無いだろ。アイツが帰らないし。今日1日だけ勘弁してくれよ。無理に帰したら何言われるか」


『.....お兄ちゃんのばか』


「.....すまんって。ラノベも貸すし今度、秋葉にも行くし。それで許してくれ」


『.....約束だよ?絶対にだよ?』


「約束するって。.....じゃあな切るからな。取り敢えず」


少しだけ心配げな声で、うん、と言いながら切れた。

そして俺はそれを確認してリビングに入る。

お菓子とお茶と共に美子さんと如月の2人は会話しており。

話を止めて俺に向いてきた。

ニコニコしている。


「ゆうくん。.....彼女.....昔、貴方にお母さん救ってもらったんだって?」


「そうですね。.....あれ?話していませんでしたっけ?」


「御免なさい。忙しくて少し記憶が疎かになっていたわ」


「成程っす。.....取り敢えずはそういう事です」


「それでゆうくんを好いているのね。この子。とても良い子じゃないかしら」


そんな事ありませんお義母様、と遠慮な感じを見せる如月。

コイツ本当に人に接触するの得意だよな.....。

流石はスクールカースト上位(勝手な思い込み)だ。


そんな顔しているしな。

考えながら.....如月を見る。

すると如月は、そうだ!お義母様とゆーちゃんにクッキー焼きます!、と材料を取り出してきた。

俺は、え?、と思ったが。

後から、初めから計画していたなコイツ、と思った。


「え?お料理も出来るの?」


「はい。ゆーちゃんの為に練習しています!花嫁修行です!」


「あらまぁ.....もう抜け目が無いわね。このまま付き合っちゃいなさいよ。ゆうくん」


「そういう訳にはいきません.....」


俺は再び額に手を添えながら如月を見る。

可愛らしいエプロンを身に付けて髪を結ぶ。

やけに色っぽい。


如月め。

マジに攻略していっている。

義母さんも、だ。


本当に上手い.....何もかもが、だ。

俺は考えながら見ていると。

また電話があった。

電話主は.....オイまたかよ。

俺はスマホの通話ボタンを押した。


「.....何だよオイ」


『もしもし。お兄ちゃん。.....クッキー私も食べたい』


「いやお前.....焼いてもらえないだろ」


『.....クッキー焼くんでしょ』


「まあそうだけど!.....にしてもお前という奴は.....」


こんな時に限って傅くなよ。

俺は盛大にまた溜息を吐きながらスマホから耳を離してから如月を見た。

如月は?を浮かべている。

そんな如月に申し訳無さそうに言う。


「如月。すまないが義妹の美玖もクッキーを食べたいって言ってる。食わせて良いか」


「.....え?.....まあ良いですけど」


「.....すまん」


少しだけ驚きながら見開く如月。

その中で、でも条件があります、と人差し指を立てる如月。

これから先も.....多分仲良くは出来ませんがあまり恨みっこ無しでいきましょう、と口を開いた。

俺は目を丸くしながら、美玖.....だそうだ、と話す。

すると美玖は数秒間沈黙して、分かった。配慮する、と言葉を発した。


「.....それにしてもどうしたんだ?如月。心変わりしたのか?」


「.....まあ考えたんです。.....やっぱり私の義妹になるのだったら仮にも仲良くした方が良いなって」


「お前本気のガチで殺されっぞ.....」


そういう事かよ!!!!?

全然駄目じゃねーか!!!!!、と思ったが。

まあ.....仲良く出来るなら良いんじゃいか、と。

そう考えてしまった.....。

甘いのかな俺.....。

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