第6話 デートして

俺はリビングに戻って来た。

それから美玖のクラス委員という理保さんに飲み物を出しながら額に手を添えて盛大に溜息を吐いた。

困ったもんだな畜生め.....。

あの野郎、ここまで毛嫌いするとは.....。


「あ、あはは。大丈夫ですか?」


「.....大丈夫じゃないな.....すまないな。変な事ばっかりで」


「良いですよ。私は気にしません。寧ろ.....やりごたえがあるかなって思います」


「そんなもんかね。.....にしても本当にあの野郎.....」


始めて来たんですから仕方が無いですよ、お兄さん、と笑顔を浮かべる理保さん。

俺はその笑顔に涙が出そうになった。

純粋過ぎてこの笑顔を守りたい、と、だ。


すると天井から、ドォン!!!!!、と音がした。

俺達は驚愕して天井を見上げる。

埃が落ちてくる。


な、何事?

すると電話が掛かってきた。

俺は???と思いながら許可を貰ってからスマホの画面を見る。

そこには、美玖、と書かれていた。

は!?


「す、すまない。理保さん。す、すぐ来るから」


「え?あ、はい!」


それから俺は電話に出る。

何だよ!、と小声ながらも大きな声で、だ。

威圧する様に話す。

すると、お兄ちゃん?何時まで話しているの。その女と、と言葉を発してきた。

え?ってかコイツまさか。


「盗聴している訳じゃねーよな.....?」


『ビデオカメラはリビングに設置した』


「ふざけんなお前!!!!!お前の全てじゃねーんだぞこの家は!!!!!勝手な真似をするなぁ!!!!!」


『は?お兄ちゃんに言われる筋合い無いし。私はお兄ちゃんが気になっているんだまら。お兄ちゃんのペ◯スが好きなんだから。◯ンコに突っ込んでもらって◯女を貰ってもらうまで絶対に渡さない』


「またこの卑猥野郎!!!!!お前それ俺が好きなの!?ねぇ!?さらっと言ったけど!」


どっちでも良いって今は。

そんな事より私はその学級委員が気に食わない。

殺して良いのかな、と言いながら。

ぶっ潰したくなってくる、と言った。

コイツ!


「お前.....落ち着け。お前ならマジにやりかねん」


『鉈が良いかな。包丁?それとも.....』


「落ち着けっつってんだろうがぁ!!!!!」


冗談じゃねぇぞぉ!!!!!

俺は悲鳴にも似た様な声で話す。

コイツマジに気が狂っている!

俺は思って振り返ると。

そこに理保さんが立っていた。


「えっと.....大丈夫ですか?」


「.....あ、ああ。すまん。声が大きすぎたな」


「大丈夫ですよ。あ、でもお兄さん。もしかしてその電話は.....美玖さんですか?」


「あ?ああ。まあ」


もし良かったら私も話してみたいです。貸してくれませんか?

と笑顔を見せてくる理保さん。

俺は、いやー。それはちょっと、と顔を引き攣らせる。

するとまた床ドンが響いた。

俺達は天井を見上げながら見つめ合う。


「.....一応渡すけど.....何かあったら変わってくれ」


「は、はい。有難うございます」


そして理保さんは電話に出るが。

一方的に切られた。

だが再度、また掛かってくる。


それからこんな言葉が聞こえてきた。

私と友達になりたいなら.....パンツとか下着見せて、と.....オイ。

今何つった。


「.....えっと.....え?」


目を丸くして.....真っ赤になる理保さん。

それから胸を隠す様な仕草を.....この馬鹿!!!!!

コイツこの野郎!!!!!


何を言ってんだァァァ!!!!!

俺は堪らずに2階に踏み込んだ。

そして美玖の部屋のドアをノックする。


「美玖ァ!!!!!テメェ良い加減にしろぉ!!!!!」


「お兄ちゃん。私と友達になるならアニメキャラの気持ちを最低限、極めてもらわないと駄目だから。お兄ちゃんの前で下着姿になって.....」


「犯罪じゃねぇか!!!!!」


「当たり前でしょ?.....同じ趣味じゃないと私は受け付けないから。出来ないと思うけど」


最低極まりない。

これは多分計画的だわ完全に。

本当に嫌な子だわ!


つまり.....この場で下着姿にならなければお前とは友達にならない、という意思だろうと思う。

クズめ.....!

すると俺の横に立っていた理保さんが赤面のまま.....言い出した。


「.....分かった。.....どうしても美玖ちゃんが言うなら脱ぐしか.....」


「.....へ?.....い、いや。冗談だろ。理保さん」


「だって.....美玖ちゃんが言っているし.....千載一遇のチャンスです.....」


あ、これマジにヤバいかも。

素っ裸になる覚悟の様な顔をしている。

俺は真っ赤になりながらその場から逃げ出そうとする。

だがその手を理保さんが掴む。

そしてボタンを外していく理保さん。


「美玖!今直ぐに止めさせろ!!!!!」


「嫌」


「美玖ァ!!!!!」


ケーキの様な純白が汚れちまう!

これはどうしたら良いのだ!

考えながら.....ふとある作戦を思い付く。

やはり人間、ギリギリにならないと思い付かないんだな。

こういう事を、だ。


「美玖。良いのかなぁ?このままやってしまって」


「?.....どういう事。お兄ちゃん」


「.....俺の持っているラノベをこれからは貸さないしそれに片っ端から全部燃やすぜ。ラノベ」


「.....へ」


予想外の言葉だったのだろう。

美玖の思考が停止した様だった。

数秒の沈黙後、それだけは止めて。お兄ちゃん、と涙ぐむ声がする。

予想通りだなアッハッハ!

俺はニヤッとしながらドアを見る。


「でもやっぱり燃やすけどなぁ!!!!!ガッハッハ!」


「お兄ちゃん.....え。嘘だよね」


「.....嫌だったら学級委員と友達になれ。さもなくばマジに燃やす」


「.....そんな事をしたらお兄ちゃんが困るでしょ.....」


「俺は買い直せば良い。お前は小遣いが無いだろ。さあどうする!」


また1分ぐらい沈黙があった。

まるでその.....武者修行の様な、だ。

それからこう回答があった。

分かった。じゃあ友達になる、と。

そしてドアが少しだけ開いた。


「流石は美玖。やれば出来るじゃないか」


「.....ただし条件がある。これを飲まないならラノベは諦める。私は.....会わない。そしてお兄ちゃん。私とデートして。それが条件」


「.....そうか。.....は?.....へ?」


目が点になった。

い。いや。どうしろっつーんだそれ?

俺は真っ赤に染まる。

理保さんも口元に手を添えて真っ赤になる。

いや、ちょっと待て.....。

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